『蕩児の家系』つづき

 知人女性の息子の恋人はカナリア諸島の出。知人女性の喫茶店で会ったが、大和撫子そのものだった。 彼にベッタリな姿も可愛い。この薄ら寒い日、カナリア諸島の南、カーボ・ヴェルデの音楽モルナ MORNA を聴くと、 ふっと行きたくなる。海風と波の音。他に何もない。一週間もすれば飽きてしまいそう。恋人でもいれば別だろうが。
 https://www.youtube.com/watch?v=DiC_FFqf9us

 大岡信『蕩児の家系  日本現代詩の歩み』思潮社1969年初版後半、「戦後詩概観」を読んだ。その二ページ目。

《 何故に、われわれは読むことによって蘇活することができるのだろうか。
  それはたぶん、われわれのうち誰一人、何らかの著者を読むべく強制されてはいないからだ。 》 147頁

 に始まる書物・言葉論はじつに興味深い。白眉だろう。

《 言葉に本来的に「自分の言葉」などあるわけではない。自分の語る言葉によって、自分が語られていることを自覚したとき、 人は「自分の言葉」を持ったと感じるのである。(中略)人間にとって、言葉が道具でありながら同時に存在の根源をなす 存在理由そのものとなるのは、この瞬間である。 》 180-181頁

《 しかし、いま述べてきたことからもはっきりしているように、日本の近代詩の歴史は、すぐれた詩人ほど、前代の詩への 敵対者として出現するものであることをありありと語っているのである。むしろそこにこそ一貫した伝統があったといっていい。 伝統の最も生産的な側面がそこにあるということができた。伝統は、新しいものを産み出す力そのものとして、そこに 姿を現わしているのだ。(中略)この力が物体化し、制度化されて固定したとき、それは伝統と呼ばれず、風俗、習慣と呼ばれる ものになる。 》 182-183頁

 胸を打つ論述だ。全文をそっくり引用したくなる。「自分の言葉」も「伝統」も、美術にすっと適用できる。新刊で購入したが、 当時読んでどこまで理解できたか。今読んで正解。当時大岡信の『現代芸術の言葉』晶文社1967年初版を読んで、言葉について モヤモヤした感触が感触のまま固まってしまい、結局自分では言語化できなかった。そんな課題がやっと解決できる気分。そして、 「自分の言葉」からは味戸ケイコさんを、「伝統」からは北一明を論じる大きな手掛かりを得た。

《 詩それ自身について言えば、一篇の詩は、ある心象や感情を過不足無く言葉によって造形し表現することではなく、 一行一行の進行につれて詩全体の構造も意味も相関的に変化してゆくような、それ自身の中に可変項をいっぱいもっている、 ダイナミズムそのものであることが、要求されていたといっていいだろう。静態的な詩から動態的な詩へと、趨勢は明かに変化 していった。 》 188-189頁

 安藤信哉の1970年代の絵、上條陽子さんの1990年代の作品を連想。
 http://web.thn.jp/kbi/ando.htm
 http://web.thn.jp/kbi/kamijo.htm

《 なぜなら、世界はますます流通性ある価値のみを価値として尊重する方向へ動きつつあり、それゆえに一層、流通価値の ないものの有する詩的な価値──いいかえれば、精神の、精神による、精神のための作品のもつ価値──への渇望は、 出口を求めて深く精神の深層部をうずかせているからである。 》 199頁

《 芸術における方法は、ある作品の中で結実したとき、すでに完成しているのであって、改良したり修正したりすることのできる 性質のものではない。 》 250頁

 美術に援用したくなる箇所は他にもいくつも。名著だろう。

 晩、グラウンドワーク三島による東北被災地支援の報告会へ。石巻市での起業支援は成功しているようだ。来年度も続行。 光があれば影もある。テレビ新聞に報道されないイヤな部分も少し聞く。

 ネットの見聞。

《 航空写真と360度動画で知る東日本大震災からの5年間と現在 》 読売新聞
 http://www.yomiuri.co.jp/special/311/

《 インド東部のメーガーラヤ州は世界屈指の多雨地域。そこで伝統的に作られている生きた木の根を利用した橋の写真集  》
 http://www.mymodernmet.com/profiles/blogs/india-s-fascinating-tree-roots-bridges-grow-stronger-every-year

《 勝負というのは計算ではない。計算できる局面になれば機械が勝つのは当然。計算できない場面でどう指すか、 打つかが問題なのだ。要するにそれは人が毎日直面している「人生」というやっかいなものの本質である。 》 daily-sumus2
 http://sumus2013.exblog.jp/25033595/

《 ホームレスに人気の武蔵野中央図書館? アンケートから見えるもの ホームレスと図書館2 》 武蔵野市議 川名ゆうじ
 http://blog.livedoor.jp/go_wild/archives/52453255.html

 ネットの拾いもの。

《 責任は私にある(責任をとるとは言っていない) 》

《 歩く災害
  安倍晋三です 》

《 昔、路上で易者に「おお、ツイてるぞ! ツイてるぞ!」と声をかけられ、そうかおれはツイてるんだと気分が良かった記憶があるが、 あれは「憑いてるぞ!」だったのだよなあ。未だ憑いてたりして。悪霊だったりして。 》