『ワールズ・エンド・ガーデン』

 いとうせいこう『ワールズ・エンド・ガーデン』新潮社1991年初版を読んだ。切迫、緊張の糸が最後まで 切れることのない、なんという熱気充満の小説だろう。1991年の発表。1995年の阪神淡路大震災を、 つづくオウム真理教の事件を連想=予見させる内容。驚いた。

《 ふいにゆらりと足元が揺れた。(中略)その時、再び大きく足元が揺れた。遠くで女の悲鳴がした。 地から生えたモヤシのような街灯を見る。ゆさゆさと揺れている。地震だ。かなり大きい。右手の 木造アパートがバッタの鳴き声のようなきしみを立て始めていた。 》 103頁「第六章 免疫不全」

《 「いっぱいになったらどうします? 我々は居住者の安全を守るために自警団を作りました。 もし日本がこんな奴らで一杯になったら、不法侵入の浮浪者や外人どもで一杯になったらどうしますか。 我々は我々自身で国を守る以外ないと考えます。我々はセキュリティ・ガードです。以上」 》 122頁 「第七章 狂えるガーディアン」

《 そもそも、在日韓国人だというだけで雄輔たちを目の敵にすること自体、恭一には許せなかった。 人種差別だ何だという以前に、あまりに田舎臭くてこちらが恥ずかしくなるような考え方だった。 吐き気は怒りに変わり、恭一の体を熱くほてらせた。 》 135頁「第七章 狂えるガーディアン」

《 続いてぞろぞろと人が現れる。入って来た。みな一様に神妙な面持ちで、静かに目を伏せているのが 不気味だった。どの顔も意志を奪われた人間のみじめさと、奪われたことを誇る高貴さのようなものを 現している。 》 170頁「第九章 毒水のオアシス」

《 私らはね、連合白軍ですよ。聖なる白に身を包んでね、祝福された聖地を守る連合白軍ですよ。 》  260頁「第十三章 蠅の晩餐」

《 「ここは難攻不落なりっ。強き信仰の浅間山荘なりっ。非暴力徹底抗戦の館なりっ。」 》 285頁 「第十四章 最後の演説」

 時代は跛行状態に進むのか。螺旋状に動くのか。地下水脈でつながっているのか。ウロボロスか。

《 恭一は再びトーキョー・スタイルについて考え始めた。今やセキュリティ・ガードを名乗ろうと しているイチオたちが、ただ過激さだけを装ってチャールズ・マンソン教を真似たヘアスタイルを 自慢したことでも口論があったのを思い出す。 》 99頁「第六章 免疫不全」

 トーキョー・スタイル、チャールズ・マンソンに本は呼応する。

《 僕らが実際に住み、生活する本当の「トウキョウ・スタイル」とはこんなものだと見せたくて、 僕はこの本を作った。 》 (1992年、東京で)都築響一『 TOKYO STYLE 』ちくま文庫2003年初版

《 それが、チャールズ・マンソン率いる「ザ・ファミリー」だった。 》 椹木野衣『後美術論』 美術出版社2015年初版、375頁「地獄と髑髏(前編)」

 秀作だ。が、傑作と言えないのは、一気読みの怒涛の展開だが、眼差しがどこか突き抜けていない気がするから。 つまらぬ自分探しに収斂して感興が削がれたのかも。それはともかく、一読の価値はある小説だ。
 デビュー作『ノーライフキング』にはこんな一文。

《 彼はそれまでいた港区の事務所をいきなり引き払って、数ヵ月世間から姿をくらますと、ある小さな出版社から 「ワールズ・エンド・ガーデン」という雑誌を出し始めたのだった。 》 『ノーライフキング』107頁 「裏メディア」

 『ノーライフキング』には寮美千子『ノスタルギガンテス』に状況において通じるものを感じ、 『ワールズ・エンド・ガーデン』には高野和明『幽霊人命救助隊』を、饒舌な文体において共通するものを感じた。

 ネットの見聞。

《 年間ビルボードチャート発表 デジタル時代のヒット反映 》 毎日新聞
 http://mainichi.jp/articles/20151214/dde/012/200/009000c

 AKB48は8位に辛くも滑り込み。そんなものだ。

《 ノーベル賞受賞者を「日本の誇り」と称えるなら、この方たちが決してヘイト発言しないことに 注目し見習って欲しい。津川雅彦大江健三郎を「このノーベル野郎が」と罵っているが。 》 藤岡真
   https://twitter.com/fujiokashin

《 大量のドローンがヌードダンサーの秘部を隠す動画でハラハラドキドキ  》 KAI-YOU net
 http://kai-you.net/article/24204

 ネットの拾いもの。

《 国民年金NHK料金・奨学金、それぞれの取り立て組織が、組織の存亡をかけた三つ巴の殺し合いを始めるVシネ 》

《 iPadKindleが増えてきたら、毎日いくつも充電してやる必要が生じてきて、餌をやらないと死んでしまう 小動物を世話しているようになって面倒臭い。 》