『 古韻余響 I 』

 昨日の中村真一郎『俳句のたのしみ』新潮文庫のくだり。

《 これらの句では、言葉が実に、長年、伝統的に使い慣れたものとしての、 古雅な趣きをおのずと発揮して、そこにある生活の雰囲気──それは江戸の中期以後の 平和で爛熟した時間の余響を、私たちに喚起させる。 》 162頁

 古雅、余響……中村真一郎『 古韻余響 I 』ふらんす堂1992年を手にする。

《 ここに集められた、東西の二十家に及ぶ、有名無名の古典詩人の翻訳と、その詩人 及び詩に附せられた気ままな感想は、この数年、雑誌「中央公論文芸特集」誌上に、 毎回連載中のものである。 》 後記より

 一休宗純『狂雲集』から漢詩の四行詩八篇が訳されている。「石竹」「愛の泉を吸う」 「わが子に」「偈」「娼家の門前で」「愛のしずく」「その泉には水仙の匂い」 「愛人の昼寝を見守って」という題どおり、愛欲を詠った四行詩ばかり。「石竹」。

   一茎の美しい草が紅の化粧をして
   深い眠りのなかに麝香の香りが……
   細やかな竹垣も疎らな籬も、いずれも小粋で
   腰の細い少年の姿を胸に痛いほど甦られる

 富士正晴『一休』筑摩書房1975年初版と、訳を較べてみる。

   一茎の美しい草は紅化粧
   ぐっすりねむれば麝香の涼しい香り
   竹垣、間垣ともにしゃれてる
   細い腰の少年は 切なく悲しくさせるわい

 翻訳で印象はガラリと変わる。

   「愛のしずく」中村真一郎・訳

   夢は深い庭の美しい人の森のあたりを徨い
   枕もとの梅の花は、今や開きはじめた
   口に溢れる淡い味のしずくには清らかな匂いが
   たそがれの月の光のなかの恋の呻きをどうしよう

   「淫水」富士正晴・訳

   夢迷う 天子の園の美人の森に
   枕の梅花 開花をしらせるようす
   口いっぱいのいい香り 清く浅い水
   たそがれの月に 新しい詩をどうつくろ

 同じ詩かと一瞬考えてしまう。元の漢詩「淫水」を掲げる。

   夢迷上苑美人森
   枕上梅花花信心
   満口清香清浅水
   黄昏月色奈新吟

 富士正晴は書いている。

《 この詩、はなはだまどわせる。森を人間のしんとすべきか、林、森の森とすべきか。 後の森とすれば、又、それから転じて何とやらになる。(中略)こうなってくると、 新吟も、詩をつくるのではなくて、一儀に及び、何やら音(ね)をあげることと 見た方が面白く、且つ適当であるかも知れない。 》 202頁

 中村真一郎はそこを狙った。「美人陰有水仙香」。

   楚台応望更応攀
   半夜玉床愁夢顔
   花綻一茎梅樹下
   凌波仙子迸腰間

   「その泉には水仙の匂い」中村真一郎・訳

   ああ この美しい肉は眺めても抱いても……
   夜なかの寝床のやつれた面影
   花は一茎の梅の木のしたで綻(ほころ)んで
   水仙の匂いが腰のあいだに漂って

   「美人ノ陰ニ水仙ノ花ノ香有リ」富士正晴・訳

   女体視るべし のぼるべし
   夜半のベッド 人恋し気な顔がある
   花はほころぶ一茎(くき) 梅樹の下に
   水仙は腰の間をめぐるなり

《 第三句、「花綻ぶ一茎の梅樹の下」とよみたい位である。花は女陰、梅樹は男根であろう。 でないと凌波仙子(水仙)が腰間をへめぐるわけがない。それにしても、水仙の異名が凌波 (波をしのぐ)仙子とは全く恐縮する。大波小波をしのぐであろう。 》 203頁

 凌波……凌波レイ。

 ブックオフ長泉店で文庫本を四冊。北川歩実「天使の歌声」創元推理文庫2007年初版、清水義範 『猿蟹合戦とは何か』ちくま文庫2008年初版帯付、杉江松恋『海外ミステリー マストリード100』 日経文芸文庫2013年初版帯付、週刊朝日・編『忘れられない一冊』朝日文庫2013年初版帯付、計 432円。杉江松恋の英語表記 Sugie Mckoy。
 買いもの途中で携帯に呼び出し。急遽視察の案内の依頼。午後三時半にグラウンドワーク三島 事務局へ。案内、一緒に夕食、夜の螢観賞、歓談、午後十一時帰宅。ふう。

 ネットの見聞。

《 「地球温暖化脅威論者がグリーンランドについて語らない理由」
  Here’s Why Global Warming Alarmists Don’t Talk About Greenland 》 THE DAILY CALLER

《 3月に気候科学者と環境保護運動家と政治家は3月に北極海氷が過去最少と人為的地球温暖化の 警鐘を鳴らしたが現在グリーランドには平年よりも多くの氷が蓄積されている。 》
 http://dailycaller.com/2015/06/05/heres-why-global-warming-alarmists-dont-talk-about-greenland/

《 IoT(Internet of Things)はただのバスワードか第4次産業革命か?あなたの知らない IoTの本当の世界 》
 http://blog.btrax.com/jp/2015/04/19/iot-truth/

《 新しい価値を生み出すための重要な鍵は、作り手個人の感覚、才能、創造性を生かした ものづくりにあります。その極めてパーソナルな創造行為を、安定した価値創出の場に 発展させ産業として成立させる技術がデザインなのです。 》 坂井直樹
 http://sakainaoki.blogspot.jp/2015/06/iot4.html

 ネットの拾いもの。

《 NEWSヘッドライン
  さしこ
  敦子
  まゆゆ
  佳子
  ぱるる
  違和感ないな  》

《 「内閣が基本的な知性を欠くまったくの低脳内閣だった場合はどうするか、 想定はされていなかったに違いない」 》

《 週刊誌の見出しに「実家の蔵書量が生涯賃金を決める」みたいなのがあった。
  だったら、おれは金持ちのはずだし、娘は将来大金持ちだ! 》