「 カバに会う 」

 坪内稔典(としのり)『カバに会う  日本全国河馬めぐり』岩波書店2008年 初版を読んだ。文字通り全国のカバの探訪記。カバを見る、のではなく、カバに会う。

《 目的はカバだけ。それも一時間くらい対面するだけ。 》 130頁

《  カバというかたまりがおり十二月  》 35頁

 坪内の数あるカバ俳句でこれにいちばん惹かれた。

《 西端小学校の先生たちの研修会で、「水中の河馬が燃えます牡丹雪」という自作を板書し、おおむね以下のように話した。
  水の中のカバが燃えるということは現実にはありえない、だが、言葉の世界ではその光景を思い描くことができる。この句は「言葉の風景画」と思ってもらっていいのです。音を組み合わせ、連ねると音楽の世界ができます。絵の具を塗り重ねると絵の世界ができます。言葉もですね、何かを伝えるのではなく、音や絵の具のように組み合わせたり連ねたりすると、言葉自体が世界を作ります。それを私は「表現する 言葉」と呼んでいます。 》 86頁

《 もっとも私の場合は、カバ車そのものよりも、カバヤキャラメルのおまけ「カバヤ文庫」に夢中になったのだが。 》 153頁

 14日のカバヤ文庫の話から、15日はこれと思ったが、事情あって遅れた。
 少々バカになったんだろうか、小説を読む気力がなくて軽く読めそうな『カバに会う』を手にした。中里介山大菩薩峠』とはいわないが、長編小説を日にちをかけてじっくり読んでみたい、という気持ちはある。昨日の谷崎潤一郎細雪』もそうだが、島崎藤村『夜明け前』セルバンテスドン・キホーテ』、ジョン・バース『酔いどれ草の仲買人』、M・バルガス=リョサ『世界終末戦争』、トーマス・マン『ブデンブローク家の人々』など未読の一冊本が待っている。野間宏『青年の環』全五冊を再読したした時のように、再読を待つ長編、志賀直哉『暗夜行路』、ヘンリー・ジェイムズ『使者たち』など、若い日とはずいぶん違った印象を受ける気がする。そして三冊の抄訳版、マルセル・プルースト失われた時を求めて』は二冊目途中で止まったまま。秋の日の短いことよ。
 そういえば、感染するとバカになるウイルスをアメリカの大学教授らが発見した、との報道があったなあ。日本での感染第一号〜。ヤッホー。やはり、バカか。

 昼前、東京西荻窪の盛林堂から新刊、橘外男死の谷を越えて』盛林堂ミステリアス 文庫1500円が届く。300部が早々と「売切。再入荷はありません。」。送金で郵便局へ。 銅版画家の林由紀子さんに出会う。彼女はポーランドへ作品を送るところ。来年のことをうかがう。わあ、忙しいわ。
 https://twitter.com/PsycheYukiko

 ネットオークションで200円で落札の星新一『宇宙のあいさつ』ハヤカワ文庫JA1981年 10刷が届く。表紙が深沢幸雄の銅版画。

 ネットの拾いもの。

《 天国に着いたら大量の黄色いハンカチが待ってたんじゃないか。 》