2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「線描、描線の魅力」

昨日の内野まゆみさんの線描画から連想が広がった。線描画というと、ジャコメッティが 矢内原伊作を正面から描いた素描と洲之内徹が愛蔵した安井曾太郎の素描『少女』1940年が浮かぶ。 ジャコメッティは対象の本質へ迫るかのように、何本もの線を引き、像を…

『 木 』

幸田文『木(き)』新潮社1992年初版を読んだ。二昔ほど前、知人女性から恵まれた。 幸田文のエッセイをまともに読むのはこれが初めて。最初の「えぞ松の更新」。 《 木というものは、こんなふうに情感をもって生きているものなのだ。今度はよほど 気を配ら…

『 鬼ゆり 』

昨晩八時過ぎ、源兵衛川中流部、水の苑緑地でホタルの乱舞を観賞。やはりいいわ。 暑くなるとキューバの音楽を聴きたくなる。アフロ・クバーン・オールスターズ『ア・トーダ・ クーバ・レ・グスタ A Toda Cuba Le Gusta 』。ビール片手に心地よいリズム。い…

『 セザンヌの塗り残し 』余滴

昨日午後は友だちの車に同乗、隣町の函南町の白砂勝敏展へ。その後近くの酪農王国オラッチェで ソフトクリームを賞味。ここのが一番好み、で二人が一致。100円の餌を買い、羊、山羊にくれる。 わらわらやって来て頭を突き出す。すぐに終わってしまう。餌しか…

『 セザンヌの塗り残し 』つづき

洲之内徹『セザンヌの塗り残し』新潮社1994年7刷後半も読了。 《 ところで、それはそれとして、この絵の中に時間を感じたそのとき以来、私は、 風景、ないし風景画というものを、時間の範疇で見ようとするようになっている、 》 187頁 こんなくだりに出合う…

『 セザンヌの塗り残し 』

洲之内徹が田村泰次郎から現代画廊を引き継いだとき、彼は四十七歳くらいだった、 というネット記事を読んで、おや、私とほぼ同じ歳に開いたか、とヘンな気分になった。いくつか ネットの記事を読んだが、俄に『セザンヌの塗り残し』を読みたくなった。 《 …

『 私 』

谷川俊太郎詩集『私』思潮社2007年初版を読んだ。いい詩集だ。気に入った詩句を いくつか。 《 私の書く言葉には値段がつくことがあります 》 「自己紹介」 《 言葉には私の過去ばかりがあって 未来はどこにも見当たらない 》 「ある光景」 《 意味よりも深…

『100年前の難問はなぜ解けたのか』

春日真人『100年前の難問はなぜ解けたのか』新潮文庫2011年初版を読んだ。副題は 「天才数学者の光と影」。1904年に数学者ポアンカレが提起した超難問ポアンカレ予想は、 正確には「単連結な三次元多様体は三次元球面と同相である」という数学上の命題。 そ…

『吟遊星』14号 

御沓幸正氏の『吟遊星』14号(多分最終号)1982年をうっかり忘れていた。彼一人の 作品で埋められている。「ヒッチ俳句(最終回)」の筆名は亜北斎。一部紹介。 心象は膨大にして夕焼ける 本能のずれと歪みや首都の夏 かへりなんいざりもまじる川花火 いか…

「靖/ひさし」 

毎日新聞17日(日)の「今週の本棚」を切り取り、読んだ。又吉直樹『火花』への 大竹文雄の評から。 《 優れた漫才を追い求め、極貧の中、毎日練習を続ける。芸人の中で高く評価されることと、 観客に評価されることの違いに悩む。努力だけではなく、才能…

『百句燦燦』つづき

『百句燦燦』の橋本治の解説に付箋を貼ってある。以前引用したかも知れないが。 《 『百句燦燦』は、私にとって、「文字で書かれた百点の近代絵画集」である。 「現代絵画」ではない。/ 日本画と洋画を問わず、私は明治以降の日本の近代絵画に かなりの不満…

『百句燦燦』

手の届くところに積んである文庫本の最上は、塚本邦雄『百句燦燦 現代俳諧頌』 講談社文芸文庫2009年3刷。この定位置をずっと保持している。「一章──森森」 「二章──蕭蕭」「三章──炯炯」まではパソコンで漢字が出るが、四章五章は出ない。 四章は炎が山型に…

「狂歌書」「事件」

昨日につづき『吟遊星』主宰者・編集者の御沓幸正氏の作品を。『吟遊星』12号、 1981年掲載、猿真似太夫「狂歌書」より。 《 見渡せば飯もうどんもなかりけり裏の蕎麦屋の秋の夕暮 夜もすがら契りつゞけて明けぬればほとほと萎えていたく眠たき 京たちて明…

「浅才馬鹿集」

『吟遊星』主宰者・編集者の御沓幸正氏の作品は、『吟遊星』六号の「ヒッチ俳句」と 十号の「浅才馬鹿集」が金関寿夫・編『動物園の珍しい動物 日本のライト・ヴァース2』 書肆山田1981年初版に収録されている(ネット情報)。特に柿本人真似「浅才馬鹿集」…

『エトセトラ』

昨日の『吟遊星』第11号「加藤郁乎特例号」で主宰者(編集)の御沓幸正氏は書いている。 《 最後に、江戸戯作文学の伝統を、昭和戯作小説として開花させた小説『エトセトラ』 について少々。(中略)映画化の話もあったらしいこの小説は、馬が居酒屋で演説…

『加藤郁乎特例号』

御沓幸正氏主宰の同人誌『吟遊星』第11号は「加藤郁乎特例号」。1980年刊行。豪華な執筆陣。 白石かずこ、矢川澄子、藤富保男、柳瀬尚紀……やや、拙者の名前が。いやあすっかり忘却の彼方。 恥ずかしいことはうっかり忘れてしまう。まあ、今ならば笑ってや…

「毒の園」

昨晩、スーパーから出たところで見知らぬ女性から声を掛けられた。二十年ほど前まで やっていた私の店の団子をまた食べたいと。そんなに記憶に残っているのか。昔のことを 思い出して深酒をするはずが缶ビール一缶で爆睡。 昨日ふれたソログープの「毒の園」…

『アルカディア』

古雑誌の中から短歌雑誌『アルカディア』第三号沖積舎1980年が出てくる。特集「歌は 死んだか?」。私の拙文が載っていた。こんなことを書いていたんだ。以下全文転載。《 「見渡せば……」 手元に一冊の本がある。題は「相倉久人のジャズは死んだか」。 「短…

『日本文学史早わかり』

丸谷才一『日本文学史早わかり』講談社1978年初版1996年3刷、表題作を再読。 一昨日話題の小西甚一『日本文学史』同様、簡潔で明解。 『日本文学史』は古代〜中世第一期(古今和歌集〜)〜中世第二期(新古今和歌集〜) 〜中世第三期(俳諧、芭蕉〜)〜近代…

「藤富保男」

大分市のフリー・ペーパー『南大分マイタウン』350号を編集長の御沓幸正氏から 今月も恵まれる。読者投稿欄「お便りだけが頼りなの」には文章の他に絵も掲載。 その絵に何故か私の2009年の年賀状の絵。といっても、数時間前には気づかなかった。 なぜなら、…

『日本文学史』つづき

小西甚一『日本文学史』講談社学術文庫1993年3刷、後半。 《 十二世紀から十三世紀にかけて、物語がみじめに没落していったのに、歌だけが このように隆盛をきわめたのは、公家たちによって、歌こそ本当の文藝だと意識されて いたからである。 》 「第三章 …

『日本文学史』

小西甚一『日本文学史』講談社学術文庫1993年3刷を再読。小気味いい鮮やかな切り込み。 《 歌謡においても、自然に対する純粋な愛情がふかく浸透しており、自然そのものを客観的に 観察するといったような態度は、ほとんど発見できない。要するに、精神と自…

「 LPレコード 一九七○年 」

書肆盛林堂から新刊二冊、『戦前『科学画報』小説傑作選 2』噴飯文庫、『戦前『科学画報』 小説傑作選 3』噴飯文庫が届く。三冊揃った。一冊千円。 友だちは浅川マキ、藤圭子、山崎ハコの歌が嫌い。暗いから、と。私とは真逆。 《 「星の流れに」「カスバ…

「上書き・更新/変換・革新」

科学でも文学でも美術でも、その歴史を追ってゆくと「上書き・更新/変換・革新」の 両輪・両面で歴史が作られている。「上書き・更新」は、既成の理論、形式に則り新たな ものを加えてゆくこと。「変換・革新」は、既成の理論、形式を根本から変えること。 …

『 掟の門 』

知人が勧めたカフカの短篇「掟の門」(『カフカ短篇集』岩波文庫2003年38刷)を読んだ。 カフカらしい不可解な掌編だ。創作行為における行き違い、齟齬、そんなことを思った。 また、星新一のショートショート「鍵」を連想。ある鍵で開くドアを探す話。 椹木…

『 本のなかの本 』

連休最終日らしい。街は昨日の大賑わいがウソのように静か〜。向井敏『本のなかの本』 毎日新聞社1986年初版をパラパラと再読。二ページで一冊を紹介、百五十人百五十冊。 目に止まった箇所だけを飛ばし読みしているつもりが、いつしかほとんど読んでしまう…

『 日本造形史 』つづき

水尾比呂志『日本造形史 用と美の意匠』武蔵野大学出版局2002年初版2010年6刷を 読了。後半第二部は「宗教の造形」。 《 原始信仰としてのアニミズムから発展した日本の神は、産霊神(むすびのかみ)と呼ばれ、 自然の万物に宿って生産力創造力を発揮させる…

『 日本造形史 』

水尾比呂志『日本造形史 用と美の意匠』武蔵野大学出版局2002年初版2010年6刷、 前半「第一部 生活の造形」を読んだ。「序」。 《 すなわち、原始から江戸時代末に至るわが国の造形を、「生活」と「宗教」と 「作家」という三つの分野に分ける観点に立ち、そ…

『 現代評論集 』つづき

昨日につづいて『現代日本文学大系 97 現代評論集』筑摩書房1973年初版より。 《 人間は、美しいものの前に立ったときは、極めて単純な嘆声をしか発し得ない ものである。感性は、私たちにそういう嘆声を発させることで、眼前のものが美であることを 示す…

『 現代評論集 』

『現代日本文学大系 97 現代評論集』筑摩書房1973年初版には、柳宗悦から 色川大吉まで、戦後発表された34人の34の評論を収録。一人一篇だ。三木清 「親鸞」は戦後公表されたもの。未知の人がいる。池田潔、田中耕太郎、深瀬基寛、 小倉金之助。月報で…