2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

食卓のない家/海市/化石……

円地文子『食卓のない家』は、紀伊の那智の滝で五十歳の管理職の男と女子大学院生の出会いから始る。福永武彦の長編小説『海市』は、伊豆半島の海岸で四十歳の大学助教授と二十代の人妻の出会いから始る。井上靖の長編小説『化石』は、フランスで五十五歳の…

食卓のない家

円地文子『食卓のない家』新潮文庫1985年6刷を再読。以前読んだのは、1979年に出た単行本(上・下)を新刊で購入して間もなくだった。印象深い読後感だったが、本は手放してしまい、筋はあらかた忘れていた。生々しい展開にぐいぐい引き込まれ、小さな字の五…

絶頂美術館・つづき

午後になってやっと雨。梅雨空に。《 これは、水墨画に代表される「余白の美」になじんだ東洋人には、なかなか理解できない感覚なのだが、ともかく画面を埋め尽くすことで成立していたヨーロッパ絵画の伝統にとっては、余白は未完の証でしかなかった。白は、…

絶頂美術館

梅雨入りの曇天のもと、体慣らしに自転車でブックオフ沼津リコー通り店へ。中上健次『鳳仙花』作品社1980年初版函帯付、石垣りん『夜の太鼓』ちくま文庫2001年初版、中野京子『怖い絵 死と乙女篇』角川文庫2012年初版、計315円。それにしても、文庫本の整理…

牧村慶子展最終日

伊豆高原の牧村慶子展最終日。好評裡に無事終了。撤収のお手伝い。やれやれ。 ブックオフ長泉店で二冊。諏訪哲史『アサッテの人』講談社2007年7刷帯付、深水黎一郎『エコール・ド・パリ殺人事件』講談社文庫2011年初版、計210円。前者はネットのこの書き込み…

殺意は必ず三度ある

昨日買った東川篤哉『殺意は必ず三度ある』実業之日本社ジョイノベルスを読んだ。東京国分寺市にある高校の弱小野球部のベースが盗まれ、そして新任の監督が殺される。《 探偵部お気軽三人組の前に立ちふさがる〔野球見立て殺人〕の謎とは? 》《 「親しき仲…

われらにとって美は存在するか・つづき

服部達『われらにとって美は存在するか』審美社から。《 芸術における進歩とは、要するに一人一人の芸術家において、各自に特有の観念が作品から作品へどのように深められていくか、ということ以外には考えられないが、その、芸術における観念の深まり方とは…

われらにとって美は存在するか

朝から伊豆高原での牧村慶子展のお手伝い。夕方帰宅。 半世紀近く本棚に鎮座していた服部達 (1922-1956)『われらにとって美は存在するか』審美社1968年再版、表題作ほかを読んだ。表題作は1955(昭和30)年、雑誌『群像』に四回にわたって連載された。「作…

お疲れ勉強

昨日ふれた月刊『現代』1991年2、3月号の「徹底討議 近代日本の100冊を選ぶ」は、伊東光晴、大岡信、丸谷才一、森毅そして山崎正和の五人が、《 この120年間のあらゆるジャンルの本を俎上にのせ「いま読んでおもしろい」ものを厳選した初の試み 》。 ネッ…

近代芸術・続き

暑くなりそうなので、昼前にブックオフ三島徳倉店まで自転車でひとっ走り。西岡文彦『絶頂美術館 名画に隠されたエロス』新潮文庫2011年初版、平山蘆江『蘆江怪談集』ウェッジ文庫2009年初版,計210円。 1938年(昭和13年)初刊の瀧口修造『近代芸術』では「…

近代芸術

ブックオフ長泉店で二冊。『現代詩文庫50 多田智満子詩集』思潮社2001年10刷帯付、ジョルジュ・シムノン『メグレと殺人者たち』河出書房新社1983年初版、計210円。ブックオフ沼津南店で二冊。芦辺拓『探偵と怪人のいるホテル』実業之日本社2006年初版、鮎川…

あたりまえのこと・続き(あたりまえじゃない)

雨。雨降りもいいものだ。気持ちが落ち着く。午後は曇り。泣き出しそうで落ち着かない。 昨日の毎日新聞読書欄、コラム「MAGAZINE」は『建築と日常 別冊 多木浩二と建築』。《 理論を先に置かず、過程のなかで思考を研ぎ澄ませる批評家 》 と紹介される故・…

あたりまえのこと

「じゃあね」と手を振ったら、目覚まし時計で起こされた。 初夏の陽気。富士山の残雪を仰ぎながらブックオフ長泉店へ。森博嗣『有限と微小のパン』講談社文庫2001年初版、吉野源三郎『君たちはどう生きるか』岩波文庫2011年65刷、計210円。前者は『すべてが…

静謐の深い調べ

きょうも伊豆高原の牧村慶子展のお手伝いへ行く。いろいろな方が見えて嬉しい。 自宅そばの伊豆箱根鉄道駿豆線三島広小路駅から下り電車に乗ると、大場(だいば)駅手前の鉄道本社の引込み線に、凸型の焦げ茶色の電気機関車が停車している。貨物を運ぶ機関車…

木乃伊の口紅

伊豆高原の牧村慶子展のお手伝いへ行く。 「 田村俊子、旧満州の新聞にエッセー 戦時下 日中友好説く」という東京新聞の記事を読んで、『あきらめ・木乃伊の口紅』岩波文庫1986年3刷収録の代表作「木乃伊の口紅」を読んだ。木乃伊はミイラと読む。四十年余り…

聖少女・続き

昨日の倉橋由美子『聖少女』の余韻冷めやらず。《 「乗るつもりかい?」 「乗せてって」 「どこまで?」 「どこまでも」 》 最初の一頁のこの決め科白で後は疾走。そして愛の迷宮への失踪?(三島由紀夫『愛の疾走』講談社1963年初版、東君平の切り絵の函装…

聖少女

倉橋由美子『聖少女』新潮文庫1981年初版を読んだ。彼女は晩年中伊豆(現・伊豆市)に住んでいた。三島の知人の店によく来ていた、彼女が亡くなってその店も主が亡くなり、店は跡形も無いことを、ふと思い出した。晩年の本を読もうと手に取ったが、気が変わ…

私の大好きな探偵

夏のような陽気。雪は富士山に残るのみ。そういえば、一昨日取り上げた養老孟司・吉田直哉『対談 目から脳に抜ける話』で吉田直哉が美大の入試を語っていた。三好達治の名詩を出題。《 それから、「太郎を眠らせ 太郎の屋根に雪降り積む 次郎を眠らせ 次郎の…

お誕生日

ギャラリー・カサブランカさんの車に同乗して伊豆高原の牧村慶子展へ。牧村さんに再会、お誕生日を祝す。牧村さんの古くからのファンの方が来訪。スクラップブックと古い絵本を持参される。牧村さん、しばらく考えて思い出した。その絵本、探そう〜。ネット…

目から脳に抜ける話

午前中は源兵衛川下流の雑草撤去作業に参加。山と出る草。午後は三重県からの源兵衛川の視察の案内。ふう。味戸ケイコさんから電話。旭川美術館の展示や昨日のトークのことなど。好評でなにより。 養老孟司・吉田直哉『対談 目から脳に抜ける話』ちくま文庫2…

無罪/免罪

きょう、味戸ケイコさんは北海道立旭川美術館で講演(トーク)。いかんせん、旭川は遠い。旭川の知人からはお誘いが来ているけど。で、きのうに続き、牧村慶子展のお手伝いで伊豆高原へ。会場から徒歩数分のところに知る人ぞ知るヒポクラティック・サナトリ…

イデアの影

牧村慶子展のお手伝いで朝、伊豆高原へ。午後六時過ぎ帰宅。 河原温の「日付絵画」シリーズ、ネットの紹介文を借りる。《 代表作は、それが制作された日の日付を描いた絵画で、その絵画を収める箱の内側には、当日の新聞の切り抜きが全面に貼られています。 …

戦後美術ベストテン!

『芸術新潮』1993年2月号は「特集 アンケート 戦後美術ベストテン! 1945〜1993」。《 30氏が厳選した、これぞ戦後美術の傑作だ! 》《 「第二次世界大戦の終結から現在にいたる日本の戦後の前衛美術の流れの中で、作品発表当時の評価や人気とは関わりなく…

空白・余白・虚空という補助線

昨日取り上げた門井慶喜『天才たちの値段』にこんなくだり。《 そのものずばりではないか……と、今になれば太い直線を引くこともできるけれど、あんな西洋画の調査の依頼者と、こんな涅槃図さがしの依頼者が同一人物だとその時点で気づくのは、犬と鯨がおなじ…

天才たちの値段

お昼近く、龍澤寺の雲水たちが声を張り上げて通る。午後、雷雨。 昨日買った門井慶喜『天才たちの値段』文春文庫2010年初版を読んだ。副題が「美術探偵・神永美有」とあるように、ボッティチェッリ、フェルメールから古地図、涅槃図まで、美術品を巡るミステ…

少女 撮影/篠山紀信

連休最後の日は初夏の陽気のいい天気。街中は閑散、車はスイスイ。 自転車でブックオフ函南店へ。文庫ばかり13冊。『須賀敦子全集』河出文庫1〜8巻全巻揃い、1巻2009年8刷、2巻2009年3刷、3巻2009年2刷、4巻〜8巻2007年〜2008年は初版。そして湯川豊…

TOKYO未来世紀

自宅前は大通り商店街まつりで歩行者天国。親子連れが一杯、賑やかを越してうるさいくらいの人出。昔、このまつりの実行委員長をした。お金をかけずに人の足を止めさせるイヴェントをいろいろ案出した。車道に模造紙を延々と延ばして、落書き大会を催したり…

瀧口修造のミクロコスモス

伊豆高原での牧村慶子展のお手伝いに出かける。きょうもウグイスがきれいな声で囀っている。 本棚に月刊太陽1993年4月号『特集 瀧口修造のミクロコスモス』平凡社があるのに気づいた。新刊で買ったと思うが、すっかり忘れていた。「オブジェ・コレクション全…

憲法記念日/ジャズからの出発

伊豆高原アートフェスティヴァルに、知人のギャラリー・カサブランカが牧村慶子さんの絵を出品。お手伝いに行く。伊豆高原は、二十年ほど前、池田二十世紀美術館での上條陽子展へ行って以来。小鳥のさえずりが賑やか。 昨日取り上げた相倉久人『ジャズからの…

八十八夜/青磁砧

朝、小雨。雲の多い風の強い天気。《 かつて間章が日本に招いたスティーヴ・レイシーも、アレアに影響を与えたソプラノ・サックス奏者。うねるリフと楽曲構成はセロニアス・モンクについての独自の解釈による。確かにアレアの変拍子とモンクのビバップは相性…