『加藤郁乎特例号』

 御沓幸正氏主宰の同人誌『吟遊星』第11号は「加藤郁乎特例号」。1980年刊行。豪華な執筆陣。 白石かずこ矢川澄子藤富保男柳瀬尚紀……やや、拙者の名前が。いやあすっかり忘却の彼方。 恥ずかしいことはうっかり忘れてしまう。まあ、今ならば笑ってやり過せる二十九歳の拙作。 加藤郁乎の俳句からの引っ張り。

《   「献 句」
   垂直に吾(あ)をば白鳥青の極
   切り株や斧づからまるぶんまわし
   幾矢発止一騎霊層の冬の海
   家系樹を踏み分け一喝龍をひこひこ
   草刈飛行器(ファルマン)もある宙返りのけつあたま
   出会ひとは旅人かへらずクレド行く
   異句屋ていっくに溺死すること二三遍
   異化の香は四季たつ沢の詩句らーめん
   はやくいうと借りなとも地の極南
   リラリラと蟹股の神らひとよぎり
   小栗山(こっくりさん)松籟や鴨が鷹なる  》

 拙い自筆の「註解」が挟まっていた。これは便利。最初の句、「垂直に」について。 吉田一穂の詩『白鳥』への加藤郁乎のオマージュ、

  白鳥は来る!垂直のアンダンテ
  青葉かの吾をば稲羽のしろうさぎ

 を掛け合わせた。寺山修司の句「目つむりていても吾を統(す)ぶ五月の鷹」は考えになかった。
 最後の句、「小栗山」について。松籟は招来に、鷹なるは高鳴るに掛けてある。小栗山は、 インド文学者にして小栗虫太郎の研究者でもあった(亡くなられた)松山俊太郎に掛けてある。 彼は加藤郁乎『球体感覚』の註解書『球体感覚御開帳』を著している。『現代俳句全集 一』 立風書房1977年に解説「どこへイクヤ論」を書いている。その結び。

《 『牧歌メロン』は大嫌い、『出イクヤ記』も嫌いな句が多いが、『佳気颪(かきおろし)』 の「さびしさ」には、郁乎の本来沈潜すべき「気分」があって、また好きになりはじめた。

   91 杉焼にこげついて鴨うっぽっぽ

 この句の「鴨」に、どうしても郁乎自身の姿を連想してしまうが、一サイクルが終ったところで、 フェニックスよろしく再度雄飛してくれるだろうと期待している。 》

 女友だちは一瞥、一言「面倒くさ」だろうなあ。などと懸念しつつ、あらためて『吟遊星』冒頭、 加藤郁乎「冬籠」を読む。やや。

《 過般、越沼正君の慫慂御好意により三島の鈴木氏が許の一誌に白隠禅師につき蕪文少々をしたゝめたが、 白隠全集を繰る折ふし、読書量読解力ともに人並外れた禅師の大気にうたれ目を洗われつゝも、その細字 難訓おびたゞしき連続行列に音をあげた。 》

 我が家の向かいの鰻の人気店桜家の先代に頼まれて、彼の個人誌への寄稿を依頼しに、奥さんと二人で 鰻の蒲焼きを手土産に旗の台の加藤氏宅へ訪問した。その本は本棚の天井近くにあるはずだ。イクヤ氏は 三島へ来訪されたことはなかったが、種村季弘(すえひろ)さんを桜家に招待したら、えらく気に入られて、 氏の著書に拙者の名前と桜家が出てくる(桜屋と誤記されているが)。

 昼前雨が止んで曇天の午後、源兵衛川中流、水の苑緑地周辺のヒメツルソバを抜く。春に駆除したので 芽や短いものばかり。それでももう花をつけている。一時間余りで土のう袋一袋。そろそろホタルが舞う。

 ネットの見聞。

《 民主主義を豊かにするには、一種のゴミ拾いみたいな気持ちで臨むこと。わたし一人が拾っても 街はあまりきれいになるわけじゃないし、一人では拾いきれない。だけど、拾った分だけ街はきれいになる。 私の姿を見た人が自分もゴミを拾おうと思ってくれるかもしれない。(想田和弘) 》 黒木睦子
 https://twitter.com/mutsukuroki

《 モノクロームが幽玄な雰囲気さえ湛えており、カラーでは見過ごしがちになる構造的な特長を くっきりと示している。 》 林哲夫

《 どれもいい写真だ。やっぱり、これらもモノクロームだからこそ、という気がする。 》
 http://sumus2013.exblog.jp/24011989/

《 監督のブレッソンはカラーのあいまいさを嫌ってモノクロームでしか撮らなかった監督であるが、 初のカラー撮影をこのとき行う。
  ドミニク・サンダの美しさがそうさせた、そうである。 》 水仁舎
 http://suijinsha.jugem.jp/

《 フクイチの件は、ツイッターでも見かけなくなった。HICからの廃液溢れは「どうでも良いこと」なのか。 リスクの高いタンクの撤去・解体は、重要ではないのか。タンクの撤去が出来なければ、空いた場所への新設も できない。新設出来なければ、汚染水の行き場が無くなる。安保法制より重要だろう。 》 春橋哲史
 https://twitter.com/haruhasiSF

《 すでにニュースピークは使われている。 》 中野善夫
 https://twitter.com/tolle_et_lege

 ジョージ・オーウェルの「1984」で戦争を担当していたのは「平和省」。

 ネットの拾いもの。

《 安倍さん、原発も首相もやめなさい! 》

《 それにしてもツィートの拡散は速い。中身を途中でぶちまけて空の器だけ運ぶ暴走宅配のようだ。 》