「現代詩試論」

 大岡信の初出版『現代詩試論』書肆ユリイカ1955年収録の表題作「現代詩試論」を、『大岡信著作集 第四巻』青土社1977年初版で読んだ。 一読驚愕。「現代詩試論」は1953年の発表。執筆はなんと二十二歳。うそだろう、と思わず唸った。ぐいぐいと押し進む論述、明快で瑞々しい文体。 脱帽するしかないわ。9日に紹介して気になっていた。

《 国民的詩人・大岡信の超早熟っぷりにあらためて驚嘆する 》 三浦雅士
 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51947

《 『現代詩試論』と『詩人の設計図』が、大岡自身のその後の仕事の展開のみならず、現代文学の、さらには現代文明の抱えた問題に解答を与えようとする すべての動きに対して、きわめて大胆な補助線を引くものであったことは、私には疑いないと思われる。 》

 この結びに深く首肯する。ざっくりした論は三浦雅士に任せて、目を瞠った箇所はあまりに多いが、いくつかを。

《 人は破壊しようとして新しい視野をひらいてしまう。それは詩人の認識方法一般についても言われうるものだ。 》

《 日本の現代詩の開花期とされるこの時期に、日本のモダンな詩人たちは、恐らく彼らがその泥くささゆえに軽蔑と無理解を以てしかむかえようと しなかったであろう明治の自然主義者たちと、全く同じようなことをしでかしてしまっているのだ。明治の自然主義者たちがフランス自然主義から 科学的思考をうけつがなかったことが、その後の日本の小説に私小説への道をひらいた大きな原因となったように、昭和初期のモダンな詩人たちは、 シュルレアリスムから革命的思考はおろか、内部へ深く潜入するための方法としてのフロイト心理学も、空間を新たに認識するための方法としての アインシュタインの物理学をも学びとりはしなかったのだ。ぼくが言おうとするのは、こうした方法を学べばよかった、ということではない。 問題は心の傾向にある。 》

《 しかも、詩人であれば、言葉の効果、他者への責任に対しては常に細心の注意を払わねばならぬ。自らの内部に潜入することと、言葉の効果をはかること、 つまり自分の声に責任をもつことが一致したとき、すぐれた詩人は誕生する。 》

 これほどに挑戦的な優れた批評が掲載されているはずと、『昭和批評大系3 昭和20年代』番町書房1968年初版を開いたが、なんと未掲載。巻末の年表の 昭和28年8月の項に「現代詩試論」(大岡信詩学)とあるのみ。黙殺同然。『昭和批評大系4 昭和30年代』番町書房1968年初版には、第一部の主要な批評に 「抒情の批判 ─昭和十年代の抒情詩─」が掲載されている。『抒情の批判』晶文社1961年初版に収録。
 巻頭の写真頁に「『群像』昭和39年8月号「文学読者の傾向」より」の「最も讀みたいと思う日本の現存の評論家は誰ですか」という読者投票記事。226中村光夫、176票小林秀雄、159票平野謙とつづいて最後は2票の針生一郎篠田一士らまでの中に大岡信の名はない。1964年の時点で大岡信は、文学愛好家の 間では無名に等しかったのか。「現代詩試論」が発表されて十五年後の1968年に出た『昭和批評大系3 昭和20年代』でもその批評は評価されなかった。
 1977年に青土社から『大岡信著作集』全十五巻が刊行された。この十年ほどの間に大岡信は揺るがぬ名声を獲得したのだろう。

 それにしても二十二歳か。二十二歳の時に父が急死した。二十代の私を知人の二度目の奥さんは「ベトナム帰還兵(アメリカ人)みたいだった」と後日 述懐した。ネクラそのものだった。大岡信には私とは真逆の向日性を感じる。彼の『肉眼の思想』中央公論社1969年は座右の書だった。新刊で読んだ時の衝撃、 感銘が今も浮かぶ。暗い青春の十字路に佇った時のはるかに遠い思い出だが、道標としてまざまざと思い出す。どのページだったか、「地獄を所有せよ。 地獄を認識せよ。しかしてそれを乗り越えよ。」を心の指針に。
 大岡信とは当時面識はなかった。加藤郁乎、種村季弘中井英夫といった人の著作は、父が急死する前の学生時代に愛読。お三人には東京で幸運にも遭遇。 異端の凄い才能に出会ってしまった。亡くなるまで交際していた。彼らの本には私のことが出てくる。大岡信は地元三島出身で、関心はあって本は読んでいたが、 私には彼は正統、中庸、まともな人という印象で、近寄りがたかった。それが、文化功労賞受賞を祝う会でぐっと身近になった。会の引き出物の詩集 『故郷の水ヘのメッセージ』花神社にサインする大岡信のお手伝いをした。持参した本『藝術と傳統』晶文社1963年初版と『萩原朔太郎筑摩書房1981年に サインしてもらった。「一九九八年一月廿九日」とある。お宝。

 暑い。朝九時の時点で三〇度を超えている。夏用の掛け布団を洗濯して干す。よく乾くぞ。はあ、干すだけで汗〜。こんな時に限って野暮用。銀行、郵便局、 スーパーへ。とうとう36.6度。ひゃ〜。「現代死試論」に見える。

 ネット、いろいろ。

《 我々ミステリ読みはマイノリティである


  月刊小説推理 1万部
  隔月刊 ミステリマガジン 1万5千部


  月刊糖尿病 1万8500部
  月刊住職  2万部
  月刊へら専科 6万部 》 猟奇の鉄人
 https://twitter.com/kashibaTIM/status/899718837083398145

《 最先端物理学では、1位以外には価値がありません。2位は敗者で歴史から消されるだけ。だから絶対に勝たなきゃいけない。/多田将 》  宇宙の謎に迫る世界最先端の“すごい実験”
 http://toshin-sekai.com/interview/20/

《 今までできていた高校生平和大使のジュネーブでの演説が中止になりました。外務省から理由について文書で回答をもらいました。他国から意見、 他国がどこかは言えない。他の国がそこまで意見を言うだろうか。核兵器禁止のスピーチをなぜ日本政府は中止させるのか!戦争被爆国として情けない。 》  福島みずほ
 https://twitter.com/mizuhofukushima/status/900157759580061696

《 なぜだろう。日本は市民革命を体験してないからかな。市民革命を経て初めて市民社会が生まれるのだとすれば。幕末明治の頃はそういう気運が すごく盛り上がったはずだけど下まで浸透はしなかった。そして「社会のために」じゃなく「お國のために」で特攻となった。 》 大野左紀子
 https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/900213035578662917

《 千葉雅也 禁煙ファシズムから身体のコミュニズムへ 屋内全面禁煙化批判 》 WEB Voice
 http://shuchi.php.co.jp/voice/detail/4236?

《 【第1回】毛利悠子|ノイズと即興と電気とアート  》 PEOPLE
 http://enect.jp/people/mouri-1/

《 啄木のお札は嫌だなぁ。啄木で月給支給とかされたら毎月、「働けど働けどなお我が暮らし楽にならざり ぢっと手を見る」言わんならんw 》 菅野完
 https://twitter.com/noiehoie/status/900170137399042048

《 【性格別】「悪の組織」によくいる敵とその裏切り方11パターン  》 オモコロ
 http://omocoro.jp/kiji/117509/

《 盲目のイージス 》