『道元の見た宇宙』

 岩田慶治道元の見た宇宙』青土社1985年2刷を読み始める。文化人類学者が読んだ『正法眼蔵』。以下、「第二章 道元の言葉」から。

《 道元の言葉のもつ迫力の由来は、一つには、かれの意志の強さの反映に違いないけれども、二つには、そしてこれが大切なことであるけれども、学問研究の 方向性にたいする深い自信に裏付けられていることである。(中略)倫理が人間を動かしているのではなくて、透察が人間を導いているのである。 》 66-67頁

《 もちろん、違うジャンルの文章を比較するわけにはいかないけれども、『正法眼蔵』の魅力はそのなかに謎があり、謎をとく鍵がひそんでいるということで あろうか。詩の美しさを超える、あるいはその美しさを否定するものが、そこにあるように思うのである。 》 68頁

《 相手の、社会・文化・宗教の織りなす構造体の、皮まで届く言葉、肉に届く言葉、骨に届く言葉、そしてもう一つ言ってしまえば、生死の彼方にまで届く言葉が ある。「この世」、つまり「現世」だけでなく、「あの世」、つまり「他界」にまで届く、「あの世」から応答がかえってくるような言葉もあるに違いない。 》  80頁

《 つまり、禅問答の言葉は日常語ではなくて非日常語、非常語なのである。非常語でなければ、深淵をこえて自他のあいだに架橋し、眼に見える世界と眼に見えない 世界を同時に見て、それがそう見えたということをあるがままに表現することはできない。そこで詩語が超えられているのである。 》 82頁

 つづく文章は、そこをじつに見事に解明している。簡単に引用。

《 (一)言葉より何より先に、そこから突出するものがなければならない。 》 83頁

《 (ニ)突出してきた「存在のしるし」に命名しなければならない。「仏とは何か」という問いに答えなければならない。 》 83頁

《 (三)問いがあって答えがある問いも、答えも日常語ではなくて、非常語である。理性的な解釈を拒否するという意味で「無理会語(むりえご)」である。 知のひらめきをひそめた言葉である。知そのものである。 》 84頁

《 言霊、言葉のうちにひそむ魂、言葉のなかにこもっている宇宙霊、言葉を生き生きと機能させる無限のエネルギー、言葉の背後にひろがっている虚空。言霊に よって言葉は単なる言語ではなく、また単なる記号であることをやめて、さらには、単なる象徴であることを超えて、構造をもった生きものになるのである。 「一」になる。 》 84頁

《 認知の知、科学的な知、仏法の知、いや、仏法の知というよりも、根源の知そのものについて考えてみたい。 》 96頁

《 道元はつよく視覚型の人間だったのかもしれないのである。 》 99頁

《  しかし、そういう『怪物』は、そういう『知』は、おそろしくて同時に愛らしく、醜くて同時に美しく、逃げだしたくなつようでいて、かえって引きつけられて しまう、賢いのかと思うと愚かかしらと思われるような、暗く深いところかと思うと明るく広々とした場所でああるような、矛盾を超えた世界の象徴、いや、 象徴ではなくて実体、形なき実体、いや、形ある実体なのである。
  こういうわけで道元は、全力を振るって、知を形に転じようとしたのである。 》 103頁

 靄、靄が一気に晴れ渡る、とはこのことか。他の解釈も当然あろうが、今はこれに納得。「第二章 道元の言葉」後半もすごい。引用したい箇所が多くて一つだけ。

《 前節で述べたように、心は外在するのである。そして宇宙に偏在するのである。 》 166頁

 午後三時過ぎ、陽射しがある中、北からの強風に乗り雨粒飛来。半時間足らずで風雨。人絶える。スーパーで見切り品買いだ、とは思っても、出ない。

 新潮社から出る円城塔『文字渦』。中島敦の短篇『文字禍』へのオマージュのような短篇小説だろうか。
 http://www.shinchosha.co.jp/book/331162/
 https://www.aozora.gr.jp/cards/000119/files/622_14497.html

 ネット、いろいろ。

《 そういえば、近所に自家製ベーコンがメインのレストランがあって、たまにゴハン食べにいくのだが、そこのおかみさんは、私のことを「シャチョー」と呼ぶ。 つまり、なんか商売やっているひとに思われているのだろう。でも、メンドくさいから、別に何もいわない(笑)。 》 赤城毅
 https://twitter.com/akagitsuyoshi/status/1022643275092582400

 私は「カンチョー!」と、子どもからも呼ばれている。館長ね。

《 北京市が書店にかける予算を二年前から三倍近くに増加させる予定という記事。賃料や改修の補助をするだけでなく、2020年まで大型書店は16軒、 小型書店は200軒の増加を目指すそうです。優れたデザインの空間に外国の翻訳も雑誌もある書店が重要と結ばれています。 》 藤井光
 https://twitter.com/fujiihikaru/status/1022996004151484416

《  1945年7月27日19:00 日本放送協会のラジオ放送でポツダム宣言の内容が国民向けに発表される

  翌日朝刊の見出し
  読売「笑止、対日降伏条件」
  朝日「政府は黙殺」
  毎日「笑止!米英蒋共同宣言、自惚れを撃破せん、聖戦を飽く迄完遂」 》 芙蓉録
 https://twitter.com/Fuyo1945/status/1022783741364555776

《 翁長雄志沖縄県知事の承認撤回表明記者会見の全文(記者との質疑応答含む) 》 琉球新報
 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-769882.html

《 基本的人権はすべての人間が何の前提条件もなく生まれながらにして持っているもの、ということを受け入れられないひとは、 それこそがあなたがこの世界に生きていていい理由なのだということに気付いていないのだろうな。 》 太田忠司
 https://twitter.com/tadashi_ohta/status/1022764283216769025

《 若い人たちはいろいろな出来事をよく覚えておいて欲しい。自分たちの見ている前でこうやって没落が起こっていったと後世に伝えて欲しい。 世界史上のその他の没落との比較も後世が行ってくれるであろう。 》 國分功一郎
 https://twitter.com/lethal_notion/status/1022775533979893760

《  問われればつい口に出す「会ってない」 (静岡県 勝田敏勝)
  「動静」に載らぬところでひと仕事 (東京都 三井正夫)
  腹心の友は堂々勝手口 (広島県 今本正人) 》 朝日川柳 西木空人選
 https://www.asahi.com/articles/DA3S13608146.html