2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「足どり」

気持ち良い音楽を聴き、心地よい酒にほろ酔い、さあ寝る時間が参っても、何かものたりない。塚本邦雄監修『現代詩コレクション』 書肆季節社1990年初版を開く。昨夜開いた頁には竹中郁の詩「足どり」。 見知らぬ人の 会釈をうけて こちらも丁重に会釈をかえ…

『『日本文学史序説』補講』三

加藤周一『『日本文学史序説』補講』ちくま学芸文庫2016年2刷、「第四講」「最終講」ほかを読んで読了。 《 芸術家が怖くなった政府は近いうちにかならず滅びるようです。江戸幕府も、ヒトラーも、スターリンも。 》 230頁 《 文学史は文学案内じゃないので…

『『日本文学史序説』補講』ニ

加藤周一『『日本文学史序説』補講』ちくま学芸文庫2016年2刷、「第ニ講」「第三講」を読んだ。《 本のかたちが薄いか厚いか、小さいか大きいかということは本の価値とまったく関係ありません。本当の価値は、誰もいっていない独創的なことをいっているかど…

『『日本文学史序説』補講』

加藤周一『『日本文学史序説』補講』ちくま学芸文庫2016年2刷、「第一講」を読んだ。これは凄い。菅原道真について。 《 彼の場合、中国の影響だけでなく、例外的に非常に能力のある政治家だった。だから陰謀にあって没落したのですが、日本でもっとも有能な…

美の発現力/眼を洗う

北一明の油滴小鉢と禾目天目茶碗を鑑賞していて、芸術作品と称賛される作品と美術工芸品の違いについてふっと考えた。 結局、作品がその中で完結しているか、その外へはみ出して(逸脱)いるか、の違いかも知れぬと思い至った。まあ、以前から 考えている点…

『日本政治思想史』三

原武史『日本政治思想史』放送大学教育振興会2017年2刷を読了。簡明簡潔な文章にして、深い。感銘。 《 裕仁自身は、東京のほか、大阪や京都を訪れたときを除いて、公共の空間で基本的に肉声を発しませんでした。第2章で 触れたように、君主が言葉を発する…

『日本政治思想史』ニ

原武史『日本政治思想史』放送大学教育振興会2017年2刷を少し読み進める。平明、簡潔な文章ですらすら読めるが、内容は じつに深く、ときどき留まって黙考。今年読んだ本はこの著作同様、多くが再読の必要を感じさせる。一読しただけでは真の 深さを測りきれ…

『日本政治思想史』

原武史『日本政治思想史』放送大学教育振興会2017年2刷、前半を読んだ。これは面白いわ。例えば「大奥」。 《 慶喜は、女性が男性以上に権力をもつ場合があることに気づいたのです。(中略)彼女らのなかには前述した男性中心の システムに包摂されることな…

「この作品で何が伝えたいのですか?」

昨夜午後八時過ぎに白砂勝敏さん夫妻が来訪。昨日の展示物で気に入った水彩画を持ってきてくれる。四年前、2013年の作。 当時見て欲しいと持参された第一作の線描水彩画を気に入って購入して以来の同じ時期に制作された一点。それらについて評した 拙文「生…

ゆっくりした時間

33.2度。暑い〜。友だちに誘われ、沼津市の中央公園で催されている市へ。造形作家の白砂勝敏さんのテントを訪問。九月に オーストラリアへ演奏(!)で行くと言う。それはいい機会。作品を宣伝できる。それにしても暑い。カフェ・ブランでアイス コーヒー。…

手紙と絵葉書

昨日手紙と絵葉書が届いた。メールにはなお味わい。手紙は仏文学者柏倉康夫氏、絵葉書は牧村慶子さんから。柏倉康夫氏の手紙は、 13日の拙ブログに載せたものを短縮して認めて送った拙手紙への御礼文。その一部。 《 「あとがき」にも記しましたが、外国語…

『カスバの男』

大竹伸朗『カスバの男 モロッコ日記』求龍堂1994年初版を読んだ。1993年7月12日から23日までの灼熱のモロッコ体験記。 《 マラケシュの耐えがたい午後の日差しの下、ストリートは静まりかえって歩く人もいない。 》 7月22日マラケシュ《 どこへ行ってもハエ…

『カラーテレビ殺人事件』

石沢英太郎の短編『カラーテレビ殺人事件』(『羊歯行・乱蝶ほか』講談社文庫1978年収録)を読んだ。ネットで取り上げられ、 気になっていた。不倫が事件の元にある、密度の濃い大人のミステリーだ。オレもオトナだと自慢げに何かと吹聴したくなる。 いかん…

『ゲンロン0 観光客の哲学』5

東浩紀(あずま・ひろき)『ゲンロン0 観光客の哲学』ゲンロン2017年2刷、『第7章 ドストエフスキーの最後の主体』を読んだ。 《 かつてリベラリズムは他者の原理をもっていた。けれどもそれはもはや力をもたない。他方でいま優勢なコミュニタリアニズム …

『ゲンロン0 観光客の哲学』4

東浩紀(あずま・ひろき)『ゲンロン0 観光客の哲学』ゲンロン2017年2刷、『第6章 不気味なもの』を読んだ。 《 俳優にせよ物語にせよ、映画の内容を見ているあいだはアマチュアある。映画好き(シネフィル)は、スクリーンに映っているものではなく、 映…

『ゲンロン0 観光客の哲学』3

東浩紀(あずま・ひろき)『ゲンロン0 観光客の哲学』ゲンロン2017年2刷、『第5章 家族』を読んだ。 《 したがって、この状況を脱するためには、個人でも国家でも階級でもない、第四のアイデンティティの発明あるいは発見が必要である。 観光客の哲学の構…

『ゲンロン0 観光客の哲学』2

東浩紀(あずま・ひろき)『ゲンロン0 観光客の哲学』ゲンロン2017年2刷を少し読んだ。 《 カントとヘーゲルはナショナリズムの出発点に立ち会った。それゆえ彼らの国家観は、来たるべきナショナリズムの時代における 世界観の雛形となった。そこでは、個人…

『ゲンロン0 観光客の哲学』

柏倉康夫『新訳 ステファヌ・マラルメ詩集』は売り切れたようだ。私家版百部限定で販売はたった六十部だからなあ。 東浩紀(あずま・ひろき)『ゲンロン0 観光客の哲学』ゲンロン2017年2刷を少し読んだ。語り口が平易で読みやすい。國分功一郎 『中動態の世…

『新訳 ステファヌ・マラルメ詩集』

一昨日届いた柏倉康夫『新訳 ステファヌ・マラルメ詩集』を読んだ。フランス詩人ではシャルル・ボードレール、アルチュール・ランボー、 ロートレアモンは読んでいるけど、マラルメはずっと気になったままだった。読んでみると、前三者とはまた違った詩風だ…

『中動態の世界』7

國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』医学書院2017年5刷、「第9章 ビリーたちの物語」を読んだ。ハーマン・ メルヴィルの遺作『ビリー・バッド』という中編小説の登場人物、ビリー・バッド、クラッカート、ヴィアの三者をめぐる 判断と自由の考究…

『中動態の世界』6

國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』医学書院2017年5刷、「第7章 中動態、放下、出来事──ハイデッガー、 ドゥルーズ」を読んだ。《 意志の概念を徹底的に批判し、能動と受動を対立させる言語の問題点を明らかにしたのが、ニ○世紀ドイツの哲学者…

『中動態の世界』5

國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』医学書院2017年5刷、「第5章 意志と選択」を読んだ。 《 権力が相手の行為に働きかけて、相手に行為させるのに対し、暴力は相手の身体に働きかけて、相手を特定の状態に置く。 》 147頁 《 権力の関係は、能…

『中動態の世界』4

國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』医学書院2017年5刷、「第4章 言語と思考」を読んだ。 《 ある単語の不在は、出発点ではなくて結果である。たとえば、「オオカミ」という単語をもたない言語があるとすれば、 それはその言語の使い手たちが、…

『中動態の世界』3

朝、手紙と葉書を投函し、國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』医学書院2017年5刷、「第3章 中動態の意味論」 を読んだ。 《 多くの分野の研究者が、能動と受動というカテゴリーの不十分に気づき、そこに収まらない中動態に注目し続けてきた。 》…

『中動態の世界』2

國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』医学書院2017年5刷を少し読んだ。 午前、源兵衛川最上流部で、源兵衛川世界かんがい施設遺産登録を記した表示板の開設式に参列。お開き後、川へ来た若い女性と イタリア人男性を川へ案内。彼は何度も日本へ来…

『中動態の世界』

國分 功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』医学書院2017年5刷帯付を近所の本屋で受け取る。 http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=87748 帯から。 《 「しゃべっている言葉が違うのよね」 ある依存症当事者がふと漏らした言葉から、 「す…

『続勘の研究』つづき

黒田亮(りょう)『続勘の研究』講談社学術文庫1981年初版を読了。 《 物を正しく視るということとは、ちょっと簡単に考えるように、容易なものでは決してない。事実をありのままに観察するのが 本来の建前である実験的な自然科学においてさえ、虚心をもって…

『続勘の研究』

黒田亮(りょう)『続勘の研究』講談社学術文庫1981年初版、前半を読んだ。 《 いったいに、評者の多くは、世間には厳密の意味において共通に使用される勘の存在することを仮定し、自分の考えている勘は、 これと完全に一致するはずであることを黙認して、議…

作品の発酵・発光という発想

拙ブログの6月12日「早生、早熟、完熟、発酵」から新たな発想が浮かんだ。 http://d.hatena.ne.jp/k-bijutukan/20170612 優れた作品は「古くならない、いつまでも新鮮」ではなく、「賞味期限を過ぎても発酵して新たな魅力を生じる」のでは。安藤信哉は エッ…

『布で花をつくる』

山上るい『布で花をつくる』暮らしの手帖社1985年3刷をパラパラとめくっていたら、「夢の花」をつくる項目に目が止まった。 《 ある晩、この花の夢を見たのです。エンジの濃いような、ピンクのくすんだような花びらが、花の芯をつつむように咲いています。 …