2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『幸福・園遊会』二(閑人亭日録)

キャサリン・マンスフィールド『マンスフィールド短編集 幸福・園遊会 他十七篇』岩波文庫1978年10刷を読了。後半に入ってぐっと惹き込まれる。 殆どが英国中流階級の人々の話。その中流階級と労働者階級の隔絶が、「園遊会」ではあらわに表現されている。《…

『幸福・園遊会』(閑人亭日録)

なにか小説を読みたく、あちこち見回リ、キャサリン・マンスフィールド『マンスフィールド短編集 幸福・園遊会 他十七篇』岩波文庫1978年10刷を本棚から抜く。 待たせたね。少し読む。訳者の一人崎山正毅の「まえがき」冒頭。《 キャサリン・マンスフィール…

『想像の共同体』再読・五(閑人亭日録)

ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』リブロポート1987年初版、「VIII 愛国心と人種主義」を読んだ。《 ナショナリズムのほとんど病理的ともいえる性格、すなわち、ナショナリズムが他者への恐怖と憎悪に根ざしており、人…

『想像の共同体』再読・四(閑人亭日録)

ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』リブロポート1987年初版、「VI 公定ナショナリズムと帝国主義」を読んだ。《 一九世紀、とくにその後半は、資本主義の産物であるのみならず、王朝国家の象皮病の産物でもあった言語学…

『想像の共同体』再読・三(閑人亭日録)

ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』リブロポート1987年初版、「V 古い言語、新しいモデル」を読んだ。《 南北アメリカにおける国民解放運動成功の時代の終わりはまたヨーロッパにおけるナショナリズムの時代の始まりで…

『想像の共同体』再読・二(閑人亭日録)

ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』リブロポート1987年初版を少し再読。《 人間の言語的多様性の宿命性、ここに資本主義と印刷技術が収斂することにより、新しい形の想像の共同体の可能性が創出された。これが、その基…

『想像の共同体』再読(閑人亭日録)

ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』リブロポート1987年初版を少し再読。《 現実はきわめて明白である。かくも長きにわたって予言されてきたあの「ナショナリズムの時代の終焉」は地平の彼方にすら現れてはいない。実際…

『日本の10大新宗教』二(閑人亭日録)

島田裕巳『日本の10大新宗教』幻冬舎新書2008年7刷、後半を読み、読了。《 よく「苦しいときの神頼み」といった言い方がされる。たしかに、人が宗教に頼るのは、悩みや苦しみを抱えているときである。だが、本当に苦しいときには、人は 神頼みはしない。不況…

『日本の10大新宗教』(閑人亭日録)

島田裕巳『日本の10大新宗教』幻冬舎新書2008年7刷、前半を読んだ。《 新宗教は、基本的に都市の産物であり、急激な都市化という背景がなければ、その勢力の拡大は見込めないのである。 》 「1─天理教」 34頁《 通常の感覚からすれば、みきの振る舞いは尋常…

『人面の大岩』二(閑人亭日録)

ナサニエル・ホーソ-ン『人面の大岩』国書刊行会1988年初版後半の三篇を読んだ。昨日は二篇を読んで感慨に耽り、次へ読み進む気が起きなかった。後半の三篇、 「地球の大燔祭」「ヒギンボタム氏の災難」「牧師の黒いベール」も先の二篇も、五篇どれも異なっ…

『人面の大岩』(閑人亭日録)

ナサニエル・ホーソ-ン『人面の大岩』国書刊行会1988年初版を読んだ。短篇五篇を収録。最初の「ウェイクフィールド」は、エドガー・アラン・ポオの「群衆の人」を 連想させる。「群衆の人」と同じく、現代でも通用する内容。続く「人面の大岩」は寓話風。だ…

「複製技術の時代における芸術作品」(閑人亭日録)

ヴァルター・ベンヤミン「複製技術の時代における芸術作品」(『ボードレール ──ベンヤミンの仕事2──』岩波文庫1994年2刷収録)を読んだ。1936年の執筆。 凄い洞察力だ。この一篇で本一冊分の内容が凝縮されている。なんと深い危機意識に溢れた論述だろう。…

『夢想の研究』二(閑人亭日録)

瀬戸川猛資『夢想の研究 活字と映画の想像力』創元ライブラリー1999年初版を読了。いやあ面白かった。最適な消夏法だ。付箋が林立している。久しぶりに文体の魅力を 味わった。少し引用。《 岩波文庫なんて下らない、といっているのは、学問なんて下らないと…

『夢想の研究』(閑人亭日録)

瀬戸川猛資『夢想の研究 活字と映画の想像力』創元ライブラリー1999年初版を少し読む。上手い文章、見事な筋運びだ。のっけから脱帽。最初の一篇「1 謎解き── 男だけの世界」。おお、ヘミングウェイときたね。冒頭一行。《 スコット・トゥローの裁判ミステ…

ギリシャ歌謡、ライカ(閑人亭日録)

こう暑いと活字が泳いでしまう。ぼんやりと音楽に浸る。今年初めからギリシャの歌謡ライカとポルトガルの歌謡ファドばかり聴いていた。先月入手したライカの女性歌手 クリスチアーナ・パヴロウを今はよく聴いている。CDレビュー盤のようだ。 https://www.y…

『日本政治思想史』再読・四(閑人亭日録)

原武史『日本政治思想史』放送大学振興会2017年2刷、「第12章 各論9・異端の諸思想」を再読。《 丸山眞男は、(中略)「正統」という概念について論じています。それによれば、正統には教義・世界観を中核とする orthodoxy (O正統)と、統治者または統治…

『日本政治思想史』再読・三(閑人亭日録)

原武史『日本政治思想史』放送大学振興会2017年2刷、「第7章 各論4・街道から鉄道へ─交通から見た政治思想」を再読。《 江戸時代には、幕府が車両による人員輸送を禁じていました。明治になって登場した馬車は、輿や駕籠に代わる交通手段になるはずでした…

『日本政治思想史』再読・二(閑人亭日録)

原武史『日本政治思想史』放送大学振興会2017年2刷、「第4章 各論1・徳川政治体制のとらえ方─朝鮮と比較して」を再読。《 大名は参勤交代の道中、ずっと駕籠に乗っていたわけではなかたにせよ、駕籠に乗っている限り、決してその姿を見られることがありま…

『日本政治思想史』再読(閑人亭日録)

原武史『日本政治思想史』放送大学振興会2017年2刷を少し再読。初読時には気づかなかったかった記述がけっこうある。じつに濃い内容だ。ワクワクする、が、しかし、 暑さに気もそぞろ。そぞろ。気になって辞書を引く。ま、いいか。再読は必要だな、私には。…

「美術の世界シリーズ 第1集 ─青の世界─」(閑人亭日録)

昨日郵便局へ行き、手続きをする間、シール式の63円切手を買おうと壁面の切手を見たら「美術の世界シリーズ 第1集」が目に留まった。《 19~20世紀の、日本絵画と工芸、ヨーロッパ絵画の中から、青が特徴的な作例を選びました。 》 https://www.post.japan…

読書には向かない日(閑人亭日録)

暑い。午前8時0分31.1℃。買いものからさっさと帰宅。シャワー。 暑い。午後1時8分34.7℃。昼寝。寝起きは元気。思い立ち、洋服タンスなどの防虫剤を取り換え。汗~。 日が傾いてくると、やる気が湧く。外出。うへえ~、蒸し暑い~。なんじゃ、これ。本を…

つりたくにこ・書評・抜粋(閑人亭日録)

こんな時世、昨日読了した本の米山梅吉はどう思うだろう。 昨日話題のつりたくにこマンガ作品集『 The Sky Is Blue with a Single Cloud (原題:空は青空雲一つ)』の書評の自動翻訳を抄録。 ( )内は明らかな誤訳の訂正。 ”The Groundbreaking Female Art…

つりたくにこ・書評(閑人亭日録)

『日本のロータリークラブ創設者 米山梅吉ものがたり 奉仕の心で社会を拓く』銀の鈴社2019年初版を読了。 朝、楽寿園へ友だちと行く。盛り上がる湧出にあらためて目を瞠る。森の木々が新緑のような輝きを見せている。地下水位が上がったせいじゃないかなと、…

推し置き本(閑人亭日録)

昨日知人が来訪。とある伝記本を読むように、と置いて行った。こういうのを「推し置き本」と呼ぶ(拙造語)。とりあえず半分ほど読む。明日中には読了だろう (したい)。 そんな突発の読書にもかかわらず、頭は審美書院のこと。明治42(1909)年には『南画…

審美書院、国華社の経営事情(閑人亭日録)

審美書院の経営はかなり厳しかったようだ。《 価格改正の緊急敬告 「東洋美術大観は弊院最大出版なるが故に其編纂印刷材料の蒐集などに全力を傾注しつつありて既に第四冊を発行せり 册一冊発行の進歩するに随ひ其内容は層一層完美を極め其結果出版費は殆ど予…

明治後期の審美書院(閑人亭日録)

田島志一(1868年生-1920年没)が日本美術、東洋美術の画集制作で活躍したのはほぼ1900年代の十年ほど。『【田島志一と審美書院】山崎純夫』から。《 誠に筆舌しがたし美術本を造った人がおります。原画が絹本の場合は絹本に、金箔の場合は同じく金箔に着色…

明治後期複製木版画の魅力(閑人亭日録)

少ないが審美書院の彩色木版画入りの美術本を集めると、いろいろな探索をしたくなる。『真美大観』第八冊日本真美協会明治35年11月25日発行(編輯兼発行者 田島志一) 収録『普賢菩薩画像』(絹本着色)筆者不詳の多色摺木版と『日本名画百選』上巻(編輯東…

審美書院 対 国華社(閑人亭日録)

田島志一が関わっていた明治36年~44年の審美書院の美術書の出版物と同時代の国華社の美術雑誌『国華』以外の美術書の出版物を年代順に並べてみた。抄録。 現物を手にしていない美術書も当然あり、またネット情報の出版年に違いも見られる。表記は新漢字に直…

『飛ぶ孔雀』二(閑人亭日録)

山尾悠子『飛ぶ孔雀』文藝春秋2018年初版、後半「II 不燃性について」を読んだ。前半の「飛ぶ孔雀」と関連するが、これまた、同じ感想を抱く。時空が狂ったような シュールな始末が描かれる。場面展開の早い映画を見ているような。コレハ、ナンダロウ。一場…

『飛ぶ孔雀』(閑人亭日録)

山尾悠子『飛ぶ孔雀』文藝春秋2018年初版、前半の表題作「飛ぶ孔雀」を読んだ。最初の短篇「柳小路界隈」。《 トエは夜の川辺で火を焚いた。燐寸の燐がたけだけしく闇に発火し、焚きつけの紙を変色させて明るい炎がさっと走る。正常に燃え上がったその火が空…