「ただの暗合ではない」

 昨夜九時過ぎ、山崎正和『社交する人間』中央公論新社、「第八章 社交と政治」に集中していたら同報無線で火事の報。 どこだろうと思う間もなくサイレンが近づいてくる。窓を開ければ我が家の前に集結。十台ほども。広小路駅南通りのようだ。 ところがそこは一方通行の出口。消防車はそこで停車。消防車は団子状態、大通りは数珠つなぎの大渋滞。土曜の夜とあって、 どこから湧いてきたのか群れなす野次馬。結局煙も見えず、ボヤで済んだようだが、いやあ面白かった。 「第八章 社交と政治」もじつに面白い。豊かで深くてなかなか進まない。結びの近く。

《 この漠然たる自覚に立って現代の「淋しい群衆」はもっと具体的に、個別化した自分をまさに個別として認知してくれる 他人を求めている。自分をかけがえのない個人として処遇し、一人の何者かである人間として尊重してくれる他人、 そういう存在としてふさわしい配慮を交換しあえるあいてを欲しがっている。自由を保障する付かず離れずの距離のなかで、 しかも安心を担保する小規模の人間関係が期待されているのである。
  思い返せば、経済の分野で歴史的な重点の振り子現象を予想し、生産と分配の経済から贈与と交換の経済への移行を 示唆したのが、前章の結びであった。繰り返すまでもなく、生産と分配は体系的な組織にこそ支えられる営みであり、 閉じられた国家の体制にもっとも適合しやすい営みであった。それが開かれた贈与と交換の経済に道を譲ろうとし始めたとき、 二十一世紀の国家もまたその役割の限定を経験しつつあるのは、もちろんただの暗合ではないはずである。 》 208-209頁

 フェイスブック、イギリスのEUからの離脱。ただの暗合ではないな。今朝の内田樹ツイッター

《 おはようございます。今日の神戸は気持ちよく晴れてます。今日はこれから関大へ行って「贈与」について お話ししてきます。貨幣と商品の交換という商取引のスキームでしか社会関係をとらえられない人たち(現代人の多く)は 進化論的にはサルに退行しているという話をしてきます。 》
 https://twitter.com/levinassien/status/746850056163078144

 朝畳に横になっていて浮かんだ。芸術作品とは、それが鑑賞者の心の奥深くに届き、世界観と価値観に多少なりとも 変化を促す力を有するモノ。よって愛玩されるだけのモノは芸術作品ではない。大好きなモノ(美術品)とすごいと 評価せざるを得ないモノ(芸術品)は一致することもあれば、違うこともある。それは文学でも音楽でも同じこと。
 美術品、芸術品どちらにも昇格降格、消費期限がある。これはそれぞれの時代において変わる。今はこれくらいかな。

 午後、お買いものついでにブックオフ長泉店へ。多和田葉子『雪の練習生』新潮文庫2013年初版、虚淵玄大森望・編 『楽園追放 REWIRED 』ハヤカワ文庫2014年2刷、計216円。夏目漱石『こころ』新潮文庫のカバー違いが三冊並んでいる。 手にしたが、そこまでのマニアではない。でも、買うものがなかったら買ったかも。

 ネットの見聞。

《 だいぶ前のユリイカ大岡信が選者としての迷いのようなことを少し吐露していた。何でもわかって、書き手の意図や もしかすると意図しなかった照応にまで理解や共感を行き届かせる自分の読み方が果たして望ましいのかどうか。 その問いをどうまとめていたかは忘れたが… 》 冬泉
 https://twitter.com/etoileerrante1/status/745717078909296641

 来月末の大岡信ことば館での発表が心の隅に。詩のコピーなど準備は万端だが……語りたいことが増えて。

 ネットの拾いもの。

《 ツイッタランドの読書家の皆さんが犯罪を犯した場合,皆さんの本棚から任意の書籍が抽出され, 犯罪的思想の原因の一つとしてマスコミ等で取り上げられる可能性があります。 》 えすえすマフラー作戰
 https://twitter.com/ssmufler/status/745883325886271488

 うちの本棚もアブネエなあ。『ヴァギナ 女性器の文化史』、『みんな、気持ちよかった 人類十万年のセックス史』、 『おなら大全』。『クマのプーさんの哲学』……これは違うか。それにしても、あの本がない。買ってなかったのかなあ ……。こんなところに。本の横積みは、やはりいかんなあ。

《 大抵のことは諦めれば解決する。 》

《 何かを始めるのは簡単だけど、何かをやめることは難しいですからね。 》

《 伊勢志摩サミットで「リーマンショック級の経済危機前夜」と発言したアベちゃんをバカにして笑ってたお前らは、 ちゃんとアベちゃんに「ごめんなさい」したか?
  危機が分かってたのに何の対策も取らず強烈な円高と株価大暴落を止められなかった間抜け首相のことか? 》