『 木 』

 幸田文『木(き)』新潮社1992年初版を読んだ。二昔ほど前、知人女性から恵まれた。 幸田文のエッセイをまともに読むのはこれが初めて。最初の「えぞ松の更新」。

《 木というものは、こんなふうに情感をもって生きているものなのだ。今度はよほど 気を配らないと、木の秘めた感情はさぐれないぞ、とおもった。 》

 竹を割ったようなさっぱりとした、さくさくとした進む文章。プロだね。しかし、 それがワカルのも、こちらの経験の積み重ねがあればこそ。二昔前ではわからなかった。

《 いい話をきかせてもらうことは、いつ迄も減らない福を贈られたと同じである。 》

 この一文の収まった「材のいのち」が最も印象深かった。

 お宝はどこに紛れているかわからない。昨晩、用事のついでに開けた桐箱に入っていた、沼津市の デザイナー内野まゆみさんが幼児サイズの白地のタンクトップに線描で描いたテディ・ベアを 久しぶりに見た。見た → 視た → 瞠った。いいなあ、と以前も当然思った。が、今回久しぶりに 見てオドロイタ。この品格は……ちょっとない。描線の美しさなら、あるいは他の人も表現できよう。 が、一本の輪郭線で胴体のヴォリューム感を見事に表してしまうことは、なかなかできることではない。 そして表情を含む全体の美しさ=品のある静かな存在感には、ちょっとやそっとではお目にかかれない。
 綿100%の布地に描かれているこれをガラスで被うと、木版画や銅版画同様、微妙なじつに微妙な味わいが つぶれてしまう。直(じか)に見るのがいちばん。簡潔にして懐の深い表現。長い時間をかけて描いては いないだろう。しかし、この潔い線描=表現に至るまでには、人知れぬ長い修練があったに違いない。 筆一筋の精励の歳月をふっと垣間見せる、テディ・ベアの杳(はる)かなる眼差し。 幸田文「藤」の一文を思う。

《 思うたびに、あわい愁いがかかるのである。 》

 脱帽。

 ネット注文した古本、イタロ・カルヴィーノ『柔かい月』ハヤカワ文庫SF1981年初版が届く。 500円。他の本で読んでいるけど、表紙が深澤幸雄の銅版画『奇妙な静物』1971年なので購入。これで 文庫本十一冊。ブックオフ長泉店で二冊。高橋克彦『みちのく迷宮』光文社文庫2012年初版帯付、 安岡章太郎『歴史への感情旅行』新潮文庫1999年初版、計216円。

 ネットの見聞。

《 原発の港湾内の放射性物質濃度 過去最高に 》 NHKニュース
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150530/k10010096561000.html

《 原発事故の汚染水はブロックされている/コントロールしているという嘘、現行憲法は 外国の押し付けだという嘘、米軍の艦艇で日本人の母子が避難するという嘘、アベノミクスで 国民の生活環境が良くなっているという嘘、重要な政治的判断の前提には必ずと言っていいほど、 首相の「嘘」が添付されている。 》  山崎 雅弘
 https://twitter.com/mas__yamazaki

《 「首相やじ 国会を冒とく」 釈明不適切 与党も苦言 》 東京新聞
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015053002000153.html

 ネットの拾いもの。

《 護憲派は敵が攻めてきたらどうすんだ?って、個別的自衛権行使、日米安保条約発動、 国連安保理付託に決まってるだろ、バカw 》

《 安倍と黒田のアベクロコンビはどこまでも日銀の麻薬を打ち続ける。 》