しあわせの書

 猛暑という言葉が日常になった今朝、思い立って掃除機をかける。汗ビッショリ。冷たいシャワーを全身に浴びる。快感〜。去年は美術館で冷え〜としてたんだ。時代は変わる。

 泡坂妻夫『しあわせの書』新潮文庫1987年初版を再読。時は夏。読むなら今でしょ。新刊で買って読んで以来なので、大元のトリックは覚えているけど、細部はすっかり忘れていた。やはり面白くて驚天動地の巧妙なトリック。思わず本を確かめてしまった。二度と使えないトリックだ。いや、使おうとは思わないだろう、あまりにも難しくて。書き下ろしならではの傑作だ。

 再読のきっかけは『東西ミステリー ベスト100』文藝春秋1013年初版で68位に選出されていたから。座談会で大矢博子が、

《 電子書籍化もできないし。 》

 と述べているが、たしかに。しかし、泡坂はさらに上手をいく『生者と死者』新潮文庫1994年初版でさらなる大仕掛けに挑んでいる。帯文から。

《 世界出版史上に/輝く驚愕の書/ついに刊行! 》

《 この本の読み方

  一、はじめに/袋とじのまま、/短篇小説を/お読みください。

  二、各ページを/切り開くと、/長編ミステリーが/姿を現します。 》

 この楽しみ方は電子書籍では不可能だろう。帯付未読本と帯無し未読本と読了本の三冊を持っている。袋とじといえば、最初の単行本『11枚のとらんぷ』幻影城1976年初版はフランス装だったので、小口が裁断さていない=欠陥本だと本屋からの返本が相次いだとか。ページを切るのが楽しかった。予約本なのでサイン入り。返本に懲りて次の『乱れからくり』1977年では普通のハードカバー本に。帯にある前作『11枚のとらんぷ』の宣伝には「四六版 アンカット・フランス装」とある。

 『乱れからくり』にはこんな一場面。

《 三島から伊豆箱根鉄道に乗った。車内は学生が多かった。》

《 電車は遅く、停車駅は多かった。大仁まで三十分足らずだが、気の遠くなるような長さに思えた。 》

 ネットの見聞。

《 今や「バブルを知ってる」というのは、私の世代で言うところの「戦争を体験してる」と同じくらいの価値みたいですよ・・・ 》

 新宿紀伊国屋本店横と裏の PIT IN とか、全共闘を体験しているとかは……ウーム。

 ネットの拾いもの。

《 安藤美姫が話題らしいが、父親が誰か言えないなんて昔からある話じゃないか。俺が知ってる話だと、誰にも言えなくてこっそり馬小屋で子供を生んで、処女なのに子供できましたで最後まで通した奴、ひとり知ってる。 》

《 DVDプレイヤーのリモコンはコレ。合ってる。

  しかし、いくら、「一時停止」ボタンを押しても、画面は動いたまま。

  あれれれ、と思って、よーく見たら、リモコンが前後、逆だった。

  「一時停止」していたのは、俺自身でした。 》