「衣食足りて」

 山口瞳『衣食足りて』河出書房新社2006年初版を読んだ。前半は半世紀前、東京オリンピック前の1963年の発表。でも全く古びていない。

《 男にとっていちばん大事なのは友人です。妻とは別の意味ですが、仕事にも世わたりにも友人がいちばん大切です。これからの会社では、ますますその傾向が強くなるはずです。
  ある時代では、国家であり土地であり会社であり家(家族・親類)であったのが、友人に変わってゆくと思います。 》 18頁

《 ある人を評価するには、その人の友人が誰であるかを見ればよい、と私は確信しています。 》 19頁

 個人同士にしても昨日の国家間にしても、今更ながら上記の先見性あるいは真理を感じる。

《 いま何が流行しているかを考えるより、何がいらなくなるかを考えるのも面白い。 》 65頁

 まず思い浮かぶのは豪華な額の油絵と原発

《 とにかく去年の夏のレジュアー・ブームは凄かった。私は新聞にのった富士登山の列の写真を思い出す。 》 67頁

 いつの話? 五十年前。

《 「ホテルマンというのは外交官みたいなもので、誇りを高く持たなければいけないと思います。そのためには、教養のある人でないと……」 》 108頁

《 オリンピックの年は”ホテルの年”でもあります。”あったかい感じ”は万国共通の”いい感じ”だと思います。これを大事にしてください。 》 109頁

《 私は、男の交際は仕事に対する評価だけでいいと思っているのであるが。 》 139頁

《 しかし、私にとって不可解なのは、さまざまな高度な防衛論議のなかに、根本的に「人が人を殺すことは悪いことだ」という言い方がないことだ。 》158頁

《 これは人生観というほどの大袈裟なものではないが、私の考えは、この人生、楽しく生きてゆこうということに尽きるのである。 》 187頁

 この歳になるとよくわかる。

 昼前、ブックオフ沼津リコー通り店へ自転車で行く。黒川創『かもめの日』新潮社2008年初版、嵐山光三郎芭蕉紀行』新潮文庫2004年3刷、津原泰水『赤い竪琴』創元推理文庫2009年初版、計、ニ割引、252円。午後はブックオフ長泉店へ行く。文庫本を三冊。木内昇(のぼり)『茗荷谷の猫』文春文庫2011年初版、久世光彦(くぜ・てるひこ)『曠吉の恋』角川文庫2008年初版、クレオ・コイル『名探偵のコーヒーのいれ方』ランダムハウス講談社文庫2006年初版帯付、計、ニ割引、252円。これでお正月のブックオフ巡りは終了。その後見知らぬ裏道へ入り込み、オモシロ物件を「写ルンです」で撮る。どの物件も数年後には無くなっていると思われる。

 ネットの見聞。

《 今年初の西部古書会館。本が安くなった。昔、二千円くらいで自分が買った本が百円、二百円。それでも売れ残っっている。ちょっと悲しい気分だ。 》 荻原魚雷

 どの相場も激しく変化している。どこのブックオフにもバーコードリーダー・セドリの姿。勘違いしている気がする。

《 初詣に行く神社のお神籤が新しいデザインになっていて衝撃。どう見ても前の方がいい。神社も美意識をしっかりさせてほしい。 》 原研哉

 初詣にまだ行ってない。

《 首相は去年の「村山談話見直し撤回」と「改憲断念」についてアメリカを恨んでおり、それが「対米従属を最小化して、外交内政で(アメリカの嫌がることを含めて)フリーハンドをふるう」路線へ彼を押しやりました。 》 内田樹

《 この強気な政権運営アメリカは(鳩山内閣に対してとは違う意味で)危機感を募らせています。「替えが効くなら、中国と戦争を始める前に替えたい」というのがアメリカの本音でしょう。 》 内田樹

 ネットの拾いもの。

《 うちの中の電球を全部青白いLED電球にしたら犯罪が減った。 》