異星からの異物(閑人亭日録)

 北一明の焼きものは、陶芸界では異星からの異物のように思えたようだ。これは北から聞いた話で信憑性はわからないが、北が突然にとんでもない焼きものを個展で 発表して以来、その言動と相まって陶芸界、陶芸業界からは無視、黙殺された。業者から陶土を購入できなくなることを予想して五年分の陶土を買っておいた、と。
 1982年、銀座アートホールでの個展〈創造10周年記念〉1982年7月31日(土)~8月7日(土)の案内状を文芸評論家常住郷太郎氏から受け取り、個展へ足を運んだ。 へえ~、と茶碗の色彩に驚き、二階のデスマスクの展示に魂消た。これはなんじゃい。教えられて北の著書『ある伝統美への反逆』三一書房1982年3月31日初版を読んだ。 感想を送ったところ、それを北が読んで多いに喜んだようだ。それから北との付き合いが始まった。
 『ある伝統美への反逆』、「あとがき」の《 今回、日の目をみなかった幻の小タイトルを少々羅列する 》から少し紹介。
  (二) 南方熊楠と執拗な目──粘菌研究と美の日々──
  (三) 中井美学の問題点をめぐって
  (四) 森有正における光と経験について
  (五) 服部達と原口統三の生き方
  (九) 不連続の美──魯山人作陶批判──
 南方熊楠森有正、服部達は著作を読んでいるので読んでみたかった。
 北一明の個展案内状。
  1982年7月 31日(土)~7日(土) 銀座アートホール 〈創造10周年記念〉
  1983年12月19日(月)~25日(日) 同〈海外著名美術館作品収蔵記念 炎造形展〉
  1984年12月17日(月)~23日(日) 同〈百碗二百盃〉
  1985年12月16日(月)~22日(日) 同〈海外著名美術館作品収蔵記念〉
  1986年12月15日(月)~21日(日) 同〈珠玉小器特別展〉
  1987年12月14日(月)~20日(日) 同〈創造15周年記念〉
  1988年12月19日(月)~25日(日) 同〈創造16周年軌跡展〉
  1989年12月18日(月)~24日(日) 同〈珠玉小宇宙創作展〉
  1990年8月 6日(月)~11日(土) 丸善〈遡源の道 明日を拓く〉中国個展開催記念展
 そうか、北一明との出会いから四十年か。

 ネット、うろうろ。

《 今日の朝稽古では「査定されるマインド」に陥らないようにということを繰り返し申し上げました。現代日本では「一生懸命やる」ということと 「一生懸命やっているように見えること」が混同されています。「現に何をしているか」より「何をしていると査定されるか」が優先的に配慮されている。 》 内田樹
https://twitter.com/levinassien/status/1531431884957155329