「 アリス・ミステリー傑作選 」

 大きなモニター画面に迷惑メールしか表示されないのって、つらいな、と思う秋の日、
 「ご盛況をお祈りします」を「ご冥福をお祈りします」
 と読み違えるとは、あの人この人、忌中葉書が届くせいか。

 真の傑作は、伝統と定説を覆す。賞賛の前に悪罵と黙殺が立ちふさがる。そこには 批評は微塵もない。しかし、時代は移り、人は入れ替わる。正当な評価が与えられる時、 制作の現場を知る人は誰も残っていない。見知らぬ物語が捏造される。だからこそ、 文にして遺す。ささやかな証言になるかも、という万が一の実現を夢見て。

 ギリシャの歌姫ハリス・アレクシーウ HARIS ALEXIOU の2009年のCDアルバムを聴いて そんなことを思った。
 http://www.ahora-tyo.com/detail/item.php?iid=8497

 『不思議の国のアリス・ミステリー傑作選』河出文庫1988年初版を読んだ。七篇を収録。 未読は三篇。未読の山田正紀「襲撃」が衝撃的。現金輸送車を襲って成功する話。

《 だが、私にはわかっていた。私は決してひきかえそうとはしないだろう。 金が欲しいからではない。おもしろいからだ。 》

 そんな犯罪の面白さはわからないが、世間の価値観を変えてまうのが、私にとっては 最も面白いことだ。例えば死んだ川と言われた源兵衛川を清流に変えたこと。美術に関しては 個人的な活動なので、結果は私の死後になるだろう。

 横井司が解説で長編で収録できなかった作品として広瀬正鏡の国のアリス』と辻真先 『アリスの国の殺人』を挙げている。後者の徳間文庫版、新保博久の解説が凝っている。 読まずに死ねるか! の昭和の小説はいくらでも出てくる。極楽あるいは獄楽。どっちでも いいや。

 ブックオフ函南店へ自転車をゆっくり走らせていく。川村二郎『里見八犬伝岩波書店1984年 初版帯付、関川夏央二葉亭四迷の明治四十一年』文藝春秋1996年初版、計216円。 日の陰るのが早い。十一月は黄昏の国だ。

 ネットの見聞。

《 『不思議の国のアリス』150周年で思い出したが、サキに『ウェストミンスターのアリス』 (1902)というパロディ作品がある。「アリス」の世界を借りて当時の政界(ウェストミンスター =英国議会)を諷刺したもの。テニエルを模したフランシス・カラザース・グールドの挿絵付き。  》 藤原編集室

 『サキ選集』創土社1969年初版の訳者中村能三の解説に『ザ・ウェストミンスター・アリス』 という長編小説。未翻訳のようだ。

《 古物売買の現場は、まさに価値捏造のドキュメンタリーの趣があります。 千円で仕入れたものに百万円の値を付けて売ることもできるわけです。 》 書肆 逆光

《         日本人
  震度1   気付かない
  震度2   敏感な人なら気付く
  震度3   ほとんどの人が気付く
  震度4   お〜揺れとる揺れとると笑う
  震度5弱  とりあえずテレビの速報を見る
  震度5強  コンビニの陳列がひどいことに
  震度6弱  ブロック塀が倒れ、死傷者がでる
  震度6強  テレビ東京がアニメをやっているのを確認して安心して2ちゃんする

           世界
   震度1   敏感な人なら気付く
   震度2   ほとんどの人が気付く
   震度3   全員が気付き、パニックを起こす
   震度4   家屋の倒壊が起き、死傷者が出始める
   震度5弱  大災害、テレ朝がドラえもん募金詐欺を始める
   震度5強  都市は壊滅状態TBS、日テレ募金を始める
   震度6弱  自力では復興できないレベル
   震度6強  国家消滅                       》