『忘れられる過去』

 荒川洋治『忘れられる過去』朝日文庫2011年初版を読んだ。滞ることなくすらすら読んでしまった。いい文章だ。読みやすさは、漢字を減らしているから でもあるかな。引用したくなる文章がずいぶんある。その一部。

《 自分の体は、自分だけのものではない。もっとひろい場所に置かれたものである。使いようによっては、みんなのものになるものなのである。 》 「まね」  131頁

《 感動があれば、読解のひとつやふたつまちがってもいいとはいわないが、読解にあまり神経質になるのはどうか。正い解釈ができても、その文章に心が 動かなかったら、読書の意味はないように思うのである。 》 「朝の三人」 142頁

《 正しさ、美しさ、「声に出して」の読み方(テキストも)と、日本語の本は「共通」になることを教える。規格を求める、弱い人間がふえたのだろう。 ことばと、その人だけのかかわりを忘れない。それはことばを知る以上にたいせつなことだ。 》 「ことばの孤独」 145頁

《 この世をふかく、ゆたかに生きたい。そんな望みをもつ人になりかわって、才覚に恵まれた人が鮮やかな文や鋭いことばを駆使して、ほんとうの現実を 開示してみせる。それが文学のはたらきである。 》 「文学は実学である」 152頁

《 さて多くの人と同様、ぼくも網野氏の『日本の歴史をよみなおす』によって歴史に目が開いた。そこには文章があった。 》 「歴史の文章」 157頁

《 こうしたことばは対象となる人物や作品への深い理解から生まれる。全体に少しだけ調子が高い。うっすらとした「熱さ」がどの文章にも感じられる。 思いきりのよさと、繊細さが、波打つ。対象への愛情と理解を心をこめて表現しようとするからだろう。 》 「他の人のことなのに」 201頁

《 知識とは、知ることではない。知るために何をしたらいいかをイメージできることだと思う。 》 「文学の名前」 220頁

《 「詩のことばはフィクションである」という理念を放棄したとき、詩はあたりさわりのない抽象的語彙と、一般的生活心理を並べるだけの世界へとすべりおちる。  》 「詩を恐れる時代」 252-253頁

《 本は、心ともつながるが、体とつながることもだいじ。文章のもつ芯が、読む人の体にひびいてくるからだ。 》 「手で読む本」 258頁

《 亡くなって三○年近くたったところで、その文学は静かに身を起こしたのだ。 》 「びっくり箱」 262頁

 昨日の小泉喜美子さんだ。

 午前五時半−2.9℃。そんなに寒いとは感じなかった。
 午後、依頼されグラウンドワーク三島事務所へ。開始数分前に先方がドタキャン。教師って……。時間が重なって先約を断った友だちに電話。不機嫌。だよなあ。 ご機嫌伺いに好みの白ワインを用意。喜ばれる。やれやれ。

 ネット、いろいろ。

《 ステートメントに「ツッコミどころ満載、乞うご批判!」と書いたのは変わらぬ本心。特にそういう特徴の展示だから。見てくださるのが何より一番。 それで色々言うのは完全自由。 》 会田誠
 https://twitter.com/makotoaida/status/963300254694047747

《 作家が「乞うご批判」と明示した展覧会を、陳腐な言葉で賞賛するのは情けない。作家がそう明示しなければならなかったのは、まず批判を気にするからだが、 それが避けられない領域に踏み込んだことの宣言でもある。ならば、評者はその泥沼に嵌まりつつ、未生の批判を唸り返すべきなのである。 》 中島 智
 https://twitter.com/nakashima001/status/963456323378544641

《 アルマーニはともあれ、公立小の制服が 「気品ある空間・集団への凝集性」「帰属意識」「誇り」を培うという声明は、不気味で滑稽で怖い。 差別と特権意識、同調と画一化、全体主義に向うファシズム。子どもに限らない。「おしゃれ」自体も、時代の「制服」に同調しない自由から育つものだ。★ 》  巖谷國士
 https://twitter.com/papi188920/status/962934236960325632

《 共産・宮本議員は、先に暴露された音声データにある、昭恵夫人の籠池への「激励」電話について、首相が否定する論拠の如何わしさを突いた。 名誉校長としてメールを頻繁にやりとりし、首相自身も籠池評価をくるくる変えた事実を指摘。両者の食い違いは夫人の証人喚問でただすしかないと迫り、聞かせた。  》 knamekata
 https://twitter.com/knamekata/status/963246057277743105

《 「地頭の良い人」と、そうでない人の本質的な違いはどこにあるか。 》 安達 裕哉
 http://blog.tinect.jp/?p=48982