雨が秋を呼ぶ

 雨が止んだばかりで涼しいので徒歩で来る。一気に秋の気配。

 沼津市在住の彫刻家上松和夫氏来館。開催中の新制作展で 新作家賞を受賞した鉄のオブジェの写真を拝見。四本の鉄柱からなる作品が素晴らしい。鉄の彫刻・立体の流れから逸脱した軽やかなセンスがモノを言う。じつに日本的。北斎の浮世絵へのオマージュのよう。

 橋本治『人はなぜ「美しい」がわかるのか』ちくま新書の続き。

≪「春は曙」で、「夏は夜」であって、でも「夕焼け」はどこにもありません。「夕焼け」という言葉自体がありません。≫ 181頁

≪実は「夕焼けがない」には長い歴史があって、北斎や広重の浮世絵にも「夕焼け」はりません。あるのは「朝焼け」の方です。≫181頁

≪夕焼けがポピュラーになるのは、近代になってからなのです。≫181-182頁

≪人間は、放っておいても「人間」にはなれません。そのことは、ニ十世紀末から二十一世紀初めの日本人のていたらくが証明しているでしょう。人間は、人間になるのです。「なる」という意志によって、人間は「自分という存在」を作るのです。≫117頁