『ピカソは本当に偉いのか?』(閑人亭日録)

 西岡文彦ピカソは本当に偉いのか?』新潮新書2012年初版を再読。帯の惹句が煽る。

《 「あんな絵」に/どうして/高値がつくの?/みんなホントに/わかってるの?/アート界の身勝手な/理屈をあばいた/「目からウロコの/芸術論」 》

《 ミダスの魔力は酒神デュオニソスが与えたものでしたが、ピカソに魔力を与えたのは現代の美術ビジネスそのものでした。かつては「製品」とみなされていた絵画が、「作品」として巨額の金銭に変容する絵画ビジネスの「錬金術」が誕生した時、美術自身もかつての美術からは変容し、ピカソというひとりの人間に、ミダス王にも似た魔力を授け得る何ものかになったのです。
  それは、「現代美術」という名の魔術の誕生をも意味していたのです。 》 48頁

《 前章で紹介したように、ピカソには非情ともいえる破壊性を抱えた部分があります。人間として決して褒められたものではない性格の持ち主なのですが、にもかかわわらず、彼が史上まれな成功を収めるに至った背景には、カリスマ的な天性を武器にした巧妙な人間心理のコントロール術というものがあったのです。 》 78頁

《 予測不可能の言動で相手を幻惑し、相手に事前の対策を講じさせないといのが、ピカソの画商に対する戦略でしたが、彼はこの戦略のために綿密なシミュレーションも欠かさなかったといいます。 》 86頁

《 離婚を拒否したのは、オルガではなくピカソの方だったのです。
  いかにオルガに嫌気がさしていようが、彼は作品を手放すことが耐えられなかったのです。元来、ピカソは自分が一度手に入れたものには執着する傾向が強く、自分の意思で捨てる文にはいいのですが、他人の意思で奪われることには猛烈に反発するところがありました。(引用者・略)
  結局、オルガは説得に応じ、離婚はせぬまま別居することにしています。 》 90-91頁

《 この結婚によって、それまで縁のなかった上流階級との交流を深め、絵画の販路を飛躍的に拡大することになります。が、国際的な名声が確立するに連れ妻オルガとの仲も険悪になり始めた、というのがピカソの言い分ですが、別のところでは、もともと社交界とのコネを作るのが目的の結婚だったとも告白しています。 》 93頁

《 近代以降の美術の最大の特徴は、それ以前の美術が担っていた実用的な機能というものを放棄してしまった点にあります。 》 108頁

《 美術が、実用性というものを軽蔑し始めたのは、この時からのことだったのです。 》 110頁

《 この教会美術と王室美術という二大ジャンルが生み出した美術家養成機関が、ギルドつまりは同業組合と、アカデミーつまりは美術学校というものでした。 》 114頁

《 このアカデミーが「美術」という概念を生み、そのアカデミーを擁する王政を打倒して誕生した美術館が「芸術」という概念を生んだのです。 》 115頁

《 そうした十九世紀美術の大変革期を経て、二十世紀初頭に登場した画家の代表がピカソであり、そうしたアトリエでの理論的探求、実験的試作を代表する作品が 『アヴィニョンの娘たち』であったわけです。 》 123-124頁

《 二十世紀絵画の特色は、このスタイルが「イズム」つまりは芸術的な主義主張として語られ、学会における学説論争のように画壇をにぎわせた点にあります。 》 126頁

 いやあ、面白かった。再読してわかる(遅いわ)面白さ。やはり西岡文彦は信頼が置ける面白さ。引用する規準を緩めると、長大になってしまう。

 ネット、うろうろ。

《 不変性は、変化のなかにしか表れず、なんらかの獲得は、なんらかの喪失のなかで実現される。この両極性、平行性、すなわち「顕在/潜在」関係がみえていないと、 不変性や獲得能力のほうだけを独立で考えてしまい、ひとつの不変性を真理と呼んだり、ひとつの能力の汎用性を謳う「妄信」が生まれる。 》 中島 智
https://twitter.com/nakashima001/status/1432239236967661571

《 【速報】自民党本部が平屋への改築を検討の情報。二階を廃止か。 》 デーブ・スペクター
https://twitter.com/dave_spector/status/1432475337951105027

《 政治家個人への寄付、禁止なのに...「抜け穴」から与野党が計22億円 使い道報告義務なく 》 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/127817

《 市井の人々を侮ってはならない。今日も仲畑流万能川柳は好調だ。「五輪終えバラエティからオファー待ち」「圧倒的優位なホームで獲るメダル」 「棒読みも慣れてきたから読み飛ばし」「小池さん肝心な時沈黙す」「菅総理そうした中でどうするの」言ってるよねえ菅さん「そうした中で、こうした中で」と。 》  立川談四楼
https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1432187888318382083

《 自民党は1998年から今までずっと竹中平蔵を重用し続けて、すでにもう分離できないくらい一体化してしまって、何十年やっても成果が上がらないから竹中を外すという 普通の判断すらできず、竹中のパソナに税金を流し込むだけの機関と化していますね。 》 町山智浩
https://twitter.com/TomoMachi/status/1432002971605241858

《 加藤官房長官「総議員の4分の1の要求があった場合に臨時国会を召集するのは義務。他方で、召集時期については憲法で具体に何ら触れられておらず、 内閣に委ねられている」

  この緊急事態にかたくなに国会を開かない内閣。 》 町山智浩
https://twitter.com/TomoMachi/status/1432355420413181960

《 記者さん誰か「自民党憲法改正草案53条には『要求のあった日から20日以内に召集されなければならない』とあります。あなた方自民党も、この条文が時の政権によって 今おっしゃるような詭弁で骨抜き、無効化されることを心配してこのように書いたのでは?」と加藤官房長官に聞いてっ! 》 佐藤倫子
https://twitter.com/sato__michiko/status/1432454352359215110

《 おはようございます。医療現場の切実な状況や「自宅死」の回避のために、政治が仕事をしなければならない時に「国会召集」を避け続け、「総裁選劇場」と 党役員人事という化粧直しでその場しのぎの「擬態」を装う政治は、戦後最悪の危機をたぐい稀れな「鈍感力」で私的利害を優先する姿にあきれ果てる。 》 保坂展人
https://twitter.com/hosakanobuto/status/1432482575377788928