『盲妹』

 昨日話題の森岡正博『33個めの石  傷ついた現代のための哲学』末尾近くの一節。

《 近代哲学は、問いを発する私自身が崩れはじめたときの「私」というものを、扱うことができない。 主体を懐疑する現代哲学ですら、そこには手が届かないだろう。そのかわりに、「崩壊する私」の哲学、 あるいはそれを表現するアートというものが、この地点から生まれることになるはずだ。これこそが、 21世紀の哲学やアートが扱うべき真の問題のひとつだと、私は考えているのである。 》 175頁

 崩壊の瀬戸際から必死なリハビリで日常に生還した上條陽子さんの絵画を思う。「ひとこと」を参照。
 http://web.thn.jp/kbi/kamijo.htm

 フリー・ジャズアヴァンギャルド絵画も、その表現分野(ジャズ、絵画)への窮屈な感じ=桎梏を 突き破ろうと生まれたのだろうが、その表現の大部分は的を外れていた気がする。カッコいい! できそう、 と誰もが飛びついた結果、味噌もクソも一緒くたにその時代に溢れ、一世を風靡。学んだ職人技を駆使した 模倣亜流作品は、時の経過のなかでエセ金メッキが剥げ、空疎をさらけ出し、無残な姿を晒している。 そんな廃棄寸前なものでも学術的韜晦の解説に、裸の王様、明き盲、烏合の衆が阿波踊り
 勉強ばかりでは砂上の楼閣、自分の感性を信じるだけでは昼行灯。展覧会巡礼自慢ばかりでは片手落ち。 高価ならGOOD、と信じるお人好し。銭高芸術崇拝の跛行状態。エセ金メッキの張り子は尽きない。
 閑話休題(それはさておき)、やや古い美術雑誌には知らない作家の作品が数頁を飾っている。作品からは 何の魅力も感じられない。そんな魅力の失せた作品が美麗に印刷され、美辞麗句で称賛されている。当時は ひどくもてはやされた(?)ことがうかがえる。なぜだろう、じつに不思議。だから古い美術雑誌は面白い。 逆に明治の雑誌『文藝倶楽部』など一般向けであっても、挿絵、カットにピカッとセンスが光るものがある。 それを探し出すのは愉しい。それをわかる人がいればもっと愉しい。

 昨日話題の加藤郁乎の小説『エトセトラ』について去年書いていた。
 http://d.hatena.ne.jp/k-bijutukan/20150517

 午後、松毛川へ。伐採した竹を機械でガリガリとチップにする。竹の大山が優良肥料の竹チップの小山に。 放置しておくと、誰かが持って行く。今まであったいくつもの小山は更地に。夕方はグラウンドワーク三島の 理事会へ。難しい問題、有望な課題、いろいろ。これからも創意工夫して打開。それだけ。

 ネットの見聞。

《 確かに高額であるとは間違いないが、「世界一高価な絵画」はポール・セザンヌの「カード遊びをする人々」で 金額は2億5000万ドル以上(200億円以上)で遙かに及ばない。こういうアートの価格は芸術的な価値以外に 投機対象でもあるということだろう。 》 坂井直樹
 http://sakainaoki.blogspot.jp/2016/02/77phantom200.html

《 昔は私より少し若い孤独な人に届けたかった。今は私よりずっと若い孤独な人に届けたいと思って描いている。 救いたいと言っては烏滸がましいが、私が人生で最も辛くて最も救われたかった年頃の人を無意識の内に想定している。 いわゆる癒し系では救われない、暗さ冷たさが心地良いと思う人を。 》 林由紀子
 https://twitter.com/PsycheYukiko/status/697413897016332288

 ずっと孤独だった私を掬いあげてくれた味戸ケイコさんの絵を必要としている少数の人のためにK美術館を開いた。
 http://web.thn.jp/kbi/ajie.htm

《 「盲妹」(大坪砂男)再読。巧すぎるなぁ。洗練度では「天狗」より上かもしらん。 》

 大坪砂男『盲妹(もんまい)』を再読。『大坪砂男全集1』出帆社1976年初版ではなく、 『日本探偵小説全集短編集 水谷隼篇 大坪砂男篇』春陽堂1954年初版で。裸本だが文庫サイズ堅牢本という 私好みの造本。中学三年生の頃、地元の古本屋で購入した記憶。半世紀ぶりの再読かな。

《 「言い間違い」「読み方を知らない」ことよりも、「所轄の問題に興味がない人間が大臣職にある」 ことが問題だろうと思う。元歌手の擁立もそうだが「オール沖縄」というワードの説得力が本土で薄まるように、 こういう人が能力と無関係に担ぎ出される。 》 山崎雅弘
 https://twitter.com/mas__yamazaki/status/697318621547069440

《 今井絵理子を誘った山東昭子って、甘利に賄賂を送った人を「下衆の極み」って言ったヤツだよね。 》

 ネットの拾いもの。

《 日銀がリスクになったらしい。 》