この数年年賀状は百通あまり出している。これは儀礼的なものだ。まだ生きてるよ、なんとかやってるよ、というお知らせみたいなものだ。それとは別に、ふっと思い立って出す私信がある。味戸ケイコさんにはこの三十年毎月送っているが、これは定期便。この前の日曜日に来館した中国人は味戸さんの描き方をじっくり観察していた。その関心の度合いは驚くほど深いものがあった。意気に感じて絵葉書を贈呈した。出来事を手紙に書いて送ろうと思ったけど、手が動かない。休むしかない。
昨日は午後五時に閉館、雨の中とぼとぼ歩いて三島市の美術グループ展へ行った。受付の知人女性に文庫本五冊を貸した。喜ばれる。
人にものただ遣(や)るにさえ上手下手 谷沢永一「百言百話」より
河出書房新社から中井英夫特集に載せる拙文のゲラ校。訂正の必要無し。中井英夫氏から二十冊近い本を恵まれた。初めて頂いた本に「恵存」(けいそん)とあった。無学で意味がわからなかった。今はこの筆跡が心に沁みる。