2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『塩一トンの読書』

須賀敦子『塩一トンの読書』河出書房新社2003年初版、前半を読んだ。引き締まった、勁い文体。昨日の耕治人同様、私には書けない文章だ。目次には知らない本、 持っていない本がずらりと並ぶ。読んだ本は、著者が訳したアントニオ・タブッキ『インド夜想曲』…

『そうかもしれない』

昨日買った耕治人(こう・はると)『そうかもしれない』晶文社2007年初版を読んだ。三篇収録。「天井から降る哀しい音」。ほけ始めた老妻をいたわる同い年の夫。 痛ましい私小説だ。つづく「どんなご縁で」「そうかもしれない」も読んだ。こういう文章は書け…

『我もし参謀長なりせば』

先だって届いた海野十三ほか『我もし参謀長なりせば』我刊我書房2018年を読んだ http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca4/400/p-r-s/《 海野十三、大下宇陀児、甲賀三郎、蘭郁二郎、渡辺啓助、探偵作家の大家五人に、「科学知識」編集部が、昭和十四年に勃…

『夏暦』

故松平修文の奥さん、王紅花さんから一昨日届いた個人歌誌『夏暦』四十八号を読む。 安らけく眠れよわれよ春陽さす遺影のまへに身を横たへぬ 掉尾の一首が一入心に沁みる。 《 あれこれの耐えがたい思いを、歌で表現できること、またそれを受け止めて下さる…

権威、権力

東京新聞の記事、内山節「時代を読む」が読ませる。 《 権力と権威の乖離がすすんでいる。最近ではそう感じることが多くなった。 》 《 権力は一瞬にして確立することもできるが、権威は人々からの信頼や尊敬が芽生えてこそ成立するのである。 》 《 権力は…

浜松市へ

朝八時半、所用で浜松市へ行く人の車に同乗。途中浜松市郊外のイオンモールへ寄る。デカッ。私は一階入り口近くの書店を周遊。岩波文庫はないけど、 ウンベルト・エーコ『女王ロアーナ、神秘の炎』はある。赤坂憲雄『性食考』岩波書店2017年初版帯付が目に止…

「アートと人類学」

『美術手帖』6月号特集「アートと人類学」を通読。隔靴掻痒な読後感。 《 ──アートの領域における文化人類学的な手法に、違和感を覚えることはありますか? 》 28頁 この問いかけに相手はなにやら応えているが、うーん、違うなあ。どうしても白砂勝敏氏の諸…

『日本美術史の近代とその外部』四

稲賀繁美『日本美術史の近代とその外部』放送大学教育振興会2018年初版を読了。 《 その有用性ゆえに、西欧的な審美眼的価値判断に依れば、自立した造形とは見なされない。このため欧米の博物館 museum では陶磁器は応用藝術ないし装飾藝術 という下位の範疇…

『日本美術史の近代とその外部』三

稲賀繁美『日本美術史の近代とその外部』放送大学教育振興会2018年初版を少し読む。野暮用が重なり、夕方やっと手をつける。のんびり読んでビックリ。 《 岡倉(天心)は土佐派や光琳の「熱心な研究者」として(横山)大観にふれつつ、久住守景や尾形光琳ら…

「名作誕生 つながる日本美術」

東京国立博物館へ行って来る。企画展「名作誕生 つながる日本美術」。混んではいるが、混雑するほどではなく、ゆっくり観覧できた。 http://meisaku2018.jp/ 『彦根屏風』を見て伝俵屋宗達筆『蔦細道図屏風』に仰天。これはスゴイ。 《 金地の土台に緑青(ろ…

『日本美術史の近代とその外部』ニ

稲賀繁美『日本美術史の近代とその外部』放送大学教育振興会2018年初版を少し読む。読むのが遅い。 《 すでに明らかなように、岡倉(天心)の英文著作は、それが執筆された時代状況、それが意図した英語圏の読者層を考慮にいれて読み解く価値がある。 近代日…

『日本美術史の近代とその外部』

稲賀繁美『日本美術史の近代とその外部』放送大学教育振興会2018年初版を少し読む。《 この教科書は、「日本」を画定することに疑問を呈し、「美術史」という枠組みをも解体しようとする試みである。さらに「近代」という時代定義も、 同様に括弧に括り、問…

「最強の日本絵画100」つづき

『芸術新潮』5月号の特集「最強の日本絵画100」を読んだ。尾形光琳は『紅白梅図屏風』と『燕子花図屏風』が選出されている。どちらも数回見ている。 最高だわ。 《 《紅白梅図》や《燕子花図》の美的感覚はヨーロッパの人には絶対に理解できないでしょう…

「最強の日本絵画100」

昨日買った『芸術新潮』5月号の特集「最強の日本絵画100」を読んだ。と書きたいが、パラパラとめくっただけ。山下裕二の巻頭言「日本絵画をアップデートする」から。 《 私の主観をただ垂れ流すだけでは、この企画意図に充分応えることにはならない。/…

「人の間に─灼熱と氷河─」

昨日は野暮用で夜更けまで自転車で走り回ったので、きょうは身体の動きがギコチナイ。 昼前、美術倉庫で額装された北一明の書、上條陽子さんの小さい絵などを点検。久しぶりに見ると、こんなにも良い書だったか、良い絵だったか、と驚く。 上條さんは今、FEI…

『人間の建設』つづき

岡潔・小林秀雄『人間の建設』新潮文庫2011年7刷を読了。 《 岡 その当時出てきた主要な問題をだいたい解決してしまって、次にはどういうことを目標にやっていくかという、いまはその時期にさしかかっている。 次の主問題となるものをつくっていこうとしてい…

『人間の建設』

岡潔・小林秀雄『人間の建設』新潮文庫2011年7刷、前半を読んだ。岡に小林が質問するというかたちで会話が進む。 《 小林 無明をかく達人である、その達人というものはどうお考えですか。 岡 それほど私はピカソを高く評価しておりません。ああいう人がいて…

白砂勝敏展『地球の記憶(ホシノキオク)』

”19日以外は在廊予定”とのメール。昼、藤枝市のアートカゲヤマ画廊の白砂勝敏展、初日へ列車に揺られて行く。一時間半ほどで藤枝駅。静岡市のすぐ先とは。 照りつける日射しに恐れをなして、一台だけ止まっているタクシーへ。初めての藤枝市。駅周辺はマンシ…

『数学する身体』補遺

昨日読了の森田真生『数学する身体』新潮文庫2018年初版、帯の推薦には養老孟司も。 《 これが新時代の第一歩になれないい。心からそう思う。 》 養老孟司 引用した文は、養老孟司への批判と、私は読んだ。再掲。 《 ともかく、ここで強調したいことは、様々…

『数学する身体』三

森田真生『数学する身体』新潮文庫2018年初版を読了。これはいい本だ。 《 脳は、人が経験する世界の一つの原因であるとともに、人が様々に世界を経験してきたことの帰結でもある。その脳だけを環境や身体的行為の文脈から 切り離し、そこにだけ特権的な地位…

『数学する身体』ニ

森田真生『数学する身体』新潮文庫2018年初版を少し読んだ。読むのが遅い。 《 一つ一つの問題を前に、いちいちそれと格闘するのではなく、一歩引いた視点から、その問題の性質そのものについて研究すること。そもそも、ある方法のもとで どのような問題が解…

『数学する身体』

森田真生『数学する身体』新潮文庫2018年初版、前半を読んだ。厚くないので一日で読めるかと思ったけど、読むのが遅い。じつに示唆に富む内容だ。連想が あちこちに飛ぶ。 《 数を道具と見るか、それ自体を研究の対象と見るかで、見え方も変わってくる。 》 …

度を越す

美術と芸術の意味の違いはどこにあるのだろう。私は、美術は一般に言われる工芸、デザイン、芸術、アートもろもろを含む言葉。芸術とは突き抜けた作品に対して 使う言葉、と一応区別している。当然だが、この区別は常に変動している。美術と芸術の間には曖昧…

暦を超えて

宮下規久朗『闇の美術史』岩波書店2016年、「第6章 日本美術の光と闇」を再読。 《 しかし、日本では黒田清輝以降、印象派の亜流である外光派がアカデミズムとして支配的になっていき、闇の多い様式は旧派あるいは脂(やに)派とよばれて 衰退してしまう。 …

コンテンポラリー・アートという商品

モダン・アート作品には、大方に興味や関心があるが、コンテンポラリー・アートという作品には、その多くに拭いきれない違和感を感じる。堀内勉の記事 「ルールはシフトした、視覚から頭脳へ」は、後藤 繁雄『アート戦略/コンテンポラリーアート虎の巻』光村…

太陰暦、月暦

洲之内徹『しゃれのめす』世界文化社、「ヒトバンヂュウフイタカゼ」から。 《 その時私は、太陽暦によって仕組まれた人間の日常性の裏側に、われわれ生物が生成の初源の日から宇宙と交されていたらしいもう一つの世界の約束事を垣間見た と思った。 》 171…

歩行者天国

洲之内徹『しゃれのめす』世界文化社、「夭折ということ」から。 《 彼女の絵にははっきりしたイメージというものはなく、しかも、どのようなイメージにも変化して行ける、いわば原イメージとでもいうようなものがあり、 作品は確乎とした美を構築しようとす…

『しゃれのめす』再び

体調が恢復したらまず読んでみたい本が、洲之内徹『しゃれのめす』世界文化社だった。数ある美術関係の著者で最も気になる著者が洲之内徹。理由は不明。 彼の人生の追跡には殆ど興味がない。彼の美術関係の文章が、やけに気になる。何だろう。ま、こうして読…

憲法記念日

洲之内徹『しゃれのめす』世界文化社2005年初版を少し再読。84頁に知らない言葉。出面取り(でづらどり)。出面=日雇い労働者の日給。 『しゃれのめす』の初読は四年近く前。その日録にはこんな記述。 《 二十年ほど前、木版画絵師小原古邨の木版画に某画廊…

平日はきのう、きょう

昼前、銀行へ。明日から休日なので混雑している。テキパキと動く若くて綺麗な受付嬢をじっくり観賞。彼女に呼ばれない。順番を譲りたくなる。 午後、雑用が片付き、蒲団で一時間ほど休憩。身体が自ずから動き出す。 夕方、雨。旬の大きなイチゴを無理して一…