「現代美術入門講座」(閑人亭日録)

  月刊『太陽』1993年11月号特集「現代美術入門講座」を再読。繰り返し読んだ。「横尾忠則 現代美術を歩く 美術館は直感で見ろ」と森村泰昌「新・戦後美術史概説」 は、今も読み応えがある。横尾忠則は千葉県のDIC川村記念美術館の展示品を鑑賞。

《 つまり「現代美術はもう面白くない」という実感なのだ。(中略)現代美術があまりにも観念的になってしまったからだ。(中略)少なくとも十九世紀のロマン主義 まではアートは魂を問題にしてきた。ところが純粋芸術の探求以後のニ◯世紀美術は、自我中心の、アートのためのアートになってしまった。 》 10頁

《 ステラから伝わるのはあまりにも計算された形と色だけである。(中略)それはまた「眼」だけの鑑賞者を生む危険性も内包している。 》 11頁

《 次の「ロスコの部屋」ではぼくはステラの呪縛から解放されて、龍安寺の石庭を彷彿させる宇宙感覚を必死で充電させるのにせいいっぱいだった。 》 12頁

《 今、現代美術に必要なのは感動だよ。コンセプトばっかじゃなくて、子どもの持つ”ものをつくる純粋な喜び”がないと人生が豊かなものにならないよ。 》 13頁

 横尾忠則の絵画にはさほど興味を惹かれないが、彼の論述には今回も、全面的に首肯する。森村泰昌「新・戦後美術史概説」。

《 名画とはたぶん「有名絵画」の意であって「名作絵画」なのではない。名作つまり上手い絵は世にごまんとあるが、有名になるべく運命づけられた絵は限られている。  》 16頁

《 しかしどんな美術家でも、作品を作る時にはだれかの影響がある。ステラは、ポロックとロスコというアメリカ現代絵画のエッセンスの影響、というか積極的かつ 自覚的な引き継ぎを試みたのだと私は思う。(中略)なぜステラはポロックとロスコをあのようにいわば筋肉モリモリに仕立てあげねばならなかったのだろう。(中略) もはや絵画的な説得力を持っているというだけでステラを納得するわけにはいかない。 》 18頁

《 私もアズビーにならってロスコの絵を凝視した。確かに上下の色が重なりあってグレーになった。しかももとのロスコの描き方である茫洋とした感じがより一層 強調され、タブローという形式の枠組みや平面性がどこか消え去り、雲か煙のようにそれを体験するものを包みこんでしまうのである。 》 19頁

《 私はアンディ・ウォーホルの作品の多くが、もはや影をもっていないことに注目したい。彼の「キャンベル・スープ」はぺらぺらで影の入る余地がない。「マリリン」 には蛍光インクも用いられている。それは自ら発光する光と化した影なのである。 》 20頁

 森村泰昌の作品には興味はないが、アンディ・ウォーホルの作品は関心外。森村の鋭い眼差しによる美術の分析は感心する。他の人の論評は、掲載作品ともども、やはり 今も惹かれない。そこが私の感受性、感性の偏ったところだろう。嫌いほどではないが、惹かれない、興味を感じない、欲しくない現代美術の作品たち。それでいい。

 午後、青山学院大学の国際ボランティア・サークルの学生三十人ほどを、雨の中みどり野ふれあいの園、源兵衛川、清住緑地などへバスで移動して案内。 雨など降ってないかのようにさんざめく学生たち。影などないほどに眩しい。銭湯へ入ったのを見届けて午後四時帰宅。

 ネット、うろうろ。

《 イランの地元紙は「ミスター安倍、あなたは戦争犯罪者(米国)をどうして信用できるのか」という英語とペルシャ語の見出しを、原爆のキノコ雲の写真と共に 大きく掲載。安倍首相への不信感を露わにした。 》 projim
  https://twitter.com/projimsao/status/1139471621805072384

《 イラン訪問の安倍首相、トランプの伝言役としての役割は果たせず一蹴されるも日本語報道と海外報道に齟齬/白石和幸 》 ハーバー・ビジネス・オンライン
  https://hbol.jp/194704

《 『空間へ』再読/柄沢 祐輔 》 エクリ
  http://ekrits.jp/2019/06/3068/

《 書斎掃除は発掘調査に似ている。過去の自分が遺骸や化石となって現前してきて暫しの中断、その繰り返しである。それは現在という表皮を支えている 堆積物というよりも、いつでも現在に生き返ってくる潜勢力であって、迂闊に覗き込むと呑み込まれてしまう火口である。 》 中島 智
  https://twitter.com/nakashima001/status/1139539545081335808

《 小説でインド最初の有人宇宙船に付けたら間違いなく「いくらなんでもこれは」って言われそうな名前だなあ、ガガニャーン。 》 笹本祐一
  https://twitter.com/sasamotoU1/status/1139774206508318720

《 この雨の中、手洗い場の電球が切れた。トイレ・クライネ・ナハトムジーク。 》 米澤穂信
  https://twitter.com/honobu_yonezawa/status/1139833433918599171