最終章

 壁面のアクセアサリーが消えてガランとした展示室……ではない。買い手からしばらく展示していて、と依頼された椅子、売れなかった椅子たちが、あたかも龍安寺の石庭のように点在している。壁面に向いているので、背面、足部の深い彫り込みが先の展示よりも明瞭になる。そう、誰も見たことのない魅力に目を惹きつけられる。これらの木彫の椅子が正当に評価されるには、まだしばらく時間がかかりそうだ。

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で三冊。中村淳彦『名前のない女たち 最終章 セックスと自殺のあいだで』宝島社 2009年2刷、森見登見彦『夜は短し歩けよ乙女角川書店2008年10版帯付、柳沢有紀夫『世界ニホン誤博覧会』新潮文庫 2010年初版、計315円。

 中村淳彦『名前のない女たち 最終章』は、企画AV女優たちの悲惨としかいいようのない生い立ちの告白集。著者自身が壊れかけてしまう。「あとがき」から。

《 現代社会を漂流して女の最終手段を売ることを決意して、決して成功のない世界である企画AV女優という世界を選んだ女たちは、絶望やトラウマの温床となっていた。》

《 彼女たちはこの社会や自分自身に心から絶望していた。生きているこの先に絶対に癒しや救いがないことを知っていて、モラトリアムを得るために社会との最後の接点としたカラダを売ってかろうじて境界線を生きて、最終的には自分を壊してすべてを終らせるという将来を見ていた。その死という選択は若さ故の暴走や自虐的なSOSサインではなく、悩みもがきながら掴んだ難産の末の結論であり、他人が入り込む隙間のない、自分で決めた揺らぐことのない決断だった。》

《 誰かを助けることができる人間になるために、これからゼロからの生き直しである。》

 と結んだ1972年生まれの中村淳彦は《 株式会社曙福祉プラニングを設立。介護職として高齢者デイサービスの運営にかかわりながら、人間関連のノンフィクションを執筆している。》

 ネットのうなずき。

《 「プロになったあなたに与えられる報酬というのは、あなたがその仕事を続けて行けるように与えられるモノだ」 》