早生、早熟、完熟、発酵

 果物は早生、早熟、完熟といった成長、収穫時期によって区別される。音楽、文学、絵画には処女作、出世作、代表作がある。 果物を応用すれば、早生=処女作、早熟=出世作、完熟=代表作となるかな。熟成を誤ると完熟が過ぎて腐ってしまう。 そんな制作物にたいして人は「終わったな」と作家としての死を宣告する。しかし、うまく完熟を過ぎると、発酵に変化する場合がある。 が、これは作家が死んでからの作品評価。
 新鮮さが命の果物と違って音楽、文学、絵画は腐らない。作家は亡くなっても良い作品は遺る、生き続ける。しかし、中には不運な 作家、作品がある。伊藤若冲河鍋暁斎ヨハネス・フェルメール、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールらだ。生前は評価されていたのに 没後、時代の風潮の変化で忘却の底に沈んでしまう。しかし、五十年百年二百年後に再び浮上し脚光を浴び、不朽(多分)の名声を得た。 こういう場合を発酵と言う。発酵食品は好き嫌いがはっきりする。しかし、彼らの作品にケチをつける人を知らない。芳醇な香りだから だろう。
 殆どの制作物は時代の嗜好、流行の変化に流され記憶の彼方へ追いやられ、忘却の果へ。果……果物。制作物の殆どは新鮮さを失い腐る。 ごく少数の制作物が静かに静かに熟成する。あるいは制作物は変化せず、時代が変化し、ぐるっと一巡りして光を当てる、光が当たる。
 ヴィンテージ、アンティークと呼ばれる制作物もそれに当たるだろう。それら制作物が生きた(使われた)時代よりも愛玩されるほど。

 K美術館で展示、保管している安藤信哉は、生前画商がつかなかった。先生の絵は売れません、と。時代を突き抜けていて、作品の評価が 追いつかなかった。没後三十年近くが過ぎて理解者が増えた。小原古邨は没後半世紀を経て再注目、再評価。味戸ケイコさんは現役だが、 『日本美術全集』小学館2015年では。

《 その多くが大切に保存され、未来に発見されるまでの、決して短くはない時の眠りについている。 》 椹木野衣

 味戸さんは今も企画展、グループ展へ依頼されている。1970年代の熱狂はないが、熱心なファンがいる。牧村慶子さんは、味戸さん同様 未来に発見されるだろうと予感する。親戚の農家は秋に収穫した柿を冷蔵庫だかで保存。年を越した一月に高値で出荷。味戸さんも牧村さんも (熟成)貯蔵保存か。
 今を席巻している二次元アニメの元気な(早生、早熟)少女たち、三次元のゆるキャラたちには、ごく僅かな差異しか見出せない。それは 雨後の筍のように族生した1960年代末のグループサウンズを想起させる。殆どが早生のまま枯れて(早世)いった。そうしてみると、 完熟の制作物を提供するオリエント工業ラブドールへの女性の人気は、時代の潮目の一例かもしれない。早生、早熟から成熟、完熟へ。 脊髄反射から熟考へ、とも。そういえばボジョレー・ヌーボーの人気はずいぶん冷めた。
 それにしても、半熟で終わる作家のなんと多いことか。

 明け方はっと気づいて目が覚め、隣の部屋の床に重なっている書類、手紙の小山からA4一枚の必要書類を探す。が、見つからない。
 切り上げて寝る。朝、新聞折り込み広告、その他の紙ものを収納してある箱を底まで探すが見つからない。捨てた筈はないがなあ。 再度床の紙の丘を崩す。茶封筒にその一枚は入っていた。抜き出して読んで再び戻し、紙の丘へ投げておいたか。書類箱へ収めることを すっかり忘れていた。帳簿、会計はまるでダメ。粗忽者がもっと歳をとったら……これは考えたくない。

 ネット、いろいろ。

《 「ちょいワルジジ」になるには美術館へ行き、牛肉の部位知れ 》 ニコニコニュース
 http://news.nicovideo.jp/watch/nw2823774

 上の記事がネットを賑わせている。

《 半分くらい本気でそう思ってそうなとこが絶望的にキモい。美術館に一人で来てる若い女性は作品見ながら一人で静かに考えたい人であって、 こんな奴が寄ってきたら迷惑に決まってるだろうが。たとえ山田五郎以上に物知りで楽しそうに語れるとしてもだ。 》 大野左紀子
 https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/873877914802049024

 美術館で見知らぬ女性に声をかけようとは思わない。ただ、知的な女性を観賞したかったら団体展ではなく現代画家の美術展へ行くといい。 とびっきり知的な(近寄りがたい)女性客がいる。

《 「サブカルチャーの終わり」とは、「世をすねた態度の表現」の終わりでもあって、もうそういうビヘイヴィアには どこにも居場所がなくなったのだ。残念ながら。 》 伊藤 剛
 https://twitter.com/GoITO/status/873242024337473536

《 もう2〜30年くらい経つと「あゝ、世の中、こんなふうに変わるもんなんだなあ」と思えるときが来ると思うんだが、 それまで生きていられるかなあ。 》 伊藤 剛
 https://twitter.com/GoITO/status/873242484570062848

《 作品を眼差せていると思い込んでいる人は、作品を観てはいない。
  作品から眼差されてしまったと感じる人は、作品を観ている。

  作品(他者)を眼差し切ることの不可能性を知る人のみが、作品(他者)を観ているのである。 》 中島 智
 https://twitter.com/nakashima001/status/873856177842528257

《 集会の司会 県警「違法」 広範囲排除で見解 》 琉球新報
 http://ryukyushimpo.jp/news/entry-512401.html

《 もっと炎上しそうなのは『忍者と悪女』でしょう。 》 山本弘
 https://twitter.com/hirorin0015/status/873830422001483776

 原作エドガー・アラン・ポー「The Raven」とは。いやはや。

《 「ママ、もしこの世の中にインターネットがなかったらどうなると思う?」と6歳児。
  ママ、そういう世界生きたことあるよ 》 chiecco009
 https://twitter.com/chiecco009/status/873410393426731008