線描 描線(閑人亭日録)

 線描と描線。どう違うのか。ネットで検索。
  線描=線だけで、物の形を描き出すこと。また、その絵。
  描線=かたちをえがいた線。
 最も簡明な定義を引用した。なぜこの違いにこだわるのか。その昔、上條陽子さんの簡潔なデッサンに一目惚れして購入した。ネットには上げていないが、彩色された絵からも、瑞々しい生きた描線が見えてくると思う。彼女の描線は、じつに魅力的。
 http://web.thn.jp/kbi/kamijo.htm
 管見では上條陽子さんの描線は、ピカイチ。手放しで称賛する。
 奥野淑子さんの木口木版画は、その彫刻された描線が絶品。管見ではピカイチの木口木版画。彼女の言うには、下絵を描かずに直に版面を彫り進める、と。その魅力を最大に発揮した木版画をネットにまだ上げていない。それは、私のすすめで日本版画協会展に応募し、選外に。会場へ見に行ったら、彼女の名前が間違っていて、事務局へ訂正を申し入れた。後年、我が家で小原古邨の木版画を写真に撮り終えた『版画芸術』の編集長にそれをお見せしたら、即「彼女に電話してください」と言われたことは、以前にも書いた。
 http://web.thn.jp/kbi/okuno.htm
 筆によって生き生きした線、生なましい力の漲る筆触で魅せるのは、北一明の書。
 http://web.thn.jp/kbi/ksina.htm
 細い面相筆を駆使して、掌に隠れる小さな星型の画面にピーター・ラビットの絵100点余、3センチ四方の画面に植物や文様を細かく描き込むのは、先だって初個展を終えた内野まゆみさん。子どもの頃書に才能を発揮。大人になってからはデザインの仕事に従事。沼津市を軸に数多くのロゴ・マークから店内のレイアウトまで手掛けた。今回の3センチ四方の小品1,000点は、じつに興味深く面白く、楽しかった。来場された多摩美術大学教授の椹木野衣氏は、千点全部絵柄が違うことに驚いていた。彼女曰く「同じモノは飽きるから」。どれも綺麗な線。それが無比の特徴。千点余、出来上がるまで付き添って、いい経験。内野さんも私も、まだ疲れが抜けない。歳だなあ。

 曇天の一日。こういう日は気力が失せる。74歳。これが老人か。老人だ。老化を実感する日々。食慾は、ある。食慾だけ。昼食を食べ過ぎた、かな。気がつけば宵闇。三時のお八つを忘れていたわ。ま、コーヒーを一杯。