照屋眞理子(閑人亭日録)

 夜明け前、ふと目が覚めて故照屋眞理子さんの短歌、月刊『短歌』角川書店で昔出合った、投稿された短歌が浮かぶ。どんな歌かまでは浮かばなかったが、当時瞠目した。昼、『千歌燦然 塚本邦雄選〔公募短歌館〕入選作品集成』書肆季節社 一九八四年十二月予約者のみに制作刊行 を開く。『短歌・昭和五八年三月号』「第七十一回 公募短歌館」、「特選」七首の二番手。

  〈時の流れ(レール・デュ・タン)〉終(つい)の一滴馨(かを)りたち掌上軽し一壜の虚無

 この短歌に中井英夫の長編ミステリ『虚無への供物』を想起した。そして彼女にファンレターを投函した、と思う。旧知の中井氏にも連絡しただろう。「選後評」にはもう一首が紹介されている。

  雪月花ふるまぼろしをとどめたる肩まさびしき生の稜線

 「選後評」で塚本邦雄は書いている。

《 主題・方法共に、私は固定した偏狭な判斷基準によつて律することはない。簡潔にして鮮麗な、二十世紀末の短歌が、創り得るならみづからも試みたいし、他者にも獎めよう。寫實の象徴のと、單純な二元論を盾に、甲論乙駁してゐる時ではあるまい。投稿者中、殊に二十代から三十代前半の気鋭の人人の、蘊蓄と造詣に、時として一驚を喫する。 》

 四十年前、種は蒔かれていた・・・。昨日の日録を思う。
 『千歌燦然』で日録を書いていた。リンクを貼っておく。
 https://k-bijutukan.hatenablog.com/entry/2019/09/03/194829