1月31日(木) 乳房乳房卵卵

 女性にとって乳房はどうなのだろう。惹かれる作品から。

  抱へたる薊に刺されて乳房あり告白するときめてはをらぬ  角宮悦子

  ブラウスの中まで明るき初夏の陽にけぶれるごときわが乳房あり  河野裕子

  人知りてなお深まりし寂しさにわが鋭角の乳房抱きぬ  道浦母都子

  乳ふさをろくでもなしにふふませて桜終はらす雨を見ている  辰巳泰子

  愚かしき乳房など持たず眠りおり雪は薄荷の匂ひを立てて  中城ふみ子

  失ひしわれの乳房に似し丘あり冬は枯れたる花が飾らむ  中城ふみ子

 乳房を書いていて、なぜか卵が浮かんだ。

  静脈注射うたれきたればアーケードに卵なまなまと積まれてありき  永田和宏

  鶏卵を割りて五月の陽のもとへ死をひとつづつ流し出したり  栗木京子

  生卵を扉(と)に打ちつけて雫垂るとびらの奥に人入りにけり  白浦十郎太

  太平洋抱卵のごとし渚の少女らは  金子兜太