「読書と或る人生」

 小保方(おぼかた)晴子。かっぽう着がバカ売れるかもしれんなあ、と空を見る。曇天〜雨。外出(=ブックオフ行き)する気力消沈。本棚の整理(本の入れ替え)を少しする。丸椅子に乗って天井まである手作り文庫棚の最上段と二段目をいじる。散在していた江戸川乱歩の文庫本(河出、講談社、光文社、創元、ちくま、ポプラ)をまとめる。その横にチャールズ・ディケンズ(岩波、角川、新潮)を並べる。んなことをして愉しい時間を過ごす。そこまではいいが、本棚から外した文庫本をどこに置くか。数日すると移動先を忘れてしまう。この前も床に積んであった須賀敦子全集(河出文庫)をおろおろ探しまくった。別の部屋に移したことをすっかり忘れていた。なまじっか整理するもんじゃあないと戒める。
 それにしても、須賀敦子(文庫十四冊)の隣は井上ほのか(講談社X文庫十五冊)。すごい取り合わせだ。その後ろは泉鏡花。ああ、鏡花の本をここへ集めなくては。しかし、本は増えてくる。処分する本はまだ段ボール一箱のみ。コーヒー一服。

《 福原麟太郎に『読書と或る人生』という本がある。 》 古本ソムリエの日記

 本棚の奥から福原麟太郎『読書と或る人生』新潮選書1967年初版を取り出す。高校時代に新刊で買い、読んだ。四十年あまり経っての再読。今読んでも、今だからこそさらにおもしろい。
 スターン『トリストラム・シャンディ』が取りあげられている。台所の棚には話題の『世界文学大系76 リチャードソン/スターン』筑摩書房1966年初版がある。七百頁にならんとする分量。新刊で購入したようだ。定価950円。
 挟み込みの栞「新刊ニュース」の出版目録がすごい。『現代文学大系』『明治文學全集』『古典日本文学全集』『世界古典文学全集』『世界文学大系』『経済学全集』『現代世界ノンフィクション全集』『藤村全集』『ヴァレリー全集』『梶井基次郎全集』『竹内好評論集』『夏目漱石全集』『フローベール全集』『キルケゴール全集』『上林暁全集』『世界の名曲』『日本文化史』『戦後』など目白押しに刊行中。飛ぶ鳥を落とす勢いだね。後年失速したけど。

《 私の論法でゆけば、文学などいくら論議しても、文学は作品そのものであって文学論ではないということになる。 》 71頁

《 文学は人を感動させる。その感動した人にとってのみ文学はある──存在する。その存在は、感動しない人には解らず、感動した人はその感動を分析して科学的に説明することができない。 》 77頁

 文学に限らず、芸術全般がそういうものだろう。意を強くする。

《 ただ何となく好奇心に駆られて集めた文献が、思わぬところで、役に立つということはどなたの読書経験にもあるものであろう。 》 123頁

《 その頃、というのは明治の後半から大正のいわば「活動写真」の流行した時代で、その頃は演芸界もそうひろくなく、バレーとか、ミュジカルとか、いわんや、ちかごろの妙な狂乱舞踏などは生まれてもいず、むしろ狭い世界であった。 》 126頁

 狂乱舞踏。時代を感じるなあ。上記のミュジカルとか、ヂョンソン、ニウヨーカー、ニウス、ニウズ・ウィーク、ポッケット、ヰンストン・チャアチル、ミカエル・バクウニン、ポウプなど独特な表記なので、「しかしゆっとりとして良い辞典であった。」142頁に、「ゆっとり」を辞書で調べてしまった。誤植のようであった。

 ネットの見聞。

《 歴史といものは、その多くが地面に刻印されたものであり、歴史は「地」の重層そのものだといっていいでしょう。(引用者:略)ここでは、風景というのは、景気であることに注意を払っておきたい。景気とは景色から立ち上がる「気」のことであり、本来、経済のことだけを述べた言葉ではありません。むしろここでは景気が経済の意味にのみ特化することの怖さを示唆したいのです。 》 平野雅彦
 http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/2021.html

《 ここまで雇用環境が劣化してしまうと、もう都市部で賃労働をしていたら生きていけないと判断する人たちが大量発生してきます。そういう若者たちが「生き延びるためのオルタナティブ」を探し始めるのは当然でしょう。組合をつぶし、非正規雇用を常態化してきた企業は、どこかでつまずくはずです。  内田樹

《 「いただきます」は作ってくれた人への感謝なんだけどな。戦後の変な情操教育の影響受けて「命をいただくからいただきます」みたいな後付の珍説を信じる馬鹿が増えた。 》

 ネットの拾いもの。

《 消費税を8%にするなら、政府よ、8円玉を作ってくれ。 》