『月に吠える』(閑人亭日録)

 昨晩、薄雲を突き破るように煌々と光る半月を仰いで、萩原朔太郎32歳の初詩集『月に吠える』大正六年(1917年)刊を想起した。『日本の詩歌 14 萩原朔太郎中央公論社昭和43年1月13日初版発行を久しぶりに開く。青春時代よく読んだ本の一つ。「序」をまともに読むのは初めてかもしれない。読んで驚嘆。

《 すべてのよい抒情詩には、理窟や言葉で説明することの出来ない一種の美感が伴ふ。これを詩のにほひといふ。(人によっては気韻とか気稟(きひん)とかいふ) 》

《 詩の表現は素樸なれ、詩のにほひは芳純でありたい。 》

《 併(しか)しリズムは説明ではない。リズムは以心伝心である。そのリズムを無言で感知することの出来る人とのみ、私は手をとつて語り合ふことができる。 》

《 原始以来、神は幾億万人といふ人間を造った。けれども、全く同じ顔の人間を、決して二人とは造りはしなかつた。人はだれでも単位で生れて、永久に単位で死ななければならない。
 とはいへ、我々は決してぽつねんと切りはなされた宇宙の単位ではない。 》

《 詩は予期して作らるべきではない。 》

 全文を引用したいくらい、ぐっと胸に響く。心に沁みる。青空文庫には「再版の序」も掲載されている。
 https://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/859_21656.html
 すごい。あるとき、時代はがらりと変わる。