明日の昼、NHKテレビ「ひるブラ」、源兵衛川の放送を昼前にメールでお知らせ。さっそく返事のメール、電話。味戸ケイコさんからも電話。それにしても暑い。
松岡正剛『フラジャイル』筑摩書房1995年初版では、フラジャイルという視点から話題が多岐に、それこそ尽十方へ展がってゆく。
《 そんなことを考えているうちに、やがて私は断片的なるものの背後にひそんでいる”あること”に注目するようになっていく。それが「フラジリティ」というものだった。完成や全体をめざす「強さ」ではない傾向とは何かということ。そのことだった。かくて「フラグメント」から「フラジリティ」への大きな一歩が踏み出されのである。 》 53-54頁
大系をめざなない人に種村季弘がいた。
《 脆いこと、ここにこそフラジリティの中心がある。漢字の「脆」の一字には「もろい」という意味と「あやうい」という意味が共鳴するが、それはエナメル線のような感覚、三味線のサワリのような感覚だ。そのもろくてあやうい属性に満ちた存在がフラジリティというものなのである。 》 61頁
《 結局、われわれは自分を「一人」とおもいこみすぎたのである。きっとこれこそが「近代」が中世の魔術に代わって平均的市民ためにつくりあげた魔術というものだった。 》 90頁
《 人間の誕生をめぐる最大の謎は、ヒトザル( pongidae )がヒト( hominidae )になったとき、なぜか動物界で「最も弱い存在」をめざしてしまったということである。この謎はいまだに誰もがとけないままにある。 》 95頁
《 ちょうどそのころ、二十世紀の初頭をかざる量子力学と相対性理論とが、それぞれ極大の場所と極小の場所を研究の対象として、いわゆる「場の理論」を完成しつうあった。かんたんにいうならば、ありとあらゆる物質の背後にはつねに場所があり、物質は場所の特別の表情にすぎないというフィジカル・イメージの発揚だった。「物質は場所の特異点である」といった考え方である。 》 99頁
《 われわれの体が皮膚で閉じていると考えることはない。それはたんに輪郭というものであって、その体のエネルギーはどのような位置にもあるべきだ。 》 106頁
《 「あはひ」は合間という意味である。だが、たんなる合間ではなく、淡い合間のこと、まさにトワイライトな合間のことだ。 》 124頁
《 「複雑さの科学」とは「複雑性が出現するシステムについての科学」という意味だ。 》 151頁
《 すこし数学的にいうなら、線形(リニア)的な予測でカタがついていた時期が終わり、かわって非線形(ノンリニア)的な見方が要求されているということである。 》 153頁
《 これはぜひ強調しておかなければならないことだが、おおかたの日常世界はむしろ非線形(ノンリニア)でできているのだ。ノンリニア・ワールドこそわれわれに近い世界なのである。 》 158頁
《 そうだとすれば、DNAやRNAなどの遺伝記号の役割についても新しい見方をとる必要がある。それらは遺伝情報を書きこんだ一枚の設計書などではなく、原初のメタプログラムを情報生命体というかたちでなんとか維持しようとするために、しきりに正負のフィードバックを調整しつづけている複雑な編集本部なのである。 》 163頁
《 生物はいわば後天的なハード上の「デザイン」の誤りを、先行的なソフトの「編集」によって訂正しつづけている動的システムなのである。 》 164頁
《 ということは、これまでのべてきたカオスとは、もっと一般的にいえば「複雑さ」というものは、その本質を一言でいえば微妙に複合された情報リズムだということになる。そして、このような情報リズムの統合や同期があらわれる場面と奥行に注意深く注目することが、本書が求めている「複雑な葛藤を情報作用に変えるフラジャイルな場」の正体なのかもしれない───ということなのである。いやあ、なんとも複雑な話だった。 》 168頁
いやあ、引用、一苦労。それはさておき。一昨日紹介したスティング Sting の歌「 fragile 」にふれていないのは残念。Every Little Thing「 fragile 」は2000年の発表だからこの本には出てこない。まあ、松岡正剛は、大衆音楽には興味がないようだ。また、大江健三郎を取り上げるんだったら、彼の『壊れものとしての人間』講談社1970年にもふれてほしかった。
ネットの見聞。
《 昨日、とある機会に原発復旧作業員の方々から話を聞く。》 椹木 野衣
《 敵の代わりにいるのは目に見えない放射能の無慈悲な力。どこにホットスポットがあるのかわからない「落とし穴」、被ばく線量の上限、「戦友」ではなく自分との直面。話を聞く限り、どこまで溶け落ちているかもわからぬ溶け落ちた核燃料を取り出して廃炉にするなど、到底夢物語にしか思えなかった。 》 椹木 野衣
ネットの拾いもの。
《 昨日、某所での会話。「街がすいてますな」「お盆休みですから」思わず納得しかけた。まだひと月以上あるぞ。 》