難民、小出版社

 昨日の上條陽子さんの個展「難民」では、彼女がレバノンパレスチナ難民キャンプで絵を教えた300人あまりの生徒の顔写真が彼女の手によって転写された版画になって、ガラス窓に貼られて展示されている。そのかすれた転写に浮かぶひとりひとりの表情がとても魅力的。日本ではなかなか見られない深い表情だ。悲惨な情況にあっても、学ぶことから得られる充実こそが人を輝かせる。……そのかすれた肖像が、彼らは撮影から数年後の今も生きているのだろうか、と現状を憂い、重い気持ちになる。彼らは困難を乗り越え生きているに違いない。困難を生きぬいている事実が彼らの力。それが私を力づける。

 昨日のブックオフ巡りでは力抜け〜。で、昨夜は自転車でブックオフ三島徳倉店へ。北村薫「街の灯」文藝春秋2003年初版帯付、瀬名秀明・編「贈る物語 Wonder」光文社2002年初版帯付、町田康「告白」中央公論新社2006年6刷帯付、赤江瀑「花夜叉殺し」光文社文庫2007年初版、マイクル・コナリー「エンジェルズ・フライト(上・下)」扶桑社文庫2006年初版、計630円。渇が癒えた。
 朝一番でブックオフ長泉店へ。島田荘司「摩天楼の怪人」東京創元社2005年2刷帯付、長田順行「暗号」教養文庫1990年10刷、計210円。「街の灯」「摩天楼の怪人」は贈呈用。

 一昨日の毎日新聞夕刊、荒川洋治「水脈」のお題は「『出版社』を読む」。最近の自費出版に触れ、
「三十年ほど前の自費出版には、もうひとつの世界があった。自分のお金をつかって、自分の本を出すのではなく、他人の本を出す。それが自費出版の、ひとつの流儀だった。」
 そんな「小規模あるいは個人出版社」三十社以上が挙げられている。その中から私が出版当時に新刊で買った一冊を列挙する。
  永井出版企画  清水昶詩集「朝の道」1971年
  構造社  永島卓詩集「暴徒甘受」1970年
  審美社  塚本邦雄「詞華榮頌」1973年
  書肆山田  岩成達也詩集「燃焼に関する三つの断片」1971年
  五柳書院  冨士田元彦「現代短歌 状況への発言」1986年
  仮面社  「吉田一穂大系」1970年
  不識書院  仁平勝「俳句が文学になるとき」1996年
  母岩社  金石稔詩篇集「天獄」1971年
  深夜叢書社  堀井春一郎「曳白」1971年
  れんが書房新社  ルイス・キャロル「もつれっ話」1977年
  群像社  チンギス・アイトマートフ「処刑台」1988年

 他に挙げられていたのは、風土社、南北社、アディン書房、葡萄社、静地社、駒込書房、詩の世界社、七月堂、赤ポスト、トリョーコム、試行出版部、アトリエ出版企画、北荘文庫、文童社、編集工房ノア、冬夏書房、それから未知谷、港の人、吉夏社幻戯書房。他にも個人・小出版社はずいぶんあった。青地社、書肆季節社、南柯書局、冥草舎、湯川書房、林檎屋などなど。お世話になりました。

「今書物はどこから出ているのか。出版社単位で、書物を知る。見きわめる。読者には欠かせない視点だ。」