『近代日本一五○年』六

 今朝の東京新聞第一面を読んで昨日の「第5章 戦時下の科学技術」との相似にどっきり。記事「官邸主導で攻撃兵器選定」から。

《 NSCはニ○一三年十二月、首相、官房長官,)外粗、防衛相を中心に組織された。翌年一月、実働部隊の国家安全保障局(NSS)が内閣官房に置かれると、 防衛相からの積み上げで決まっていた兵器選定の主導権は事実上官邸に移った。 》

 NSC=国家安全保障会議

《 巡航ミサイルは相手ミサイルの射程圏外から攻撃でき、離れてにらみ合うという意味から「スタンド・オフ・ミサイル」とも呼ばれる。 》

《  元航空自衛隊空将の織田(おりた)邦男氏は「スタンド・オフ・ミサイルの導入は(自民党と旧社会党の)五五年体制なら絶対無理だった。それを軽々と超えて しまうのは、NSSができたメリットだと思う」と語る。
  NSSには防衛、外務、警察の各省庁を中心に約七十人が出向する。》
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111302000149.html

 山本義隆『近代日本一五○年』岩波新書2018年初版「第6章 そして戦後社会」を読んだ。

《 「科学戦に敗れた」と言うとき、日本ができなかった原爆製造に米国が成功したということを前提に語られている。つまり、中国は目に入っていない。実際には、 蒋介石の国民党軍にせよ、経済力や技術力では日本軍にはるかに及ばなかったが、にもかかわらず、日本軍は中国大陸の泥沼の中で身動きがとれなくなっていたのである。 しかし、「科学戦に負けた」と言うことによって中国にたいする敗北に目をとざした日本は、同時に、アジア侵略の政治的・道義的責任に目をつむったのである。 》  207-208頁

《 こうして「唯一の被爆国」という、アジア諸国にたいする侵略戦争の加害者性を相殺するかのような、はては隠蔽しさえする、戦後日本の枕詞が生まれてきた。 》  208頁

《 科学者としての戦争協力の責任の自覚や反省を欠いた形でこのように「科学技術の不足」「科学技術の立ち遅れ」という形で敗戦を総括すれば、そこから導かれる 方針は、「科学技術の振興」ということにならざるをえない。 》 210頁

《 そもそも一九五○年代に日本本土が復興に専念することができたのは、沖縄が米軍支配下に置かれ、全島あげて軍事基地とされ、南朝鮮では米国の軍事力を背景に 軍事政権が存在していたからである。 》 218-219頁

《 戦後日本の軍需産業の復活と成長の過程は、朝鮮戦争から日本の再軍備、そして自衛隊の誕生と戦力増強の過程に連動していたのである。 》 222頁

《 明治から大正にかけての経済成長、すなわち富国化・近代化は、主要に農村の犠牲のうえに行われ、昭和前期の大国化は植民地と侵略地域の民衆の犠牲のうえに 進められたのだが、戦後の経済成長もまた、漁民や農民や地方都市の市民の犠牲のうえに遂行されたのである。 》 236頁

《 日本の公害の歴史は「専門家」と「専門の知」が企業や行政、総じて権力の側のものであったことを示している。 》 239頁

 「第7章 原子力開発をめぐって」から。

《 国家主義者にとって、原爆保有は「超大国」の証であり、核技術と原子力発電の保有はそれにつぐ「一流国家」のステータス・シンボルなのだ。 》 266頁

《 実際には、原子力委員会は技術面でも政策面でも能力が低く、実質的な力をもっていたのは官僚機構、とくに通産省であった。「原子力開発利用長期計画」は 戦時下の官僚主導経済の戦後版といえる。 》 274頁

《 結局、日本の原発建設は、政・官・産・学そしてメディアからなる原子力ムラの利害のためになされていたのである。もちろんそのことは、資本主義社会での あり方としても、きわめて不健全で正当性を欠くことである。 》 277頁

《 つまり原子炉の安全性はひとつのフィクションのうえに語られている。 》 280頁

《 「燃料を消費しながら生成しつづける」という夢の増殖炉計画は、ニ○世紀技術の蜃気楼でありつづけ、ニ一世紀なってついに消滅したのである。 》 282頁

《 明治とともに始まった日本のエネルギー革命は、一九七○年代中期の高度成長の終焉でどん詰まりを迎え、福島の事故でオーバーランしたのである。 》 286頁

 読了。じつに濃密、引き締まった、かつ躍動感ある文章に惹き込まれた。すごい本だ。

 某画廊主の女性からの案内葉書に記された一文。”先日おしえていただいた「森は考える」今読んでます ”。エドゥアルド・コーン『森は考える』亜紀書房2016年。 絶賛積読中。
 専門職人に障子の張替えをしてもらったと聞いた知人、自分でやれば安くあがるのに、と。DIYなら安くできる。が、それでは職人の稼ぐ場が損なわれる。 安ければよい、という風潮に染まりたくない。

 ネット、いろいろ。

《 木々高太郎は戦時中に大学に籍を置いたまま、研究動員で陸軍科学研究所の嘱託になったということになっているが、実際には1941年に「陸軍科学研究所令」 が廃止され陸軍技術本部研究所に改組されているから、木々高太郎が属したのはそっちなのだろうな。化学兵器を研究していた第六研究所なのだろうか。 》  Genei-John
 https://twitter.com/noji2207/status/1061989188835303426

《 水道民営化を言い出したのは麻生さん、あなたでしたよね。南ア、ボリビア、フランス、アメリカ等と各国が失敗し、再公営化に戻してるのを知らぬはずがないのに、 今国会で通そうとするのはなぜですか? 水メジャーとの関係をつい勘ぐりたくもなりますよね。世界に冠たる日本の水道を壊すつもりですか? 》 立川談四楼
 https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1061821650281197568

《 「現実を人間の側にあって凌駕し、人間を現実の側にあって凌駕するもの、それが美である。」(『自然契約』)セール 》 清水高志
 https://twitter.com/omnivalence/status/1061953062984503302

《 「酒の好きな者は検察官になりなさい。頭のいい者は弁護士になりなさい。何の取り柄もない者は裁判官になるしかない。」 》 岡ロ基ー
 https://twitter.com/okaguchikii/status/1061968047907295234

《  空前の好景気 ×
   空想の好景気 ○ 》

《 美しかった国、日本 》