『歳月の鉛』四(閑人亭日録)

 
 四方田犬彦『歳月の鉛』工作舎2009年初版を読み進める。

《 森有正の死。(中略)彼の真摯な姿。その愚鈍なまでの拘泥。やはり私と同じ喘息の人であったかという思い。だが違和感は残る。わが身に降りかかる事件の裏側に、 つねに何かの感動や美が控えていなければならないという彼の執念。そこに抽象的なるものへの上昇の契機を読み取ろうとしてしまう不幸な精神。なぜあるがままで あっていけないのか。なぜ無為であってはいけないのか。 》 「第9章 ノオト 1976-1978」 262頁

《 藤枝静男『田紳有楽』。すごい作品だ。真贋の混合とグロテスクな変身。最後に登場人物の全員が一同に会し、チベット風の饗宴となる。時空がどこかで歪んで しまった傑作。 》 「第9章 ノオト 1976-1978」 264頁

《 ドノソ『夜のみだらな鳥』。三日がかりで読み終わる。二つの抑圧空間、修道院とボーイの天国。語り手は次々と変身する。最後に全身を包帯で巻かれ、九穴を 封じられ、包そのものと化して冥府へ回帰する。 》「第9章 ノオト 1976-1978」 275頁

  生真面目な森有正。経験を改めて考えたい、と思って幾歳月。『田紳有楽』には破天荒な!。『夜のみだらな鳥』にはこんな想像力が!。再読しようと思って幾歳月。

《 K.T.が昨月、高井戸の、マンションから投身自殺をしていたことを知らされる。 》 「第9章 ノオト 1976-1978」 282頁

 一瞬めまいがした。私は投身自殺は考えなかった。もっと安らかな死。でも誰も悲しんでくれないと自覚し、やめた。

《 だが少しでも油断をすると、たちまち作者の仕掛けた罠にかかって、奇怪な韜晦術に操られてしまうのだった。このことを示すためには、冒頭の一頁を拡げるだけで 充分である。そこでガリヴァーはみずからの出自と経歴とを簡潔に語っている。そのなかに、「自分はロンドンのベイツ先生のもとで学んだ」という一行がある。これは 原文ではMaster Batesであり、当然のことながらmasturbateとほとんど同じ発音になる。したがって読み方によれば、「ロンドンではオナニーばかりしていた」という 意味になってしまう。二◯世紀に過激な言語実験を重ねたジョイスは、同じダブリンに生きたスウィフトにしばしば言及しているが、彼らは言葉に真の意味で隣人なので ある。 》 「第10章 空想旅行の探求」 315-316頁

《 わたしは論文に「ジョナサン・ソフィスト」という題名をつけた。プラトンに先立って虚言を弄し、言語の表層に遊んだ哲学者たちの名前をスウィフトに引っ掛けて みたわけである。 》「第10章 空想旅行の探求」 317頁

《 わたしは探求の途上で当初に手にしていた方法を改訂し、また他の方法論と接続して新しい理論を手作りで拵えなければならなかった。これはいい方を変えてみる ならば、純粋状態におかれた抽象的理論など文学研究においてはほとんど意味をなさないという真理を、思い知らされたともいえる。 》 「第10章 空想旅行の探求」  318-319頁

《 ある芸術的テクストをそれに限定して、あたかも展翅板に止められた蝶のように分析するのではなく、それが帰属している集合、あるいはジャンルの現象として 理解するという姿勢である。これは文学ジャンル自体を一つの巨大な作品体と見なすことをわたしに可能にした。 》 「第10章 空想旅行の探求」 319頁

《 スウィフトの内実に踏み込んだ質問を期待していたわたしはいささか拍子抜けした。ただ一人、阿部良雄教授が最後に題名の意味を説明するようにとわたしに尋ねた。 「加藤郁乎の詩にあった言葉です」とわたしが答えると、かれはわが意を得たりといった表情を見せた。『荒れるや』を書いた詩人は、彼の旧い友人であったからである。  》「第10章 空想旅行の探求」 320頁

《 自分のスウィフト論に欠落しているものが何であるかを明確に指摘されたような印象をもった。それは一言でいうならば、あらゆる言説を永遠の相の下に論じる のではなく、それが発語された瞬間のアクチュアリティに基づいて捉え、その意味を問い質すという姿勢であった。 》 「第10章 空想旅行の探求」 324頁

《 七年間にわたって続いた学生生活は、もうこれで幕を閉じた。 》 「第10章 空想旅行の探求」 329頁

 読了。深い充実感。七年・・・明日の記事だな。

 朝、源兵衛川中流、水の苑緑地から下流ヒメツルソバを抜く。土のう袋七分目ほど。帰宅。シャワー。コーヒー。スッキリ。

 ネット、いろいろ。

《 万が一を考え、停電になった場合のことを考える。レンジが使えなくてもカセットコンロがあるからOKとして、水を溜めておいて、IT機器は充電して…と ここまで来て気がついた。ノートじゃないんだから、Macが死ぬじゃん仕事できないじゃん! 今日明日でやっちゃわないと! コンロとかどうでもいいし! 》  大矢博子
  https://twitter.com/ohyeah1101/status/1182127445131976704

《 江戸しぐさは「諸説ある」どころか、江戸時代の史料に一切記載が見当たらないことを説明する為に、"明治維新の際に「江戸っ子大虐殺」が行われて関連書物も 焼かれた。江戸っ子大虐殺は歴史上隠蔽され古老が口伝で伝えた。"と主宰者が著書で述べてるような、明らかなインチキ創作マナーなんですけどね。  》  虎次(とらつぐ)
  https://twitter.com/tora_2com/status/1182102452188803074

《  有識者委員会「何も聞いてない」
  文化庁「記録はない」
  萩生田「指示してない」

  すごいなおい。幽霊が不交付を決定したのかよ。

  萩生田氏「私は指示してない」 文化庁補助金不交付で:朝日新聞デジタル 》 森修一
  https://twitter.com/ChemPack/status/1181492402462191617

《  赤旗日曜版のスクープ!
  「桜を見る会」に、首相の地元事務所が後援会員らを数百人規模で招待していた。「税金でおもてなし」とはどういうことか。政府は「資料破棄で招待者は不明」 というが、「モリカケ」と同じ弁明は疑惑をいっそう深刻にするだけだ。国民に真実を説明するべきだ。 》 志位和夫
  https://twitter.com/shiikazuo/status/1182102368013283329

《 宗教学者と考える「なぜ日本はこれほど“弱者叩きの国”になったのか」島薗進 》 週刊女PRIME
  https://www.jprime.jp/articles/amp/15508

《 このおかげで、10月の景気が全国的に悪化したのは「台風のせい」にできるわけで 》

《  この気象兵器
  ラグビー人気に嫉妬したサッカーファンがやってるって噂だけどほんとかな? 》