「 人間科学講義 」つづき

 養老孟司『人間科学講義』ちくま学芸文庫2008年初版、後半は話題が多岐にわたる。 興味を覚えた箇所を一つ一つ取り上げるとえらい量になるので、適当に選ぶ。

《 ここから逆に都会人思考原則が導き出される。それは予測と統御、平たくいうなら 「ああすれば、こうなる」である。そしてこれこそがヒトの意識の重要な機能である。
  都会すなわち文明社会では、すべてが「ああすれば、こうなる」という原則で 動く。 》 126頁

《 現在の日本という都市社会では、都会の自由、田舎の不自由しか論じられないのである。  》 128頁

《 古代都市文明は木材に依存した結果、森林の獲得と喪失にしたがって、栄枯盛衰を 引き起こした。それと同じく、現代都市もまたエネルギー源によって興亡するはずである。  》 133頁

《 こうして日本社会では、仕事、身体のケア、子育てのすべてが、「手入れ」という 一つの原則で行われていたのである。近年の都市化は、それをむしろ徹底的に変更、 破壊した。 》 147頁

《 ここで江戸の封建制度を定義するなら、人間に関する基本的情報を社会制度として 固定化したもの、ということができよう。 》 155頁

《 いかなる名論卓説に基づいて書物を著しても、だれも理解しなければ意味がない。 》  189頁

《 それをできるだけ単純なイメージとして描くことを試みるとすれば、自己意識は 心と身体の折り返し点とでもいうことになろうか。この折り返し点から一方に向かっては、 心の世界が広がっている。 》 205頁

《 しかしわが国では、出版に関する猥褻の取り締まりは、江戸期の最初の出版統制に 始まる。ということは、おそらくそれ以前には、猥褻という社会的な概念自体がなかったかも しれないことを示唆している。性は生老病死と同じく、ヒトに与えられたもの、自然である。 それを公にしないことをわれわれは文明と呼ぶ。 》 235-236頁

《 ヒトを男女二つの範疇に区分するのは、じつはさまざまな論理的問題を引き起こす のである。もっとも通常は、倫理的問題のほうが生じると思われているのだが。 》 256頁

《 新発見とは、私にとって、つねに私自身に関する発見である。俺はこんなことも 知らなかったのか、というだけのことなのである。 》 「あとがき」260頁

 ブックオフ長泉店で三冊。三浦しをん舟を編む』光文社2011年初版帯付、朱川湊人 『鏡の偽乙女−薄紅雪華紋様』集英社文庫2013年初版帯付、吉川幸次郎『漢文の話』 ちくま学芸文庫2010年4刷、計324円。

 例年より早く年賀状の宛名書きを始める。ポストを見ると、書いたばかりの人から 喪中葉書……。四日に亡くなったんじゃなあ。

 ネットの見聞。

《 昨日聴いた話。松浦寿輝さんも柴田元幸さんも東大を辞めていたこと (ぼんやりしていて、知りませんでした)。グローバル化という名のアカデミアの 「対米従属」にもう耐えきれなくなったそうです。 》 内田樹

 ネットの拾いもの。

《 Y.K.S.(読んで・後悔・させません)! 》