片腕

 ブックオフ函南店へ自転車で。井上ひさし『言語小説集』新潮社2012年初版帯付、横関大『再会』講談社2010年初版帯付、『源氏物語 九つの変奏』新潮文庫2011年初版、風見潤・編『ユーモアミステリ傑作集』講談社文庫1980年初版、スティーヴ・ハミルトン『解錠師』ハヤカワ文庫2012年初版、計525円。

 天井まである自作の本棚を見上げて、栗本薫・選『いま、危険な愛に目覚めて』集英社文庫1998年7刷が眼に留まった。これに川端康成『片腕』は収録されている。さっそく再読。以前読んで印象深かったくだり。

《 「片腕を一晩お貸ししてもいいわ」と娘は言った。 》

《 私は娘の右腕を雨外套のなかにかくして、もやの垂れこめた夜の町を歩いた。 》

《 その光りはぼやけてひろがって薄むらさきであった。 》

《 女の車はうしろのライトも薄むらさきであった。 》

《 闇のなかを私はベッドにもどって横たわった。娘の片腕を胸の横に添い寝させた。 》

《 私はその腕の指を口にくわえていた。 》

 やはりなんとも耽美的だ。そしてこのいいようのない寂しさ。片腕を借りる男は、私には若いあるいは中年の男としか思えないのだけれど。

 知人のネットゲリラ氏が民謡歌手の伊藤多喜雄を紹介していたので、彼のデビューアルバム『TAKIO JINC』1986年を久しぶりに聴いた。小室等のプロヂュース。それまでの民謡とは一線を画した歌と演奏。この頃はおとなしい。「弥三郎節」でのジャズピアニスト佐藤允彦の伴奏に耳が立つ。

 ネットの見聞。

《 権力側が表現の自由にブレーキをかけるとき、まず槍玉にあげるのは、大衆に受け入れさせやすいエログロから。という世論操作のプログラムを、ぼくはリアルタイムで知っています。 》 辻 真先