肉筆画~複製木版画(閑人亭日録)

 小原古邨や川瀬巴水らの木版画絵師の原画をもとにした複製木版画(新版画)と、古典絵画の複製木版画(国華社、審美書院)と何が違うのだろう。新版画は下絵(原画)をことさらに問題にしないが、古典絵画の複製木版画は、絵画の複製としか見られない。木版による絵の再現=複製という制作過程に違いはない。違いがあるとすれば新版画の原画と木版画とは大いに違う。小原古邨の下絵(原画)とその複製木版画を見較べてみれば、彫師摺師の、下絵に対する大胆な省略(飛ぶ椋鳥の数を減らす)、色彩の変更(緑の葉を紅葉に替える)等、数多くある。そして、下絵(原画)よりも複製木版画のほうがずっと魅力的。原画(下絵)は、欲しいとは思わなかった。対して国華社、審美書院の複製木版画は、原画にとても忠実に再現されている。
 http://web.thn.jp/kbi/koson.htm
 「柿に烏」の解説でちらっと書いた。
《 西洋の人々は、古邨の格調高い絵はいうまでもなく、それを忠実に、かつ魅力的な木版画に仕上げた彫師と摺師の卓越した技に驚嘆しました。 》
 http://web.thn.jp/kbi/koson1.htm
 下絵師(小原古邨)よりも彫師、摺師の方が優れた審美眼と技術を持っていたと感じる。小原古邨もそれを認めていたのだろう。
 格調高い古典絵画に畏敬をもって木版画に仕上げた国華社、審美書院の複製木版画は、その多くが原画よりも縮小されて複製されている。その技術に感嘆、感銘を覚える。明治後半から大正にかけての木版画の彫師、摺師の超絶技巧に今更ながら驚嘆する。国華社、審美書院の美術本の目次には、摺師、彫師の名前が記されている。7日のブログ「無名にひとしい人たちへの紙碑」ではないが、卓越した技術を持つ者への敬意を感じる。

 長崎原爆忌。合掌。暑い。昼、豪雨。正午34.2℃。午後1時26.7℃。夕方、晩にも雨そして地震