結城昌治『俳句つれづれ草 昭和私史ノート』朝日新聞社1985年初版を少し読む。自分史とその時 その時の政治社会状況、それに関連する俳句を紹介する形式。彼の姿勢はこの一文で知られる。
《 しかし、敗戦後三十数年経ってかつての疎開先の町を訪ねると、人びとの情がすっかり温かになっていました。 戦争が人の心を変え、平和がふたたび人の心を変えたようでした。 》 11頁
未知の俳句に惹かれてついつい立ちどまる。
あきかぜの吹きぬけゆくや人の中 久保田万太郎
とっぷりと後(うしろ)暮れゐし焚火かな 松本たかし
いま一つ椿落ちなば立ち去らん 〃
《 公園や道路などで、交尾している犬をよくみかけました。
ところが、昨今の子供はどうか知りませんが、私たちは「サカる」という言葉を知っていながら その意味を知らなかった。無邪気なのか残酷なのか、水をぶっかけておもしろがっていました。 あれはいったん開始すると水をかけられても離れられないそうで、犬にしてみれば大変な災難だったと 思います。往来なんかでやるから災難に遭うんです。 》 52-53頁
まあ、同じことをやってるわあ。私たちは「デックン」と呼んでいた。意味はわからなかった。
銀河の下犬に信頼されて行く 西東三鬼
雪の上に雪降ることのやはらかく 〃
《 名月を眺め賞するという風雅はまだ解していません。 》 62頁
正直な人だ。私もよくワカラン。
《 蕪村は俳諧中興の祖といわれ、画家としても著名ですが、明治中期に子規や鳴雪が注目称揚するまでは、 低俗化した俳壇のなかでほとんど忘れられていたそうです。 》 64頁
蕪村も、か。最近では画狂人・河鍋暁斎。その前は伊藤若冲。浮き沈みは古今東西変わらぬわ。西洋では ジョルジュ・ド・ラ・トゥールが嚆矢か。ヨハネス・フェルメールもカスパル・ダヴィッド・フリードリヒも。 逆にいえば、現在大人気でも、数十年経てば忘れられる人、作品はゴロゴロある、ということ。具眼の士は いつの時代にもいる。それが救い。
枯るるなら一糸纏(まと)はぬ曼珠沙華 殿村菟絲子(としこ)
秋祭少女メッキの指輪買ふ 五所平之助
《 幽霊物はいまだに苦手です。 》 74頁
同じだ。11日の毎日新聞「今週の本棚」、「この3冊」は東雅夫・選「優霊」物語。浅田次郎『鉄道員』 集英社文庫、小泉八雲『明治日本の面影』講談社学術文庫、平井呈一編訳『恐怖の愉しみ・下』創元推理文庫。
《 戦時中はドタバタ喜劇全盛で、庶民の多くは非常時の緊張を強いられる反動で笑いを求めていたのかも しれません。(中略)しかし、戦後は喜劇がぱっとしません。時代の産物は、時代の流れとともに おとろえる運命なのでしょうか。 》 74頁
秋風や模様のちがふ皿二つ 原石鼎
ヨカナーンの首もなければ古伊万里の皿はしづかに秋風を盛る 照屋眞理子
原石鼎の句には、この短歌を付け合わせたくなる。明日へつづく。
好天。歩行者天国は午後二時からなのに、昼前からハロウィン仮装の親子連れが街中へ早々と続々集結。 応募総数1700。それに家族が加わるから大変な数に。歩行者天国の大通り商店街を練り歩く。奇妙、珍妙、 奇天烈、悪趣味。本物のチンドン屋も登場。これほどに仮装好きがいるとは。うーん、時代は変わった? 大人のクリスマスが下火になって、家族のハロウィンが盛り上がる。ま、賑やかなことはよきことかな。
ネットの拾いもの。
《 あわてるな ホントにその本 持ってない? 古本川柳 》
《 あったかな スルーしたら 書庫になし 古本川柳 》
《 「理由あり子持ちししゃも(オス)」 100g ¥100 》