「乳房」

 味戸ケイコさんから新作展の案内葉書が届く。
「夕暮れの少女」10月17日(月)〜29日(土) ギャラリーハウスMAYA
 http://www.gallery-h-maya.com/schedule/17479/

《 17、20、22、26、29、ギャラリーに行っています 》

 ブックオフ長泉店で二冊。浅田次郎・選『人情小説集 うなぎ』ちくま文庫2016年初版、原宏一『大仏男』 実業之日本社文庫2013年初版、計216円。

 高遠弘美『乳いろの花の庭から』ふらんす堂1998年初版、表題のエッセイを読む。乳房にまつわる文学作品を逍遥。

《 ただし、その際、古典作品は敢えて省き、近現代に絞ったことに加え、小説の引用をなるべく少数にとどめ、 詩歌の花壇を中心に小さな散策をするにとどめたことはお断りしておかなければならない。 》 13頁

 紹介された作品で、堀口大学「乳房」1947は知らなかった。22連の中から。

    15 乳房 かたちのない形
       乳房 慎み深い淫逸

    18 乳房 男の最初の餌食
       乳房 男の最後の渇き

《 堀口大学がいなければ、わが国のエロティック詩はずいぶん寂しいものになっていたはずである。 》 23頁

 エロティックといえば、上田三四二の短歌を思う。

    やはらかき躯幹をせむるいくすぢの紐ありてこの晴着のをとめ

《 もうすこし彼の詩を引いておこう。

    春が来て
    あなたの胸のブラウスの
    絞りの豆がかたくなる
    そよ吹く風の指の下   (堀口大学「乙女子に」)  》 24頁

 河野裕子の短歌を付けたくなる。

    ブラウスの中まで明るき初夏の陽にけぶれるごときわが乳房あり

    今刈りし朝草のやうな匂ひして寄り来しときに乳房とがりゐき

 夫の永田和宏の短歌。

    剥がれんとする羞しさの渚──その白きフリルの胸元

    悪意なき殺意もあらん工房の昼マネキンの裸の乳房

 女性の歌に惹かれる。

    抱へたる薊に刺されて乳房あり告白するとはきめてはをらぬ  角宮悦子

    胸像のさびしきまでに尖りたる乳房もて曳く一条の闇  佐藤よしみ

 極めつきは中城ふみ子だろう。

    失ひしわれの乳房に似し丘あり冬は枯れたる花が飾らむ

《 または大岡信「秋景武蔵野地誌」(一九七七)。 》 31頁

《 そう言えば、大岡信には名作「光のくだもの」(一九七八)があった。 》 31頁

 この二篇は『自選 大岡信詩集』岩波文庫2016年に収録されている。

《 まずはその美しさに我を忘れ、「息づく果実(くだもの)」の甘くかなしい感触のうちにひたすら時を忘れるに しくはない。 》 41頁

 三浦雅士が『自選 大岡信詩集』の解説を「ある愛の果実」と名づけたのは。詩「光のくだもの」と高遠弘美の 「息づく果実(くだもの)」によるのかな。
 余談だが、「秋景武蔵野地誌」は、詩集『透視図法─夏のための』1972年に収録されている。ミスだろう。

 ネットの見聞。

《 (承前)に家内共々連れて行つて頂いたこともある。私が『乳いろの花の庭から』(88年)を出したとき、 お祝ひに、フランスで刊行されたマルローの序文附きの大判のフェルメール画集を贈つてくださつた。 温厚を絵に描いたやうな方で、亡くなつたと知つて、優しいお顔ばかりが浮かぶ。ひたぶるに悲しい 》 Hiromi TAKATO 
 https://twitter.com/Thouartmore/status/780718615062458373?lang=ja

 絶版になることを嘆息した彼の書き込みで知り、新刊で購入。(88年)は(98年)の誤記。

《 造本の美しさ、本棚に並べて楽しいようなデザイン、読みやすい紙面構成、携帯しやすさ、内容にフィットした イラスト、すぐに読みさしの中身が見つけられるようなインデックスの充実、そして何よりプロならではの編集と校閲 ――この一番最後のところが無気力になったときこそ「紙の本」の終わりだろう。 》 芦辺 拓
 https://twitter.com/ashibetaku/status/780812928328998912

《 骨董品や古書を漁るのは楽しいが、偽物も多いので注意が必要。勲章や古写真は有名で、 最近でも某軍に関する偽写真を新発見として発表した例がある。一方、SPレコードのように偽物の製造自体が 難しい例もあるが、ウェブ上にはレーベル部分を捏造した画像をあげて蒐集品自慢をしている例もある。怖い。 》  辻田 真佐憲
 https://twitter.com/reichsneet/status/780219901482979328

 ネットの拾いもの。

《 イタリアではおっぱいをseno(セーノ)というんですが、日本人が重い物を持ち上げる時に"オッパイ!"と 掛け声をかけるのがイタリア人にとってはすごく面白いらしいですw 》 Mammy
 https://twitter.com/415Mammy/status/82357768174047232

《 男「おっぱいを揉ませてください」
  女「嫌です」
  男「ふざけるな!じゃあ代案を出せ!」

  とまあだいたいこれが
  おっぱいを揉みたい(憲法を改正したい)自民と
  揉まれたくない(改正したくない)野党の問答です 》 Simon_Sin
 https://twitter.com/Simon_Sin/status/780763291488440320

《 【300年後、極東のホストクラブで名前を連呼される運命を彼は知らない】
  フランスの修道僧ドン・ペリニョン(1638〜1715)シャンパーニュ地方で生まれ、シャンパンの完成に生涯を捧げる 》  フランス書院文庫編集部
 https://twitter.com/franceshoin1985/status/780404346366328833