『さらば気まぐれ美術館』再読(閑人亭日録)

 洲之内徹『さらば気まぐれ美術館』新潮社 昭和六十三年三月二十日発行 昭和六十三年十一月二十日四刷を久しぶりに少し再読。最初の「トドを殺すな」は歌手友川かずきの話題。メモ。

《 友川さんの土方歴は昨日や今日のことではない。友川さんは昭和二十五年生まれだが、 》 19頁

 私と同い歳か。

《 この人たちの発想はイデオロギーだの、何とか学だの、立場だのから来るのではなく、鳩だの、野糞だのから来る。おそらく、そうでなければ、この、どういう体系化も無意味であるような現代の世界に、正確に対応することはできないのだ。若いこの人たちをよく見ていなければならない、と私は思った。 》 21頁

 これが『芸術新潮』に掲載されたとき、洲之内徹は七十二歳・・・今の私と同じ歳。

《 何かをどうかしようとするよりも、より深く感じること、感じる力を養うこと。──私にとっても大切な言葉だ。 》 24頁

 「マドリードからの手紙」。ジョルジオ・モランディについて。

《 そういうものを見ているうちに、われながら唐突だとは思うけれども、いつの間にか、虚と実という概念が私に生まれてきたのだ。モランディは虚を描くことで実を存在させる。虚で実を描く。こんどはモランディが魔術師のように見えだした。
  明と暗といってもいいし、光と影といってもいいが、彼の絵では明よりも暗に、だいじな役が振られているらしい。明の中にはモランディの物は存在しない。(引用者・略)残るのは影だ。影が実在する。だが、だからこそ、私たちは限定されることのない、無限の可能性を秘めた存在をそこに感じさせられる。存在は可能性として現れる。まさに虚々実々だ。それにしてもこの不思議さ、この見事さ、そしてこの自由。 》 32-33頁

 「朝顔は悲しからずや」。

《 つまり、その前後の年齢層がフォークにいちばん密着していた層で、フォークもまたその連中の中で生きてきた、ということなのだろう。そして、二十代はもう違う、うちのカアチャン(半年前に結婚したばかりの可愛らしい奥さんを彼はこう呼ぶ)は、たとえば中島みゆきなんか聞きたがらない。だからいろいろ困るんだよなあ、と言うのであった。私はそのカアチャンに、なぜそうなのかと訊いた。「ネクラだから」と、彼女は一言で答えた。
  それにしても、フォークの話になると、必ず世代の話になってしまうのはなぜだろう。誰と話してもそうなのだ。ひとつは、その誰にとっても、歌が、自分の世代を象徴するような物事や事件の記憶に結び付き、一つになっているのではあるまいか。例えば新宿駅西口の反戦フォーク集会では、いつも歌はまず岡林信康の〈友よ〉で始まり、最後にはまた、〈友よ〉だったらしい。集まる若者の大半は高校生だった。 》 69頁

 私は大学一年生だった。

 「女のいない部屋」。

《 音楽のことを語る言葉を知らないので、私は、かつての軍参謀部員だった頃の私の用語でこの感じを言わせてもらうが、モダン・ジャズというのは、戦略ではなく戦術、外線作戦ではなく内線作戦だという気がする。戦場から離れたところで作戦計画を立てるのではなく、当面の敵に膚接して戦闘を実施する。即戦即決だ。何よりも必要とされるのは柔軟な戦闘行動である。 》 77頁

《 コルトレーンのサックスの音がまた、演奏のその一瞬毎に生まれているという感じがする。レコードで聞いているのに、この一瞬にはもう再びは遭えないという気がするのだ。 》 78頁

 同感。さあ、コルトレーンを聴くか。

 朝、源兵衛橋上流の茶碗のカケラ、ガラス片を拾う。重くなって終了。帰宅、一汗。コーヒーが旨い。

 ネット、うろうろ。

《 図書館では家には置けないような大きな本を見かけることがあります。そんな大きな本をプラハ国立図書館で閲覧している1950年代末の写真 ©Miroslav Peterka 》 Masayuki Tsuda
https://twitter.com/MasayukiTsuda2/status/1655709630566387712

《 全国の皆さん、厚顔無恥岸田文雄は米国の顔色をうかがって「核兵器禁止条約」すら批准してないのに、広島サミットで「核なき世界」を宣言するそうです!これって万引き常習犯が「人の物を盗むのは悪いことです」と抜かすのと同じです!こんな恥知らずは次の総選挙でトットと退場してもらいましょう! 》 きっこ
https://twitter.com/kikko_no_blog/status/1655901026594222082

《 これまでの首相だった麻生太郎安倍晋三菅義偉のやって来たことが「甘利」にも酷かったから、なんにもしない岸田文雄が良く見えてしまうという「目の錯覚」に、有権者の半数近くが騙されているという悲しすぎる現実。天国から、いかりや長介の「ダメだこりゃ!」という声が聞こえて来そうだ。 》 きっこ
https://twitter.com/kikko_no_blog/status/1655910714052337664