少年科學小説 奇巌城

 富士山くっきり。残雪細々。昼過ぎ、昨日に続いてNHK−BS「ニッポンの里山」で放送する源兵衛川の取材で川に入って清掃をする。終えて富士宮市のRYUギャラリーの白砂勝敏展のパーティへ。富士宮から仰ぐ冨士は三島からとはえらく違った稜線。

 蘭郁二郎『少年科學小説 奇巌城』盛林堂ミステリアス文庫2013年初版を読んだ。表題作ほか「見えない煙幕」「大空の気密室」「謎の空中魚雷」「爆發光線」の四篇を収録。五篇とも昭和十五年十六年の太平洋戦争直前に発表されたもの。どれもアメリカとの戦争間近という気配が濃厚。そして戦局の行方を正確に予測していて驚く。「奇巌城」から。

《 うむ、まさしく×國機ぢや……(略)つまり敵は、富士山を目標にして飛んで來て、そこから東京の見當をつけやうといふのぢやよ、(以下略)」 》

《 それは五十機や百機の編隊ではないらしい。晝間ならば、おそらく空を覆ふ大編隊が見られたに違ひない。 》

 米国と戦争したらば、の冷静な予測が見て取れる。昭和二十年の東京大空襲を想起させる記述だ。収録された爆撃機の編隊など、あたかもその時の写真を基に描かれたよう。挿絵を担当した鈴木御水(ぎよすゐ)の意気込みが、収録された一文「挿繪について」からうかがえる。

《 挿繪家として充分細心な注意を拂つて描いたつもりです。 》

 上記引用からわかるように、本文は「旧字旧仮名遣い」。旧字を拾うのに一苦労。ふう。

《 奇想天外を愛し、尊重しないところに、飛躍的發展性はあり得ない。現牀維持的な退嬰的な見方考へ方からは世界を驚かす大發明は出て來ないのだ。奇想天外は奇想天外に終るものではなくて、新しい定則を發見するための礎石ともいふべきである。 》 「作者の言葉」

 ネットの見聞。

《  ザミャーチン『われら』(1924)、ハクスリー『すばらしい新世界』(32)、オーウェル1984年』(49)。国家があらゆるものを統制管理し、そこから逸脱したものを断罪排除する、20世紀前半に書かれた物語を2013年の日本で読むことの意義は小さくないはず。 》 藤原編集室

 ネットの拾いもの。

《 日本を取り乱す。 》

《 人生いたるところに青山あり(スーツには困らない) 》