秋の風

 昨夕、自宅に少し重めの封書が届いていた。差出人は八月十六日に病没したミステリ作家服部まゆみさんのご主人。「ミューズよ、かの人を語れ  服部まゆみの記憶と作品」という瀟洒な小冊子。全編に目を通す。添付された氏直筆の手紙に胸を衝かれる。ただ一人の女性への尽きることのない深い愛。自室を出て自転車に乗り、ブックオフ三島徳倉店へ走る。移ろいゆく闇と光が心を静める。眩しい明りの下、本を眺める。佐々木丸美「水に描かれた館」講談社1978年初版、同「新 恋愛今昔物語」講談社1981年初版帯付、「ブロンテ全集7 嵐が丘みすず書房1996年初版栞函帯付、日夏耿之介「ポオ詩集│サロメ講談社文芸文庫1995年初版、計420円。「嵐が丘」は本体八千円で新品同様。参ったなあ→うれしい。「水に描かれた館」裏表紙の味戸ケイコさんの原画は常設展示。

 俳人の成田千空が亡くなった。四半世紀前、この作品に瞠目。

  人が死にまた人が死に雪が降る  成田千空

 きょうは風が強い。秋天、富士は厚い雲に隠れている。道端の畑、小菊─黄菊白菊が満開。元気いいや。

  しぬしぬときくきくだにも秋の風  加藤郁乎

 ブックオフ長泉店で二冊。服部まゆみハムレット狂詩曲(ラプソディー)」光文社1997年初版帯付、「三島由紀夫全集19」新潮社1973年初版函帯付、計210円。