2024-01-01から1年間の記事一覧

『日本のライト・ヴァース I』(閑人亭日録)

本棚からやっと見つけた本、谷川俊太郎・編『日本のライト・ヴァース I 煖櫨棚上陳列品一覧』書肆山田(発行日の記載はなく、谷川俊太郎の「あとがき」に「一九八〇年十一月」)を再読。読みたかった天野忠「虫」をやっと読む。《 虫 病気が癒ってしまい す…

東君平(閑人亭日録)

東君平の私家版豆本『くんぺい ごしちご アフリカえほん』1981年9月 著者・発行者 東君平(縦85mm横90mm)を開く。91頁の本。一編四頁の構成。おしまいの一編、最初の一頁(86頁)は黒い地に白い字(切り絵)で「バオバヴの/かごにおもいで/つめきれず」。左頁…

芸術の慰撫(閑人亭日録)

味戸ケイコさんの絵を身近で何気なく見つめているとき。北一明の茶盌(茶碗)を手にとり何気なく見つめているとき。なにかしら気持ちが落ち着き、じっと魅入っている。時の経つのを忘れている。ふと気づき、もっと見つめていたいと切に思う。無心であり、夢…

「わたくしは誰?」(閑人亭日録)

青梅市の歌人王紅花(筆名)さんから送られた個人誌『夏暦』五十八号の題は「わたくしは誰」。三十首ほどの作品に飛び抜けた一首が見つからなかったが、「わたくしは誰?」という結句が引っかかった。埴谷雄高の長編小説『死霊』のメインテ-マ「自同律の不…

感想に頭を使う(閑人亭日録)

個人短歌誌、業界紙連載記事、葉書等届いた文面に目を通す。さて、どんな感想を認めるか。いつも悩む。さらに困るのは、字がさらに下手になったこと。パソコンに入力すれば読みやすい字体が並ぶのは楽~だが、ここには プリンターが無い。一件はメールで感想…

生動力 静動力 制動力(閑人亭日録)

私の推す美術家たちの特徴を表す生動力、静動力、制動力という漢字が浮かんだ。アルファベットでは思いつかない言葉。簡単にメモ。 ・生動力 上條陽子 奥野淑子 佐竹邦子 白砂勝敏 ・静動力 味戸ケイコ ・制動力 北一明 作品から美術家の生命力の勢いを直(…

LED照明(閑人亭日録)

昨日、書斎の照明を電球からLED照明に替えたが、その効果に驚く。北一明の耀変茶盌に顕著だが、耀変が鮮烈に現れる。いやあ参ったわあ。技術の進歩は侮れない。 「アブソリュート・チェアーズ」なる椅子の展覧会が埼玉県立近大美術館で開かれている。 htt…

『記憶と芸術』九(閑人亭日録)

丸川哲史「戦前の記憶と戦後の生 太宰治における天皇・メディア」から。《 これから述べることは、決して言葉遊びではない。すなわち、そのように始まった戦後民主主義なるものの複雑な曲折があり、そこで「人間宣言」ならぬ『人間失格』という題名の作品が…

つりたくにこ続報(閑人亭日録)

夕方、つりたくにこさんの夫高橋直行氏から電話。ポンピドゥー・センターの企画展は、マンガ月刊誌『ガロ』で活躍した五人の漫画家、阿部慎一、勝又進、つげ義春、林静一そしてつりたくにこの五人展。6月から11月まで長い展示になる。『ガロ』について。 …

「つりたくにこ展」再び(閑人亭日録)

来年六月、「マンガ家つりたくにこ没後40年、つりたくにこ展」を開催する企画を立ち上げる。故つりたくにこさんの夫、高橋直行氏から返事のメール。《 いいですね。今年5月から11月迄ポンピドゥーで原画五点が展示され、来年三島の画廊で引き続き観ても…

『記憶と芸術』八(閑人亭日録)

虎岩直子「W・Bイェイツとヒューマス・ヒーニーをめぐる記憶」結び近く。《 空っぽで自由だからまた別のものと繋(つな)がっていく。「記憶」とは刻々と変化していく現在生きる個人あるいは共同体が保持している過去(であるから記憶の形も刻々と変化して…

『記憶と芸術』七(閑人亭日録)

高遠弘美「「引用的人間」の記憶について」から。《 言い古された言葉のようだが、「美しい」という要素は詩文を暗記するうえで最終的にして決定的な要素であるような気がする。 》 268頁《 あまたの藝術作品をただ死蔵せるがごとくしまっておくのではなく、…

『記憶と芸術』六(閑人亭日録)

進藤幸代「ハワイ・ポノイを歌うこと」結び。 《 日本人に人気のあるホノルルマラソンにのコースには、ハワイアンが失った土地とハワイアンにとっての聖地が含まれ、外国資本のホテルが立ち並び、スタート地点ではハワイ・ポノイも歌われる。いわばハワイア…

『記憶と芸術』五(閑人亭日録)

水沢勉「+記録/+記憶」から中村信夫「現代美術の展望」の一文。《 従来優れた作品とは、安定し、強固で、物質的であると信じられていたが、今日それらは実際には本質的にもろいものであるということに我々は注目し始めている。 》 77頁 昨日、故つりたく…

『JOUER AU LOUP』(閑人亭日録)

雨が降ったり止んだりの不順な天気。天気に連動したかのような不安定な体調を持て余しているとき、マンガ家故つりたくにこさんの夫高橋氏から嬉しいメールが届く。 《 2冊目の仏語版のタイトルがJOUER AU LOUPと決まり、6月に出ます。tague.playing tag. …

『記憶と芸術』四(閑人亭日録)

谷川渥「絵画の時間性 序説」から。《 美や芸術の脱時間性をア・プリオリに主張するならはじめから問題はない。(引用者・略)というのも、芸術においてこそ、時間の現在性というものがもっとも顕著にあらわれるからである。 》 55頁《 理由律に従い、既知の…

『記憶と芸術』三(閑人亭日録)

最初の北川健次のエッセイ「記憶と芸術──二重螺旋の詩学」から。《 クレーが矢印を使い始めたのは一九二〇年代に入ってからであるが、デュシャンの無機質に比べ、クレーは限りなく有機質の方へと「矢印」の意味が分化した事は興味深い。では美術の枠を出て人…

『記憶と芸術』二(閑人亭日録)

昨日の記事をあげるのを忘れていた。 語り手:谷川渥 聞き手:中村高朗「澁澤・種村(おうごん)時代を語る」を読んだ。谷川渥の発言。《 あれは河出書房新社にいた安島真一君、のちに安藤礼二という名で大活躍することになる彼ですけど、彼がよく僕に声をか…

『記憶と芸術』(閑人亭日録)

中村高朗・虎岩直子 編著『記憶と芸術 ラビリントスの谺』法政大学出版局2024年3月4日初版第1刷発行を近くの本屋で受けとる。 https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-41039-0.html 虎岩直子「まえがき」を読む。《 「記憶と歴史」が学問領域として注目さ…

越境する上條陽子(閑人亭日録)

1989年の初夏だろうか、東京・六本木のギャラリーで画家の木葉井悦子さんから上條陽子さんを紹介された。「種村季弘さんの友だち」という木葉井さんの紹介に上條さんは反応し、『上條陽子画集』PARCO出版局1989年5月26日 第1刷を私に恵まれた。未知の画…

孤高の陶芸術家(閑人亭日録)

午前、北一明の耀変茶碗を太陽光のもとで鑑賞する。玄妙な濃紺地が突然、光彩陸離たる耀きへ変幻。魅せられる。「曜変」茶碗の再現を試みている陶芸家は何人もいるようだが、北一明の「耀変」茶碗は、唯一無二だろう。最初の「耀変」焼成から半世紀ほどが経…

「美」ということ(閑人亭日録)

昨日、「美=表現形態の極限を拡張する潜勢力に心が震える」と書いたが、具体例を挙げる。白砂勝敏『木彫椅子 ナゴメイテ』2010年作。 https://shirasuna-k.com/gallery-2/wood-sculptures-chair/ そこに掲載された拙文「見出された、かたち」の結び。《 木…

「美しい」と「美」の間(閑人亭日録)

「美しい」と「美」の違いについて私的見解。 美しい=表現形態の極みに心が痺れる 美 =表現形態の極限を拡張する潜勢力に心が震える 昨日挙げた「KAOSU7」の作家たちは皆、「美しい」作品を制作し、さらに「美」へ踏み込んだ作品をも制作するだろう…

「KAOSU7」(閑人亭日録)

しばらく前「KAOSU(カオス)」なる私的造語を披露した。 K 上條陽子 北一明 A 味戸ケイコ O 奥野淑子(きよこ) S 佐竹邦子 白砂勝敏 U 内野まゆみ ここに挙げた作家は、私の推す美術家たち。半世紀余りの美術遍歴、美術探求で出合い、その作品を…

現役作家(閑人亭日録)

現在、多摩美術大学の教授でリトグラフ作家の佐竹邦子さん。1997年春、多摩美術大学院生卒業制作展に遭遇。さほど広くないギャラリーで注目したリトグラフ作品に「これ、いいな!」と感想を発したら、そばにいた女性が「私です」と声を上げた。それが佐竹さ…

アーティスト~作家(閑人亭日録)

朝のNHKテレビで横浜黄金町の若手アーティストを何人か紹介していた。ここから何人が独り立ちするか、と語られた。制作品をちらっと見た限りでは、ふうんで終わった。最近は自称であれ、他称であれ、アーティストを言えばかっこいい、さしさわりがないと…

「密室における孤独な作業」(閑人亭日録)

『山崎方代全歌集』全歌集後記で玉城徹は書いている。《 方代は、きわめて鋭敏な方法意識をもった、その点で、もっとも現代的な専門作者の一人であったと言ってよい。彼の制作は、それ故に、密室における孤独な作業であった。 》 498-499頁このくだりは埴谷…

『山崎方代全歌集』再び・二(閑人亭日録)

昨日のつづき。付箋を貼った後半。 ようやく鍵穴に鍵をさし入れるこの暗がりのうらがなしさよ なんとなく泣きたいような気持にて揚げ玉を袋につめてもらいぬ こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり 無情とはかかわりもなくあんぐりと砂…

『山崎方代全歌集』再び(閑人亭日録)

本棚から『山崎方代全歌集』不識書院 一九九六年一月二〇日二刷を本棚から取り出す。いつ読んだか忘れてしまったが、前半の全歌集の頁には付箋が林立。そこを辿ってみる。 東洋の暗い夜明けの市に来て阿保陀羅経をとなえて歩く 茶碗の底に梅干の種二つ並びお…

月例作業(閑人亭日録)

午前十時前、自転車を引いて源兵衛川中流部、水の苑緑地かわせみ橋へ。すでにお二人が待っている。事情を説明し、お二人にゴミ拾いを委ねる。見守る。一作業を終えて雑談。解散。荷台にゴミ袋を載せて自転車を引いて帰宅。乗るのもこわいが、バランスとるの…