「椛山訪雪図」

 米澤穂信泡坂妻夫「椛山訪雪図」を《 何より愛していて、 》と書いている。初出の雑誌『幻影城』の別冊増刊号で読んでじいんと 心打たれた。私も愛して止まない短編だ。直木賞候補になったと記憶する。昨日話題の『文人画三大家集』収録、渡邊崋山の絹本墨畫 「寒林富岳圖」天保九(1839)年、四十六歳の作を連想。
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《 蒼老古雄の筆墨は華山の樹石に於ける一種の特長なりしと雖も、本圖の寒林の如き妙極殆ど云ふべからざるものは蓋し鮮し、蕭索たる 冬景の興趣披玩盡くることなきを覺ゆ、眞に神品と稱すべし 》

 と、「寒林富岳圖」の解説。書き写していて気づいた。椛山から華山へ。富士山の絵は枚挙に暇がないが、これだ、という絵にはなかなか 出合えない。「寒林富岳圖」は、稀なるこれだ、の一点。

 稀なる出会いが先だってあった。挨拶するくらいの女の子(大学四年生)が、某美術館のパンフレットを手にしていた。「どんな絵が好き?」 とさり気なく聞くと、モネの夕暮れ時の風景画を指差した。おお、私も夕暮れ時のような仄暗い絵が好き、と応える。さっそく徒歩で二分の 自宅へ戻り、まずは雑誌『版画芸術』小原古邨の特集号を手に戻る。反応が良いので再び自宅へ。今度は『日本美術全集 第19巻 戦後〜 1995』小学館をえっちら持参。彼女はテーブルの上に置いて200点全部の作品をじっと見る。横山操の大作『川』1956年に最も興味を示す。 本命の味戸ケイコさんの絵にも興味を示したので、今度これとは違うけど、同様の原画をお見せすると約束。平成の歌には惹かれず、昭和の歌に すごく魅力を感じるという。いやあ、稀なる出会いだ。暗い絵、暗い歌がネクラと嗤われれ、日陰者のようだったこの四半世紀。やっと時代が 変わってきたか。

 立秋。午前、食料買い出し。ほどなくして大粒の雨。野分。

 ネット、いろいろ。

《 『煙の殺意』(泡坂妻夫 創元推理文庫)のオビ文を書かせていただきました。幸せな仕事です! 推薦文の最後に 「世界最高級のミステリ短篇集」と書き、少し考え、「級」の一字は不要と思いましたので取りました。多くの方に手にとって頂けますように。  》 米澤穂信
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《 『煙の殺意』は、「椛山訪雪図」を何より愛していて、「狐の面」もたまらなく好きで、「紳士の園」がすばらしく、「煙の殺意」 はもう完璧で、今回読み返して「赤の追想」にしみじみ感じ入り、「閏の花嫁」も良いですが、「歯と胴」もなんとも忘れがたく、 「開橋式次第」も賑やかで好き。(ぜんぶ 》 米澤穂信
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《 技を習うには必ず手順がある。手順を覚える、慣れてくると角が取れてくる。そうなると一つのリズムが出来てくる。そのリズムが錬られると 流れが出てくる。流れが出ると相手と自分が同化する、螺旋の中に。それが「伸び」になる。その時に重要なのが呼吸である。 その先に「乗る」という状態がある。 》 合気道 多田宏師範のお言葉 bot
 https://twitter.com/tadahiroshibot/status/894287118448513024

《 水野和夫さんの『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』を読了。グローバル資本主義の終焉、「閉じてゆく地域帝国」への世界分割、 定常経済への移行、地方分権、配当ゼロの株式会社、国債保有者への社会保障実物給付への切り替えなどの具体的な提言に深く納得しました。 》  内田樹
 https://twitter.com/levinassien/status/894121985453703168

《 日本ファシストの会。 》 津原泰水
 https://twitter.com/tsuharayasumi/status/894431664885030912