木田元「偶然性と運命」岩波新書2001年読了。二回目だけどやはり難解。日本の西洋の哲学者の言説を紹介しながら彼らの思索の道筋をたどり、そこから導き出される時間性の再構造化という視点。
「本来的時間性──つまり、現在の偶発事が機縁となって将来へのある企投がおこなわれ、それとともに過去の経験の組み替えが起こり、そこに現在の偶発事がいわば必然的なものとして組み込まれるという事態──」152頁
木田はドストエフスキーの「悪霊」「カラマーゾフの兄弟」の印象的な場面での人々の心理変化を分析していう。
「<出逢い>とは、他者が激しい情動体験によってこの自己閉鎖を打ち破り、<自己─自己>の構造を打ちこわして、ふたたび<自己─他者>構造が、つまり<他者と共にある>本来的な存在が回復されることだと考えられないだろうか。だからこそ、この出逢いを機縁として時間性の再構造化も起こりうるのだろう。」198頁
ドストエフスキーの二著作を読んでまだ記憶が鮮やかなので、この分析は説得力がある。