2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「マルドロールの歌」

座卓に並べてあった坂東壮一氏からの葉書を片付ける前に60倍のルーペで 銅版画を鑑賞。心の巡る一線一線。 ロートレアモン『マルドロールの歌』角川文庫1993年3刷を読んだ。 現代思潮社の単行本で出合って四十年余。冒頭がずっと心にこだましていた。 《 神…

「坂東壮一展」

明日から大阪のワイアートギャラリーで坂東壮一展。銅版画家の林由紀子さんは 馳せ参じるようだ。師匠だからなあ。 http://www.yart-gallery.co.jp/soichibando2014.html《 1937年香川県に生まれた坂東さんは、少年の頃アルブレヒト・デューラーの 版画に出…

「理性の限界」

高橋昌一郎『理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性』講談社現代新書 2009年5刷を読んだ。副題「不可能性・不確定性・不完全性」にぞくっと来る。 専門家と聴衆の問答、討論形式で進む「アロウの不可能性定理(選択の限界)」 「ハイゼンベルクの不確実性…

「大いなる幻影」

一昨日購入した『大いなる幻影 戸川昌子/華やかな死体 佐賀潜』 講談社文庫1998年初版だが、『大いなる幻影』は講談社文庫1978年初版で既読。 『華やかな死体』は春陽文庫1972年17刷と講談社文庫1978年初版を持っているが、 未読。どれも活字が小さくて感興…

「洲之内徹の風景」

リトルマガジン『SUMUS』5号2001年は、特集「洲之内徹 気まぐれ美術館」。 巻末の「単行本『きまぐれ美術館』(新潮社)シリーズ人名索引」が充実。 以前引用したかも知れないが、気に入っている話。 《 洲之内は画商としては失格で、絵をけっして高く…

「しゃれのめす」つづき

洲之内徹『しゃれのめす』世界文化社2005年初版を読了。 《 写生と写実とはそこがちがう。写実の基底には感動がある。感動が なければ写実はないのだ。 》 141-142頁 《 どんなにいい画家でも(画家に限らず)マスコミに名前が出なければ 在れども無きが如く…

「しゃれのめす」

雨が降る前に、と昼前に食料品、日用品を買い求め、ついでにブックオフ長泉店に 寄るが、何もなし(あったけど、ガマン)。午後は雨読。 洲之内徹『しゃれのめす』世界文化社2005年初版の前半を読んだ。一日で 読了するにはもったいない気がした。「気まぐれ…

秋分の日・音楽・美術

夜涼しくなったせいか、にわかに音楽を聴き始めた。歌謡曲のEP盤とLP盤を 聞き較べると、同じ歌(曲)でも違う録音がある。総じてEP(シングル)盤の ほうが内容も録音も良い。CDになると、音質(音域)が浅く(狭く)感じられる 盤がある。クラシッ…

「日本の歴史をよみなおす」

網野善彦『日本の歴史をよみなおす』筑摩書房1991年7刷を読んだ。平易な文章で 驚くことが書かれている。まさしく「よみなおす」。何冊か読んだ彼の本でこれが 最も刺戟的。 《 そうした状況の中で、なぜ軍隊と法律に片仮名が使われたのか。これはまだ 解決…

「神秘昆虫館」

朝の陽射しが暖かく感じられる。長袖の秋。 ミステリ作家芦辺拓のツイート。 《 『なぜ時代劇は滅びるのか』で思い出した、国枝史郎の自作『神秘昆虫館』 への言葉「ある人が僕に云った。『この作はジャズですね。この作を読んでいると 踊り出したくなります…

「誰が袖図屏風」

昨日ふれたニーニョ・リカルド(1905-1972)のソロ・ギターのLPレコード 『フラメンコ・ギターの至宝』日本コロムビア1975年を聴く。初めてのフラメンコ ・レコードにして最もよく聴いたフラメンコ・アルバム。白昼の陽光よりも 黄昏近くの翳りの変幻。逢魔…

「方子と末起」

昨日のヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』、第十四章。 《 あたしも、その席にいたし、そのほか、あたしよりも器量の悪いパストラだの、 それからニーニャ・デ・ロス・ペイネスだの、ジプシーだの、まるで淫売といっても いいような女たちが、たくさんい…

「誰がために鐘は鳴る」

昨日触れたヘミングウェイ『誰(た)がために鐘は鳴る』1940年を『新潮世界文学44 ヘミングウェイ II 』新潮社1970年初版で読んだ。スペイン内戦(1936年7月 - 1939年3月) での首都マドリードから北方へ100キロほどにある都市セゴビア近くの山岳地帯が舞…

「ジョン・ダン詩集」

昨日の『チャリング・クロス街84番地』でイギリスの詩人ジョン・ダン(1572-1631) を何度か話題にしている。 《 テレビを見るたち人で、ジョン・ダンってどんな人なのかちょっぴりだって 知っている人なんか、一人もいないでしょうけれど、ヘミングウェーの…

「チャリング・クロス街84番地」

ヘレーン・ハンフ編著『チャリング・クロス街84番地』中公文庫1994年5刷を読んだ。 ニューヨークに住む女性フリーランス・ライター、ヘレーン・ハンフが、ロンドンの チャリング・クロス街84番地にある古本屋へ手紙を出し、古本の探求を依頼する。 その1949…

「きのこの絵本」

昨晩の井上陽水の公演で深く印象づけられたのが、バック・コーラスの澤田かおり。 声は当然いいが、美形でノリもいい。1970年代を彷彿させる髪型と服装。 陽水の歌にピッタリ合っている。只者ではないな。 http://bimajin.jp/article_page/1579 ブログ「古本…

「星の降る里」

『芸術新潮』1994年11月号、特集「今こそ知りたい!洲之内徹 絵のある一生」 で、彼への関心が高まった。連載されていた「気まぐれ美術館」は、面白いことを 書く人だなあ、というほどの関心だったが。この特集で安井曾太郎の素描「少女」 に出合った。そし…

「宵」

樋口一葉ほか『宵』ポプラ社百年文庫2010年初版を読んだ。樋口一葉『十三夜』、 国木田独歩『置土産』そして森鴎外『うたかたの記』を収録。樋口一葉、若い 頃は読むのに手を焼いたけれど、今はワカル。三篇とも文語体で書かれている。 『うたかたの記』のな…

「猫」

クラフト・エヴィング商會、谷崎潤一郎ほか『猫』中公文庫2009年初版を読んだ。 《 正直なところ私は猫に飼われている。 》 坂口志保「猫に仕えるの記」 友だちのインコは飼い主の腕の上でぐっすり昼寝をする。ちょっとでも動くとビイッ と怒るとか。なんと…

「五十一話集」

昨日ふれたダンセイニの短篇「海と陸の物語」(サハラ砂漠を南下する海賊船)、 「食卓の十三人」(館主と十二の亡霊とともに食事をする貴族)、掌編集 「五十一話集」を読んだ。こちらは神話と死と諧謔の世界。「勘ちがい」全編。 《 夕べに街なかへ歩み出…

「月虹」

昨夜ブログを公開、一息ついてネットを散策したら下の記事。 《 第50回谷崎潤一郎賞(中央公論新社主催)が9日、奥泉光さんの「東京自叙伝」 (集英社)に決まった。 》 読んでいる時に決定、か。旧聞になるが、二日の毎日新聞夕刊コラム「ナビゲート 201…

「東京自叙伝」

奥泉光『東京自叙伝』集英社2014年3刷を読んだ。幕末以降の近現代史を、東京を舞台に 描いたもの、と言えよう。そのために作者は語り手に奇想天外、アクロバティックな 方法を用いている。この発想には驚いた。簡単に書けば、東京の地霊が鼠、猫、人間 …など…

「 MUJERES DE AGUA 」

朝、富士山が久しぶりに全容を現す。青富士。美しい。昼前から小雨。雲を従え、 毅然と立っている。 ネット注文した音楽CD、JAVIER LIMON『 MUJERES DE AGUA 』2010年が届く。 http://www.wrasserecords.com/Javier_Limon_161/Mujeres_De_Agua_298.html 一…

「紅一点論」

一昨日の高野和明『幽霊人命救助隊』は男三人女一人。斎藤美奈子『紅一点論』 ビレッジセンター出版局1998年初版を読んだ。やはり面白い、眼から鱗が 落ちる。明解な分析が、竹を割ったようなさっぱりとした文章で軽快に 綴られている。前半のアニメの分析、…

「変愛小説」

『群像』10月号、特集「〈変愛小説〉変愛座談」 変愛小説集 温故知新編 岸本佐知子・川上弘美 選 日本の名だたる作家たちの作品の中には、「変愛」としか言いようのない 名作がたくさん見つかる――。岸本佐知子、川上弘美の両氏が考える、日本の 「変愛名作」…

「幽霊人命救助隊」

高野和明『幽霊人命救助隊』文藝春秋2004年初版を読んだ。帯文から。 《 自殺者の命を救え! 浮かばれない霊たちが、天国行きと引き換えに 人命救助隊を結成、地上に舞い降りた。 》 老の八木、壮の市川、青の裕一、男三人と若い女性、美晴の霊が、 自殺しよ…

「苦海浄土」

東京新聞の記事。 《 石牟礼道子さん 未発表原稿10枚 「苦海浄土」新章か 》 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014090302000236.html 石牟礼道子『苦海浄土』講談社文庫1981年20刷を読んだ。副題「わが水俣病」。 《 水俣病もイタイイ…

「ガザレポート」

洋画家の上條陽子さんから日本美術連盟の『連盟ニュース』451号を恵まれる。 掲載の上條陽子「ガザレポート2 ガザの画家」から。 《 15年前のガザは入国許可書も必要なくまだ自由があった。(中略) 失業率は65%、食料は85%支援に頼っている。イスラエル…

「芸術随想 おいてけぼり」つづき

洲之内徹『芸術随想 おいてけぼり』世界文化社2004年2刷後半。 《 富士山の絵はいろいろ、たくさん見ているが、本物はやっぱり格段に 凄いなと思った。 》 157頁 《 どこへ行っても、高圧線の鉄塔は、たいてい、まわりの風景には 遠慮会釈もなく立っている。…

「芸術随想 おいてけぼり」

洲之内徹『芸術随想 おいてけぼり』世界文化社2004年2刷を読んだ。 《 それでも金輪際手放すまいと思う作品があり、そういうぜったい売りたくない 作品とぜったい売れそうもない作品とがおいおい手もとに残って、私のアパートの へやの大半を埋めている。 》…